無人島に持っていくならどのアルバム?第3弾!
無人島に持っていくアルバムシリーズ3。
音楽友達と良く酒飲みながら話すネタ、無人島に持っていくならどのアルバムを持っていく?という話題。
例えばそこにはサブスクリプションも存在しないとしたら。
誰もが認める歴史的名盤を持っていくのも正解だけど、何か人に言って「おっ」と思わせるアルバムが良い。
無人島でもそういうヤツで居たいのだ。
おもしろかったので記事にしました。のその3。
Green Day - Hitchin' A Ride [Official Music Video]
今回は、爆発した90年代から現代の音楽シーンでも世界最高のパンククルセイダーであり続けるGreen Dayの1997年発売の5枚目のアルバム’Nimrod’。
文字通り誰もが知ってる曲を歌うグリーンデイの、隠れた&変わった名盤として評価される1枚は、ポップパンク・メロコアという彼らのカラーを残しながら、もうちょっと光と影のバランスの違う緑色の1枚であるのだ。
大人になってから再評価されがちアルバムランキング全世界で多分1位。
今回はグリーンデイのニムロッドに想いを馳せる。
Green Dayの隠れた名曲20曲選はコチラ!
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- アルバムの背景 セルフカウンター的オルタナティヴロックアルバム
- 音楽 特徴
- Spotify
- 全曲ソングレビュー
- Amazon 購入
- iTunes
- 1.Nice Guys Finish Last
- 2.Hitchin' A Ride
- 3.The Grouch
- 4.Redundant
- 5.Scattered
- 6.All The Time
- 7.Worry Rock
- 8.Platypus (I Hate You)
- 9.Uptight
- 10.Last Ride In
- 11.Jinx
- 12.Haushinka
- 13.Walking Alone
- 14.Reject
- 15.Take Back
- 16.King For A Day
- 17.Good Riddance (Time Of Your Life)
- 18.Prosthetic Head
- 19.Desensitized
- 粒揃い?いや名盤中の名盤
アルバムの背景 セルフカウンター的オルタナティヴロックアルバム
1997年にメジャー3枚目としてリリースされたこのアルバム’ニムロッド’は、700万枚を売り上げるヒットアルバムながらも、彼等のディスコグラフィー&バイオグラフィーの中で転換・変化の真っ只中という事を象徴していた1枚だったように思う。
モンスターアルバムとなったメジャー1st'Dookie'でポップなパンクを鳴らし、ストリートからビジネスまでロックの世界をガラッと変える爆発を起こし、世紀のバンドになったグリーンデイ。
アルバム自体も2000万枚以上のセールスを残し、25年以上経った今でも誰もが口ずさめる曲達と共に、モダンロックの世界に燦然と輝く金字塔になった事は歴史の教科書にも載る事実。
ストリートから世界に飛び出した新しいロックンロールの旗手として得た評価は、当時の彼ら自身の世界にもクレイジーな程に影響を与える事になる。
硬派なパンクスには'ポップなパンクなんてパンクじゃねぇ'と敵意をむき出しにされ、それを弁明する暇も無いほど多忙なツアーとプロモーションを組まれる。
そうすればますます一部からのヘイトは高まり、その反動として数々のライヴ会場やホテルで問題行動を起こすことばかり注目され、それもまた彼らのストレスとなる’売れた’からの悪循環にハマっていた。
メジャー2ndのタイトルは'Insomniac'(不眠症)で、売れたからこそのストリートとの乖離を悩み、パンクのスピリットを失っていないという事を弁明する宣言的なアルバムだった。
パンクじゃないといけないのか。
パンクじゃなかったら売れ線なのか。
きっとロックはそんな簡単なもんじゃない。
彼らはインソムニアック後、僅かな休養期間を勝ち得ると、音楽的鍛錬を積みまくり、彼らが見た到達し突き抜けた世界からこそ見えたバランス感覚を、強烈に表現しようとしてみせた。
インスタントに誰の心にも火を点けられるポップパンクというシグネイチャーサウンドは根っこに残しつつ、ポップでロックで速くて遅くて売れ線でもインディーでもあるオルタナティヴに詰め込まれたアルバムで、情感たっぷりなアルバムを作ってきた。
セルフカウンター的なオルタナティヴロックアルバムという位置づけが正しく良い表しているかはわからないが、ジャストにひねりの効いたアルバム通しての雰囲気は、ポップとパンクの塩梅を突いた彼らにしたら朝飯前だったのかもしれない。
勢いこそ、反骨心こそ正義!という若さで聴いたドゥーキーはもちろんかけがえのない名盤だが、僕も少しだけ大人になった今、振り返るには最適で最高の1枚はココ。
Green Day好きなヤツは世界に溢れ過ぎてて、'Basket case'が1番好きです!ってやつとはもちろん飯行くくらいなら余裕だ。でも'Nimrod'が1番好きってヤツとはきっと朝まで飲める。
このアルバムの次々回作には'American Idiot'があり、どこか狭間のアルバムの様な雰囲気はあるが、だからこその自身からのオルタナティヴを捉えたアルバムがこの世にはたくさんあると思ってる。付け焼き刃の様にペラペラなものもあるが、無人島でも余裕で聴けるニムロッドは違う。
ストーリーがあるのは前提になってしまってるが、そしてそれが全くフラットに聞いたとして、むしろそう聴ける今、こういうグリーンデイが大好きだと心から言いたいのである。
音楽 特徴
Spotify
いきなり目を引くのは全18曲というボリューム。(日本版は19曲)そして50分弱という圧倒的グリーンデイスタイル。
その曲数も嬉しいが、凄く曲の幅が広いロックアルバムだと言える。
真骨頂の荒々しいダイレクトなポップパンクだけではなく、艶やかでリアリティのあるポップロック的な音には、モッズやアメリカ南部の古き良きムードまで思わせる。
しなやかさと性急さを巧みに入り混ぜて、ラウドさをふりまかず音楽的語彙の奥深さ、味わい深いサウンドが随所に沁みてくる。
ポップソングのコード進行・枠組みの中に、明らかなグリーンデイとわかるフレーズとメロディーをはめ込み、強固なグリーンデイらしさは今と変わらず健在で、それがただのポップロックとは一線を画す要因なのもグリーンデイのメロディーの強さという事だと思う。
歌詞のシナリオも単なる卑屈だったり人生訓だったり燃えるような反骨心だったり、バラエティーに富んでる事も、人間性が深まっていてとてもバランスがいい。
何より、まくしたてる様で、その実暖かいビリーのボーカルが僕は大好きなのだ。
そんなボーカルのハイライト的な部分が多いのも、ニムロッドが好きな理由でもある。
全曲ソングレビュー
Amazon 購入
iTunes
1.Nice Guys Finish Last
Nice Guys Finish Last - Green Day (Official Music Video) [HQ]
開幕の必殺ポップパンクナンバー。
ファン人気高めながら、割とレアな位置付けなナンバーで、ライブだとイントロのドラムで怒号の様な歓声が上がる。
思わず笑顔になるウキウキの高揚感のポップパンクリフの爆風は、グリーンデイのフォーミュラスタイル。
圧倒的な華を感じさせる3人によるバンドアンサンブル、それでもどこか小気味良さを中心に置いたドライな聴きやすさはニムロッドらしいアンセムでもある。
2.Hitchin' A Ride
Green Day - Hitchin' A Ride [Official Music Video]
ニヒルなダークポップナンバーは今や彼らのライブ最大の変化量を誇る決め球であり、このアルバムでも最大の見せ場。
妖しい弦音からダーク&コミカルに刻まれるメロディーはハラハラしつつ危うい高揚感を煽り、アグレッシヴなギターリフの攻撃性すら怪しく包む世界観。
禍々しくダークなわけでなく、ファニーさをもったダークポップという曲調は、彼らのエナジーを妖しくグリッターに際立たせる絶妙なオルタナ感なのだ。
1.2.1.2.3.4で爆発するギターリフの格好良さはグリーンデイ随一に楽しい瞬間で、こういう変わった曲でもキャッチーな爆発を持ってくるのは流石。
3.The Grouch
力の抜けたレイドバックなポップロック。
天然ナチュラルなロックサウンドを、躍動するアッパーなビートでリズムを刻む安定感のある心地よさ。語感的に’Fxxk You’が世界で一番映える曲。
世間は俺になにかすべきだ、って怠惰的な劣情を極めてフラットなテンションで歌う。
力が全く入ってないビリーのナチュラルな歌声が凄い好きな1曲。
4.Redundant
Green Day - Redundant [Official Music Video]
彼らの中でも至高のバラッドソング。
淡々としながら時にドラマチックに跳ねるシンプルなロックサウンドはどこまでも聴きやすく、キャッチーで少しセンチメンタルな音がとても複雑な感情を言葉にしたこの曲に素晴らしく融和する。
’リダンダント’という絶妙に男心を表した言葉はきっとこの曲のお陰で一生覚えているだろう。
そういう教訓があるのも、グリーンデイが僕らに必要な理由である。
5.Scattered
飛び跳ねる様なポップパンクメロディー×ローファイで艶やかなボーカルコーラスというグリーンデイ流のパワーポップパンクナンバー。
パワフルかつスピーディーというポップ・パンク的な達人力を遺憾なく発揮した、見せ場が多くも全てが高速で流る聴き終わった後味のいい爽快さは彼ら特有のもの。
センチメンタルなコーラスと、ガツンとくるベースライン、マイクの仕事も目立つ一曲。
6.All The Time
キレのあるオルタナギターリフから始まるパワーロックチューン。
このあたりからここでしか聴けない’ニムロッド感’は増して行く。
シンプルにガツンと来るドライヴィンなサウンドは軽快で、爽やかさよりはキレキレのボーカル回しや包括的なビリビリのグルーヴのカッコよさが際立つ。
いい感じに重力を感じながら、ゆるい様で速いマジカルでローファイなリフレインに身をまかせる痛快な一曲。
7.Worry Rock
こちらも隠れた代表曲の筆頭。
Green Dayのトリビュート・アルバムでWeezerがカバーしててそれも凄いカッコいい。
古き良きアメリカらしい物憂げだけど晴れやかなセンチメンタル&フォーキーなパワーポップ。
味わい深いメロディーが空高く舞うような風通しの良さに導かれ耳に鮮やかに響く。
歌モノを売れ線と言ってしまえばそうなのかもしれないが、ビリーの歌声はここでこそ活きる価値もあって、これも絶対的にグリーンデイな魅力の1つ。
Weezer - Worry Rock (Green Day Cover)
8.Platypus (I Hate You)
メロコアビートなファストなナンバー。
確かにメロディックさは維持されながら、ささくれた音がアグレッシブに疾く渦巻いて、聴いてる心をかき乱してく感覚に酔える。
君が死んでくれることを祈る、とか、頭蓋骨を取り出して墓の上から小便かける、とか誰に向けたのか心配したくなるくらい過激な歌詞もニムロッド的。
9.Uptight
凄まじくみずみずしいポップロックナンバー。
小気味いいビートと青さが眩しいグッドメロディーは、永遠に続いていきそうな日常感を孕んでて心地良い。
グリーンデイらしい語感の良さを終始感じられる彼らの柔らかいロックの筆頭曲だ。
10.Last Ride In
Green Day - Last Ride In [Official Music Video]
唯一のインスト曲。
PVがある事にびっくり。
静かなビーチにいるような抱擁感あるメロディー。
そもそもインストがあるのがこのニムロッドの不可思議さの極み。
11.Jinx
パンキッシュなリフがアツいショートトラック。
世界で最も大好きなポップ・パンクギターリフ。
こういうリフだけで出来た様な曲こそ至高のポップパンクだと思うし、それがグリーンデイって事が限りなく嬉しい。
ベースと表裏で絡んで、ざらつき気味なギターをパワフルに堪能できるお腹一杯の名曲。
やんちゃな冒頭のカウントダウンも、唐突な終わりもパンクらしくて◯。
12.Haushinka
女の人の名前が由来のタイトルの、アメリカン・イディオット以降のパンクオペラに繋がりそうな変則的でスケールの大きい曲。
高らかに弓引くように鳴るギターから反響する様に広がるメロディーは壮大。
随所でタイミング良く抑揚をつけるトレのドラミングも見事。
13.Walking Alone
ハーモニカに琴線をやられるハートフルな一曲。
この素朴で遠くまで通るような音に、田舎道を思い出さない人はいない。
センチメンタルな気持ちの呼び水になる土の上を歩いてるようなフワフワ感。なんかどこか日本的。
寄り添うように前を向かせてくれるビリーの声に、思わず顔を上げたくなる曲。
どんな硬派なパンクスも田舎に帰りたくなるだろ?
14.Reject
随所にグリーンデイ節が込められた伝統の一曲。
トレの驚くほどスムーズな高速のドラミング、メロディックでディープなビートのマイクのベース、心地良く歪んだビリーのギター。
全てが1ミリもずれる事なく混ざるグリーンデイバンドアンサンブルの詰まった曲だ。
15.Take Back
1分くらいで終わるハードコアソング。
一音一音重めに響くグライム風味のサウンドが新鮮。
今やあんまり聴く機会がないレアな一曲は凄く存在感ある。
16.King For A Day
Green Day - King For A Day/Shout [Live]
何故かニムロッドにおいてこの曲の印象は強いスカソング。
カントリーウエスタン調のカーニバル的な一曲だ。
僕が見たライブではこの曲の時トレが女装して踊ってた。
こういう曲が何時までもプレイされるのは、お茶目な彼ららしい。
17.Good Riddance (Time Of Your Life)
Good Riddance (Time Of Your Life) [Official Music Video]
恐らくこのアルバムで最も重要な1曲はこの曲だ。
僅か2分半のアコースティック・ギターバラッドは、とあるメディアで取り上げられて以降、結婚式や卒業式という旅立ちの場面でアメリカでは定番となった一曲で、数々の人の人生と結びついたパンクやロックの域を超えた名曲。
出だしのフレーズをミスってビリーが毒づく声まで入っているナチュラルで光も影もない彼の言葉で、人生における岐路についてを諭すように紡ぐ。
この曲は絶対に自分の胸の真ん中にあって欲しいし、この曲を裏切るような人間にはなりたくない。
そういう大切な歌だ。
18.Prosthetic Head
本編ラストを飾るチルなポップロック。
癖になるポイントがあまりにも多い遊びココロ満載&曲者的なラストソングだ。
耳に抜群に馴染むギター&ベースリフワークに、それを支えるように軽快なドラミングでユルくてロマンチックなビリーの声。
静と動を入れ替えながらこの上ないキャッチーな展開を作り上げるサウンドデザインは今でも彼らのお家芸である。
19.Desensitized
日本盤のみ収録されている一曲。
ただならぬ悲鳴と色んな物が壊れる音で始まる。バッドで何かを割る音を録ったらしいんだがそのバッドを振り回したのはトレらしい。
エッジの効いたソリッドなパンクチューン。
粒揃い?いや名盤中の名盤
これだけバラエティーに富んでいて、スカッとして、心に響いて、18曲もあって、50分弱。
粒揃いとか言われるけど、とんでもない名盤だと思う。
でも多分7-8年前とかは粒揃いとか偉そうな事言ってた気もする。
耳が肥えたのか歳をとったのかわかんないが、今声を上げてニムロッドはアツいロックアルバムだと言いたい。
もちろんこれが今のロックバンドとしてのグリーンデイに繋がったとも思うけど、それ以前に未だに色褪せず響くロックのメロディーを作り練り上げたこのニムロッドが彼らのディスコグラフィーでも輝いているんだと思う。
CDラックのグリーンデイの棚から一枚掴んで無人島行くなら、颯爽とこれを掴む男でありたい。
そう思う一枚です。
それでは、また別の記事で。