Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【バンド&ソングレビュー】Bad Religionに想いを馳せて‐パンクロックとはナンだのアンサーバンド‐

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秋の夜長にパンクロックについて考える

2019.10.09 リライト

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秋ってのは物思いに耽りやすいから、「何とかの秋」って良く言われるんだと思う。
夜が長くなって思考の迷宮にハマり頭の中がこんがらがってきた時、読書をして頭の中をスッキリとさせたり、運動して身体ごとスッキリさせたりするのだ、きっと。
そんな事を考えながら、物思いに耽る秋。
僕はと言えば、思考の栄養にと糖分たっぷりの誰かのお土産のまんじゅうを食べながら、 パンクロックの事を考えていた。
 

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パンクロックってなんなんだ。
それがわからなくて、ロックの歴史を調べた過去がある。
音楽的な成り立ちとか、歴史的な背景みたいなものはわかったけど、頭でっかちになっただけな気がした。
でも良かったのは、ラモーンズとかニューヨークドールズとか、セックスピストルズとかクラッシュとかの始まりを知って、幅広くたくさん聞くようになった事。
きっと答えは彼らの音楽の中にしかないのだ。もっと言うと多分それを聞いた自分の中にしかないのだ。
どんなに先生に聞こうが知恵袋を探したってピンと来ないのだ。
こんな抽象的な答えにたどり着くまでに、買ってきたまんじゅうはなくなりそうになる。
 
じゃあパンクロックといえば、と言われてイメージするバンドは人それぞれ
正解なんてないし、他人に違うって言われても違わねぇって言える誇りがあればそれでいいと思う。
ピストルズだってグリーンデイだってオフスプリングもハイスタだってパンク。ノーエフもラグワゴンもノーユースも。。。。。
客観視を除くとするならば、線引きが個人の中にしかない以上、すごく広義な意味で捉えるとすれば、それらは全てパンクロックに分類されるって事で間違いはない。
そう考えればいくつでも浮かぶし、一個だけ選んでくれ、なんて言われたりしたら悩みに悩んで、いくら秋の夜長でも夜が明けてしまう。
 
でも僕のイメージで、真っ先に頭に浮かぶ最もパンクっぽさを感じるバンドは、何度考えてもバッドレリジョンだった。

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パンクゴッドとも称される活動40年近いバンド、アングラな反骨心を持ったまま’メロディックハードコア’という音楽で確固たる地位を確立したレジェンドだ。

数々のバンドのリスペクトを集める彼らのキャリアを考えれば妥当かもしれないが、そのリスペクト以上に圧倒的なパンクなエッセンスを感じる彼らバッドレリジョンを紐解いてみたくなった。
まんじゅうをほおばり、大好きなAmerican Jesusを聴きながら、今回は僕にとってのパンクロックとは?そしてバッドレリジョンに想いを馳せる。
 

 

Spotify Playlist

パンクロックソング Punk Rock Song

10年前くらいになるポップパンク全盛期の真っ只中 、10代の僕は焦っていた。
ポップパンクってパンクじゃないのか?俺だけパンクロックって何か知らないんじゃないか?
周りはなんとなくわかっていそうな顔してる。
別に知らなくても誰にも怒られないのに、レポート提出前の大学生みたいに薄っぺらい知識を身につけようと必死になっていた。
学業に全く向けた事のない、答えを知りたいというリアルな情熱と、浅い知識しかない事への恐怖というちっぽけなプライドで、音楽を知ろうと奔走していた。
そこで見つけたバッドレリジョンのベストアルバム。
パンク・ハードコア界の重鎮!みたいな取って付けた様なワードにすがって手に取り、
僕が最初に聞いたのは1曲目の’Punk Rock Song’だった。
 
 
何から何までがパンクでどっからがパンクじゃないのか、頭の中が混線してビジョンがトっ散らかっていた中、それらの配線を全部引っこ抜いていったこの曲。
全然クリアなビジョンにはなってないけど、全部引っこ抜かれた砂嵐の映像の方が遥かに清々しかった。
違和感がなくなった、と言った方が近い。
パンクって何?の答えなんてものがなくても、初めて聞いたバッドレリジョンがどこまでもパンクロックなのだという事をいつの間にか知っていた。
百見は一聞にしかずなのだ音楽は、多分。

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鋼の様な音を軽やかに攻撃的に疾走させる。
そこには確かにメロディックなメロディーがありつつ、そしてハードで重く音の多重奏には甘さだけでは済まさないストイックさがある。
極めて淡々と渋すぎるボーカルが、This is just a punk rock song.と歌う。 
オリジナルパンクの実感のわかないほどのレトロ感もなく、コアなもののハードに尖り過ぎて敬遠してしまう事もない。
ビルドアップされた熟練のパンクロックサウンドには受け入れやすさすら感じ、彼らがパンクスの基準点になるのは、自然な事だったのだ。
 

メロディックハードコア

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もう40年近くパンクバンドをやっている。
それだけでも周りに凄いでしょ!って自慢したくなる粋なおじさん達なんだが、シーン最前線でガンガンにライブをやりながら1-2年のスパンでアルバムを出す現役っぷり。
そんなに暴れ回るようなライブを毎回やるわけではないけど、それでも凄い。
パンクと花火は儚いからこそ美しいという格言めいたものすら吹き飛ばし、メンバーが白髪になってもパンクロックを鳴らし続ける姿には同じ男として漢気を感じずにいられない。
むしろ金稼ぎの再結成で、何十年ぶりかにみっともない姿を晒すよりは、よっぽどカッコイイオヤジの姿だ。

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1979年ロサンゼルスで結成し、自分達のCD出すべく今では老舗パンクロックレーベルとなったエピタフレコードを自分達で立ち上げる。
自らの手で創り出すDIY精神というパンクに根ざす物の必須なスタイル、それを破滅的なモノではなく、継続的に誇りを守れるモノを作り出した彼らのケースは、その後のパンクバンドの活動のモデルケースにもなっている。
音楽的なもの然り、スタイル的なもの然り、近代パンクロックの祖とも言えるバッド・レリジョンの存在感の裏側には、喚くだけのアウトローではない確かな知性と説得力が付随している。
パンクバンド=バカではないが、パンクさらにはロックバンドでくくって考えても、彼らの知的な魅力は随一なのだ。
むしろパンクロックを批判する性質をもつ頭の固いタチの連中よりよほど頭がキレる。
バンドの心臓部の2人は本業の傍らに、ボーカルのグラフィンは大学の生物学の教授・リードギターのブレッドは老舗パンクレコード会社の社長という異色な肩書きをもつ。
ネイティヴでも辞書を引かないと理解できな様な単語すら駆使しながらシリアスに、そして何よりも的確に、あらゆる軋轢に異議を唱えられるパンク。
その反面で、「どんなバッドレリジョンの歌も、お前の人生を完璧にはしない。」と、冷ややかにリアルな現実を突きつける。
少し後ろめたい気持ちになるような音楽に打ちのめされる感覚。
避けて通れない現実を正確なレトリックで炙り出し、あえて気づかせてくれる大切なモノであり、若いからこその傍若的な勢いだけでない説得力に満ちた反骨心もネオパンクと言える新たな姿だったように思う。
 

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ロサンゼルス発のバッド・レリジョンは流れとしてはオリジナルパンク後のアングラなハードコアシーンをルーツに持ち、デビュー直後は、よりコテコテのハードコアな高速のパンクが中心の音楽性だったが、1988年3rdアルバムの ’Suffer’が転機になりメロディックな音を混ぜこんだシフトチェンジをして、現在まで続くメロディックハードコアの爆心地となった。
陶酔的なポップ感は無くどこまでも現実的、速く・短く・攻撃的でメロディアス、しかし甘さはなくむしろ厳しさとか怒りが込められたマイナーなメロディー。
だからこそ叙情的な感触があり、アグレッシブに疾走るハードコアサウンドの中にロックミュージック的な要素を含んだ事で、刹那的に終わるだけでない恒久的なダイナミズムを手にしたのだ。
 
個人的に圧巻なのは、ボーカルのグラフィンの存在感。
パンクシンガーのカリスマ性はどのバンドも言わずもがな大切なファクターになるが、このオジサンの歌唱力と安定感はエグい。
淡々とクールに歌い上げるという事自体が難しいファストな曲でもあっさりやってのける歌唱力、哀愁も怒りも感じるが、全体的に落ち着いた深みとコクを感じさせる男の声。
いい意味での重くダークなハードコアな音色はそのままに残しつつ、心地よい哀愁+疾走感で爽快なまでの開放感を生み出す必殺のサウンドで、数々のフォロワーを生み出してきた。
フォロワー達はこぞってエピタフレコードと契約し、ノーエフエックスやオフスプリング、ランシドなど数々の現代パンクレジェンドが大きな波を起こした。
フォルムを変えながらも、そのメッセージは受け継がれ、今僕らの周りに流れるパンクに繋がるというわけだ。
 

トラックリスト ソングレビュー

2019年の最新作までに出したオリジナルアルバムは17枚。
デビューアルバムは1982年。2年に1枚のハイペースでアルバムを出し続けている計算。
ほんの一部になるが、代表曲を紹介していきながら、彼らの音楽性に触れていく。
1.Punk Rock Song

バッドレリジョンのパンクロックが凝縮された名刺代わり的な一曲。

高速にカットされるヘヴィなリフのギターサウンドと、早口ながら丁寧にどっしりと積み上げるようなグラフィンの声が混ざり合う強固な音の塊。
口ずさめる様なキャッチーなメロディーラインで有りつつ攻撃性は抜群で、能天気で陽気なサイドとは違う、硬派さが確固たる軸だからこそのメロディックなハードコアなのだ。
 
2.Supersonic
超高速の名の付いたファストなキラーソング。
バキッと目が限界よりちょっとだけ見開かれるような、目まぐるしい高速のビートにスリリングなギターリフが刻まれる高速パンクサウンドが、哀愁ある音色を秘めながら力強く叩きつける燃えるような爽快感。
ハードにメロディアスに硬く速くのバランスに、彼らの特徴でもある絶品のコーラスワークも存分に感じられるメロコアの必殺芸術作品。
 
3.Sorrow

ミドルテンポのタイドな展開から次第にテンションを上げてくる哀愁度NO1のナンバー。

徐々に疾走りだすサウンドを受けても、どこか語るようなボーカルが穏やかさをもった存在感で暖かさすら感じる。
全編通してセンチメンタルな色彩が色濃くて、決して荒っぽさはなく丁寧に響かせるボーカルが大人っぽいミドルパンクアンセムだ。
サビのコーラスの掛け合いで哀愁感はピークを迎えて、ちょっと泣けすらするし、そもそもの音楽人としての深さを魅せられる。

 

4.A Walk
枯れたギターから始まるギターロックチューン。
速すぎることは無く、凄く馴染みやすいリズムのミドルチューンで、しっとりとアツくドライヴィンなビートに合わせ歌い上げるボーカルは圧巻。
終始枯れたギターサウンドのアダルトな質感、若さ故の未熟や荒っぽさを言い訳にしない魅力すら纏うセピア色な感触はこの漢達しか出せないと思わせる唯一の色めき。

 

5.You Are (The Government)
1分半に満たない高速ショートトラックながらメロコアのオープナーになったような一曲。
アルバムの ’Suffer’からの一曲で、漢らしくハードなギターで奔りながら確かなメロディーを持ったボーカルがコーラスとともに色めいて、最終的にはセンチメンタルにオフェンシブに刺さる。
短いだけに恐ろしくダイレクトに濃いままのメロコアのいろはのいが詰まった一曲だ。

 

6.21st Century Digital Boy

キャッチーなロックグルーヴに包まれた太めのギターロックナンバー。

彼らの曲の中でも群を抜いて耳に残りやすいリズムとリフで、ライブでも定番の一曲。

これ以上無いってくらい心地いい良い歪みのギターと骨太なスケール、ミュージシャンインテリジェンスに富んだうねるようで美しく波及していく鳴り音は貫禄の勢い。
シニカルかつ現代批判的な内容も、こうやってめちゃくちゃスムーズに歌うからこそ強烈に心に反響する。
 
7.Fuck You

実は最高の売上を記録していた近年のアルバムからファストなパンクナンバー。

メロディーも、コーラスも、爽快感も、何も変わらないタイトルトラック的な存在感。
極めてシンプルなワードに、チリチリとする焦燥感と淡々と重ねられるファストな哀愁。
スーパーパンクオジサン達、貫禄の最新必殺曲。
 
8.Honest Goodbye

艷やかで壮大なロックバラード。

切なく泣きのギターが咽び、あっさりと空間を壮大な哀愁で包めるメロディーの降り注ぐ感覚。
オーソドックスながら味の有りすぎる深み・味わいが香るぐっと噛み締めたくなる説得力。
大好きな名曲。
 
9.American Jesus

バッドレリジョン最大の曲であり、メロコアクラシック殿堂入りの一曲目。

きっとパンクがこの世から忘れ去られない限り、この曲はずっとその先頭で鳴る。
ダークでニヒルなリフに、疾走感を増していくギターリフが重なって、唯一無二のメロディアスハードコアサウンドを作る。
悪い・宗教らしいどこが厳かでちょっとオカルティックさすら香るハードコアの中心にあるべき空気感のレジェンド的な一曲。

 

バッドレリジョンとは パンクロックとは

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誰もが個人レベルで直面する様々な軋轢を、切ない哀愁をメロディックでハードな音に混ぜ込みながら、正確なレトリックで背中を押してくれる。
ダークでシリアスながら、触ってみると何よりも熱かった青白い炎の様な押しこめられた情熱を、絶やさないペースで邁進し続けた結果、時代を超えてその炎は火柱をあげていったのだ。
どの炎に触れようと、メロディックな熱気の向こう側には、常にバッドレリジョンの音がある。
 
僕の様なリスナーにとって、パンクロックとはただの言葉であり一つのスタイルの名前に過ぎない。きっとそれでいいのだ。
そこに一般的な概要みたいなものはあるが、’そんな枠組みパンクにはいらねぇ’と破滅的な一面がある故にそれすらも意味をなさない部分もある。
ロック音楽の一端として始まっただけに、フォルムを変え転がり続けてきた。時が経ちすぎてしまったのもある。
 
詰まる所、その価値観も、ボーダーも、答えの出るバンドも人それぞれ。と思う事にした。
せこいジャンル分けなんか拘って知識を詰め込むよりも、若者をそこに向かわせるカッコよさをまず体感すべきなのだ
もちろんそこから歴史を紐解いて、色んなバンドの繋がりを感じるのは、最高。
知識と直感がシンクロするような聴き方も楽しいのだ。
何か一週回って最初の思考に戻って来た感もあるが、それもまた良し。
パンクも思考も掴んだ栄光よりも栄光を掴むまでの過程が楽しいのだ。
 
でも一つ解を出すとするならば、バッドレリジョンが今の世代のパンクロックの一つの基準点であることは言える。
儚く破滅的な美しさを体現してきたパンクを、背負い続け戦い抜いてきた長い歴史も。
より音楽の本質の近いだろうメロディックなものとの結びつきも。
偉大なオリジナルパンクをバッドレリジョン以前と呼ぶのも、現代を彩る数々のパンクの形がバッドレリジョン以降と捉えるのも、僕にはとても自然な事なのだ。
もはや暖かみすら感じる風貌になってしまったが、それでもまだまだパンクロックを鳴らし続けてほしいと、切に願いたい。
そんなバンド、バッドレリジョンに想いを馳せて、この季節、思考はとまらないのだ。
 
それではまた別の記事で。
 
【アルバムリスト】
ザ・プロセス・オヴ・ビリーフ

ザ・プロセス・オヴ・ビリーフ

  • アーティスト: バッド・レリジョン,グレッグ・グラフィン,ブレット・ガーヴィッツ
  • 出版社/メーカー: ソニー・ミュージックジャパンインターナショナル
  • 発売日: 2002/01/23
  • メディア: CD
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