無人島に持っていくならどのアルバム?第4弾!
2019.11.19 リライト
無人島に持っていくアルバムシリーズ4。
音楽友達と良く酒飲みながら話すネタ、無人島に持っていくならどのアルバムを持っていく?という話題。
例えばそこにはサブスクリプションも存在しないとしたら。
誰もが認める歴史的名盤を持っていくのも正解だけど、何か人に言って「おっ」と思わせるアルバムが良い。
無人島でもそういうヤツで居たいのだ。
おもしろかったので記事にしました。のその4。
今回はELLEGARDENの1stフルアルバム'Don't Trust Anyone But Us'をレビューします。
身近なラフさを思い切り感じられる爽快感、陽性で乾いた良質オルタナティヴロックが、ハイセンスでハイエナジーで叩きつけられた最初の1枚。
初期のエルレのイノセントな正義感は、どの1枚も上回れないと今でも思う。
あの時のあふれるエヴァーグリーンの魅力がつまった「俺はこういう音楽を聞きたくてここまで生きてきた」な稲妻は、生涯忘れることは出来ない。
無人島に行く時に、いつまでもこの1枚を最初にバッグに入れたい。
本日はELLEGARDEN 'Don't Trust Anyone But Us'に想いを馳せる。
素敵な暇つぶしになれば幸い。
以前まとめたELLEの曲30曲を振り返った記事はコチラ! !
前回までのシリーズはコチラ!!
突如耳に蘇る色褪せない悠久の音楽
一年に何回か急にELLEGARDENを聴き込みたくなる。
the Hiatusでも、MONOEYESでもなく、WeezerでもGreen DayでもYellowcardでもNew Found Gloryでもなくエルレを聴きたい、そんな衝動があって、それは僕の中で地球上の僕の知っているどのバンドよりも大きいものだ。
自分の世代の中心で鳴り、当時からきっと一生このバンドは心の真ん中にいるんだろうって確信。
1987年生まれの僕にとってそれはELLEGARDENというバンドだったし、四季折々とかメンタルのコンディションとかで色々聴きたい曲も変わってくるが、そういう時に急に耳に蘇るメロディーは、概ねこのアルバムの音だった。
2002年4月発売されたインディーレーベルからの彼ら最初のフルアルバム。
1999年に結成されたエルレガーデンは、自主製作のアルバムと、ミニアルバム・シングルを経て2002年このアルバムを発表した。
その後も行き急ぐかのように曲を作り続け、ライブバンドとして強靭なプライドを行動に移し、時代のロックヒーローとなった彼らの最初のアルバム。
耳の早いわけではなかった僕は発売当初から聴いていたわけではなかった。
それでも今耳に残るこの一枚は、レトロ感を吹き飛ばし、全く色褪せずにタイムレスに輝く類の1枚だった。
1stらしいラフさとクリアなサウンドがせめぎ合うエルレらしさが濃縮された今やヴィンテージな魅力。
もちろん少し復活してくれた2019年の今、ライブでも主力の曲も多い彼らの中でも定番のアルバムではある。
ただ大きく主張したいのは、初期衝動でありつつも、アルバム通して持っているオルタナティヴな雰囲気は確実に新しい景色を運んできたアルバムで、その時点でエルレの原点としての音楽性が確立されている完成度という事を言いたいのである。
その音楽 凄まじく細美の声が映えるオルタナギターサウンド
Spotify
後にも先にも彼らくらいだった。
今まで聞いたことが無くて、ここまで今でも自分の中で聴ける音の輝きを保ち続けている。
きっと僕が喉から手が出るほど憧れて欲しかったものがこの1stアルバムに詰まっていたのだ。
ポップに染まり切らずロックという表現行為の一端を成し、尚且つ永遠の青さを持ったオルタナティブなメロディー。
アルバムの随所に感じるどれを取ってもストレートでキャッチーながら、ロック的に心臓を掴まれる貫通力を持った衝動的なメロディックサウンド。
カリフォルニアの風通しの良さ、日本詩の素朴さ、ミドルチューンの艶やかさ、その全て断トツの聴きやすさでも、仰け反る様なエネルギッシュさを持っていた。
中性的で流麗な発音を持ち且つパワフルでもあるアイコニックな細美の声はバンドサウンドの中央に位置して、自然に共振しオルタナティヴに変化して聞こえてくる。
断トツにクリアで聞きやすい英詞、暖かい日本詞どちらにおいても甘美さと力強さをもった声は、いつの間にか心を囚われる魅力に溢れているし彼のカリスマ性の一端を担っているのはこの頃から明らかだった。
歌以外の部分では言いたい事を言ってくれるパンクなスタンス、それと上手くコントラストとなる部分絶妙なナイーブ感も親近感をより身近で感じさせてくれる。
ギターロックとパワーポップ、そしてパンク的な要素が混在したサウンドもストレートな造りながらただ疾走するだけでない高次なロック性もあった。
メロコア的なビートもあれば、それだけで価値のあるギター中心のバンドの音色みたいなものが、エルレガーデンの中心であったことはその後から見ても明らかだった。
その後、バンドが大きくなっても、その核になる部分には、ラフで青いこの頃の想いを添えていた、そう思わせる初期衝動的なルーツであり、ある部分では完成されていた彼らのサウンドのスタイリッシュなパワーを感じる一枚が、このアルバムなのだ。
全曲ソングレビュー

- アーティスト: ELLEGARDEN
- 出版社/メーカー: Dynamord Label
- 発売日: 2002/04/03
- メディア: CD
- 購入: 3人 クリック: 255回
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1.My Favorite Song
少しくもり空のオルタナティブなグルーヴ感と跳ね回るザラついたギターサウンド融合は明快なエルレのサウンドプロダクト。
そのセピア色の最中でも吹き抜けるような爽快感、この絶妙なバランスの風合いがこのアルバムを彩る。
クールかつ痛快な細美の声の後ろで自由に駆け回るギターサウンドが、ぶつかり合わず一体感を持って包むような感触こそ、完成度を物語る心に残るオープナー。
自分の好きな事、という彼らがどこまでも追い求めるテーマはエルレ版サウンド・オブ・ミュージックの始まりに相応しかった。
2.サンタクロース
今や幻の初期の名ラブソング。
雪の夜の光景が目に浮かぶような、美しい寓話的なロマンチックさとエモーショナルに満ちた手一杯の歌詞。
ちょっと照れくさい様が、彼らを紐解く上で重要な一曲だし、ここまで甘いストレートなメッセージは超貴重な一面でもある。
3.Can You Feel Like I Do
必殺のミドルチューンの中でも彼ら屈指の一曲。後期までライブで良く歌われた。
暗い空高く舞い上がる憂いのギターが美しく荘厳で、シンボリックな優しい音は大きな時計塔の鐘みたいに耳を惹く。
切ない郷愁が滲み出るギターロックバラードはシンプルな構成ながら没入感が凄い。
この洋楽的な魅力も初期の彼らの良さでもある。
4.Bare Foot
彼らの1stシングル。
カリフォルニアにでもいるかの様な、陽性の柔らかい風合い。
キャッチーな音の裏に、確実に型破りな個性をはらんでいる事を伺わせる、ダイナミックなスケール。
こんな曲有ればいいなと、自分が描いていた世界が鮮やかに描き出される、衝撃的な一曲だった。
5.指輪
実は2ndシングル。
日本詞の美しいバラード。ここまでの直球のバラードはサンタクロースと並び今となっては珍しい。
とてもパーソナルな歌詞の描く光景に胸が暖かくなる。
’包み紙がちょっとちゃっちいんだよね’は好き。
6.月
オルタナティブなムードの日本詞のパワーポップ。
独特な言い回しが次第にバンドサウンドに押されていく、モノアイズやハイエイタスにも通ずる展開。
オーソドックスながらなんの変哲もない曲にならない、少しひねくれたオルタナティヴな魅力。
それはこの頃から変わらない。
7.45
個人的にこのアルバムではこの曲を思い出すキラーチューン。
鳴り響く場所を全て高原の様な爽快さで満たせる半面、早回しのアメリカの街角の映像を見ている様な詩世界。
学校のチャイムの様なギターリフから走り出して、コンパクトにライトに歌心が冴えるキャッチーな聴き心地。
クリーンなトーンとエッジーなグッドメロディーのコントラストは、ストレートながら最上級のニュートラルさ。
8.風の日
彼らの代表曲にも数えられる日本語詞の名曲。
リフもサウンドもメロディーも総力戦のこれぞというエルレのギターロック。
渦巻く旋風が晴れやかに霧散するような展開、少しゴリゴリ進む力強さと本来のメロディーの良さが眩しく広がるのだ。
後味の笑顔は保証されてる揺るがない彼らのキラーチューンである。
9.Middle Of Nowhere
メロウでダークなロックバラードの鉄板曲。これもいつまでもライブの定番だった。
曲も声も、暗闇でもがくような、光を渇望するシナリオが容易に浮かぶ、陶酔感のあるトリッピーなサウンド。
どこまでも陰に入るからこそエモーショナルになる叫びがノイジーで美しく広がる。
10.Lonesome
アコースティックが煌めくセンチメンタルなキラーチューン。
グルーヴィーなリフレインに、サビで訪れる跳ね上がるアンセム的瞬間がスムーズに入れ替わる。
ギター一本だとしてもエモーショナルで美しいメロディーを、何倍も表情豊かにするバンド・サウンドが眩しい。
11.Sliding Door
本編ラストトラック。
心を打ち砕かれ突き刺さる様に痛い崩壊感のある音。
突如として燃え上がった感情も、改めて魅せつけられるような声と音の衝突に何度目かのスリリングさを覚える。
これで本編終わりの扱いなのでブランク含め25分くらいあるのも良い想い出。
12.The End Of The World
太くしなるギターリフが特徴的なシークレットナンバー。
この曲はギターの生形が作った。
歌うように響くギター音色が染み渡る、ラストに最適な一曲。
いつか戻ってくるその日まで
僕がわき目も振らず熱中時代を過ごしたELLEGARDENの曲はきっと永遠に聴くんだと思う。
一年に何回か聴きたくなると言ったが、聴いている時の感情を円グラフにすると、年毎に懐かしい気持ちってのは微増してくる。
音はタイムレスに変わらないが、僕が歳とっていくのが、なんとなくわかる。
それも乙でいいんだが、やっぱり寂しさってのは出てくるんだ。
きっと戻ってくる、彼らは。
彼らの本質に近いと感じるこのアルバムの曲を聞くと、その想いを大切にしたくなる。
色褪せず今でもオルタナティヴに響く反面、これがそのまま更新されると、更に見たこともない光景が広がっているんじゃないか。
そういう思いが毎年めぐりながら、変わらない彼らの風を感じながら、想いを馳せるのもいいんじゃないかと思うのだ。
それではまた別の記事で。