Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【バンド&ソングレビュー】The Vinesに想いを馳せて

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忘れ難く、忘れたくないロックのアイコン、The Vinesに想いを馳せる

イヤホンが断線してしまったので買い替える事にしたのだ。

ぶるーとぅーす的なワイヤレスのやつがイマイチ信じきれなくて、いわゆるイヤホンを探して迷っていたが結局は何となく感じたカッコよさで買うのが良い買い物のコツだ。

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このデザインに惹かれフェンダーが出しているイヤホンに買い替えた。

繊細な人間ではないから細かいことはわからないけど聴き心地は良い。

ギターの音色にスポットが当たり、クリーンながらより近くで鳴っているような迫力。

モノ買い替えた時、特に生活において重要なモノの場合に重要なのは、ソイツと相棒にならなくてはいけない事だ。

そういうフィーリングが合った瞬間が必ずあるのだ。

まだまだ様子を見合ってるイヤホンからThe Vinesは突如として身体に馴染む衝撃だった

 

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オーストラリア・シドニー出身のロックバンド、ザ・ヴァインズ。

オーストラリアの地からロック界を席巻し、ローリング・ストーンズ誌の表紙を飾った時は'Rock is Back!'とデカデカと書かれた2000年代のロックの救世主として喝采を受けた。

ボーカルのクレイグ・ニコルズはアスペルガー症候群を患い精神を病まれトラブルを起こしつつも、天才的で究極的にピュアなロックのアイコン的な魅力を持ったフロントマンであり、きっと未来永劫その引力は常にロック界に僕に影響し続けるはずだ。

ふとイヤホンを替えた時にスッと心のド真ん中で鳴った様に、そう言えばクレイグのギターもフェンダーだ。

本日はThe Vinesに想いを馳せる。

 

オーストラリアに生まれた純粋で苛烈なロックアイコン 超かっこいい緑のパーカー

また買い物の話になって申し訳ないが、僕はこのMVのおかげで死ぬほど緑のパーカーを探した。

そんな中学生みたいな買い物をさせるくらいクレイグの姿は、まさに'アイコン'であり強烈に人を惹き込む類のものだった。


The Vines - Outtathaway

インディーで爆発的なロックサウンドに、撒き散らす様なザラついたボーカルは強烈にエッジ立っていて、心配になるくらいスリリングで抗い難い程にカッコイイ

初っ端から上裸の男がスニーカーで自分の頬を狂ったように叩く、苛烈でカオスなライブハウスの空間で、誰よりも目を惹く緑のパーカー着たクレイグ・ニコルズのマンパワー。

数々、歴史上ロックアイコンとして認識されてきたレジェンド達と全く遜色ない観るものを惹き付ける眩いほどの存在感は、危うさと隣り合わせに絶大な魅力を持っていた。

オーストラリアのロックバンドとしてAC/DC以来20年以上ぶりにNMEローリング・ストーンズ誌の表紙を飾り、ipodのCM曲にもなり全世界でロック界ポピュラー音楽界のアイコンとしてあっという間に頂点に立ったバンドのフロントマンは、アイコニックさと共に心底ピュアな男だった。

 

苛烈さが行き過ぎあらゆるトラブルを巻き起こした後、アスペルガー症候群を公表し、精神の不安定さを曝け出しお騒がせどころじゃすまないニュースもあった。

僕は見ていないがカート・コバーンが生きていれば同じ印象を抱いたかもしれない危うさから来る畏敬の念も、クレイグは一級品だったのだ。

音楽とともに届くそういう陰なニュースに抱く憐れみも嫌悪感も含めて、聞く側は飲み込む必要があり、何より素晴らしいクオリティーを誇る彼らのロックというフィルターを通して聴くことが彼の存在の証明だと思うのだ。

 

The Vinesとは

 

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ヴァインズというバンド自体クレイグの精神状態に大きく左右されるバンドだった。

1994年、最も最初のメンバーであり親友のベーシスト、パトリック・マシューズとヴァインズを結成する。

そのパトリックもバンドブレイク後になるが、あるステージで観客に暴言を吐き続け演奏をしないクレイグに嫌気が差しステージを降りそのまま脱退したりしている。後に復縁はしているらしいがバンド復帰には至らなかった。

2001年までのらりくらりとバンド活動をしていたが、'Factory'という音源が話題になりブレイク。

あっという間に有名プロデューサーがついてロスでレコーディングされた1stアルバムで世界中で絶賛を受ける。

ストロークスリバティーンズなどガレージロック・リバイバルの流れにも乗り、オーストラリアからロックの世界を救うバンドとして祭り上げられる事になる。

 

ニルヴァーナ・ミーツ・ビートルズと称されたそのサウンド。

お互いのコアで捻くれたファンからすれば、あのねそもそもビートルズ(ニルヴァーナ というのは、とか講釈が始まりそうな、とんでもなく浅はかなキャッチコピーも無視は出来ない説得力をもっていた。

ダークサイドオブビートルズから、ブライトサイドオブニルヴァーナまで、深く大きい幅でどちらにも触れられる奇跡の声。

無垢でピュアな部分が剥き出しに荒々しく美しい、宝石のように煌めいていて燃える様にアツい。

プリミティブなパンクさで問答無用感の暴威も振るいつつ、素朴な疑問ってやつは子供のふとした発言の様に核心をついてある意味無機質にダイレクトに届くのだ。

 

ある意味再解釈であるガレージロックリバイバルな流れの中でも、エポックメイキングな雰囲気を醸しつつマニアックでフェティッシュと言うよりは、どストレートながら音色の違いが彼らを断トツの存在にしていた。
それでこそビートルズ・ミーツ・ニルヴァーナの真骨頂であると言えるし、シンプルなサウンドで勝負しながら、そのメロディーの濃密さと摩擦を起こすようなキレの良さで、空間を歪めるほどの圧力をかけてくる。
宇宙空間まで舞い上がったかと思えば、景色がサイケに歪むほど高速に叩き落される。
それでメロディーが成立するサウンドメイクも憧れのビートルズのポップ感覚から来ているものだし、臨界点を超える危険な温度・濃度を厭わない熱量の上げ方でも、退廃的なものになりすぎない甘美さがあるのは、まさにそのセンスから生まれるものだと言えるのだ。
そういうカオスな快感を、自然発生的に奇跡的なバランスで味わわせてくれる稀有なバンドがヴァインズなのだ。
 

ソングレビュー8曲

1.'Ride'
最強無比のキラーチューン。
iPodのCMにも使われた絶対的な耳触りのリフ。
バキバキに尖った音がメロウに流れて、徐々に強靭に昇華されるバンドサウンド。
グルーヴィーでドライブなリフから馬力を保ち続け四方八方に炸裂するギター。
音が束になって拡散されるローファイな爆発は毒気も悪意も全部ひっくるめたヤバい快感指数を誇るのだ。
クールに華々しく、メロディックでロマンティックなボーカルは、神秘さに触れるような陶酔感すら感じる、彼らの名刺的な一発。
 
2.'Get Free'

グランジスタイルのもう一つのアンセム。

グランジらしいディストーションの効いたギターワークに崩壊的なボーカルが乗りうねるように臨界点ギリギリを攻める音。
ヘヴィーでダークなポップネス、アイロニーに使いこなすメロディーセンスが炸裂したアンセムだ。

矛盾と摩擦の中で圧巻の叫びはリアルなヴァイヴで腹の底に火を注ぎ、ソリッドで沸騰する様なエネルギーを持ってる。

そしてこの赤いジャージもカッコイイと感じてしまう素晴らしい見栄えも良い。

 

3.'Psychomatic'


The Vines - Psychomatic

近年のアルバムから、真っ黒に燃え盛るヘヴィでパッショナブルなショートチューン。

グランジーなギターがギラギラに燃えつつ、鮮やかに跳ねるベースがダークなユーモラスを加える。

粗暴そうでピュアに響くロマンに満ちたヒリヒリしたボーカルは超健在だ。

ノイジー&メロディックのバランスの妙をつき聴きやすく、アンストッパブルな疾走感は鮮やか。

 

4.'Outtathaway'


The Vines - Outtathaway! (JTV Live)

本能的でインディー&ローなロックチューン。

よくよく聞けば呆気にとられる程シンプルなギターサウンドがメロウに鳴りつつ、扇情的でヤバい程快楽的なボーカル&クールなコーラスが、超かっこいいクラッシュ感覚を植え付けて心を離さない。
フリーキーなガレージギタープレイの強靭な聞き応え、定型などないロックのカオスな真髄に触れる瞬間。
お気に入りの緑のパーカーと共に、この曲は一生忘れない大好きな曲だ。

5.'Green Utopia'


The Vines - Green Utopia

ガレージなギターリズムが心地いいメロウなナンバー。

ささくれ立った感性を解き放った末の陶酔感は甘く、ナチュラルにドラッギーな隔世感あるクレイグの声はまさに理想郷の域。

どこまでもロウに響かせても、それでも磁石のように惹きつけてしまうサウンド。

コーラスが彩るサイケな音空間、淡々としたギターが怖いくらいクールに刺さるのだ。

 

6.'Don't Listen To The Radio'


The Vines - Don't Listen To The Radio

サイケなポップロックワールド。
この記事を書いている時、いっつも口ずさむのはこの歌だった。
それ程キャッチーで、表裏を返せばガレージロックらしいブギーなリズムも塗り固められた真っ黒な色彩。
黒い爽快感は、不穏で粗暴で、どうにも破れかぶれで、美しい。

セクシー&サイケデリックな良曲だ。

 

7.'In Miracle land'
最も美しいミドルチューン。
荒れ果てた精神に優しくオーガニックなサウンド。
超ビートルズなサビの転調+メロディーラインは圧巻で美しく奏でられるギターと割と滑る様なビートが爽やかに吹き抜ける。
エコーのかかり具合が絶妙だし、幻想感、感動的に華開く展開は、いつの間にか心の真ん中で鳴っている浸透性をもつ。
元々表裏で持ち合わせている穏やかな部分か、或いは激情の果ての境地の優しさを感じる優大なナンバー。
 
8.'Winning Days'
最後は素朴でピュアなバラード。
優しく言葉を紡ぎながらグラマラスさも香る無二の穏やかさ。
雄大はバラードがシャープさを持って広がる爽快な音空間で、ゆったりと蕩けそうに甘いクレイグの声に浸れる。
キラキラと輝き天空から降り注ぐギターと寂静観を色付けるベースラインが、どこまでも幻想さを増し絵本の世界にいるような純朴な鮮やかさを演出する。
もう一度輝く最後の転調もドラマチックだ。
それこそ絵本の様に、何十年経っても誰かの耳に届く事が想像できる、暖かい魅力に満ちたバラードだ。
 

今どこで何をしていようと、僕はThe Vinesを聴く

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絶対的な諸刃の才能を持ち飛び抜けたアイコニックさでロック界の先頭を走り抜けたヴァインズ。
魅力とは?と問われて考えだすと収拾がつかなくなる究極的な魅力を持ち、それは誰しもが持ち得ないものだと言うのを誰しもが知っていた。
もしかしたら、過ぎたカリスマとして忘れ去られるのを最も恐れているのはクレイグ本人かもしれない。
物憂げで虚ろな目つきは、きっと一生忘れられないだろう。
誰かが彼を気にしていないと、きっと彼はどうにかなってしまう。
根本にあるそういう心情はきっと間違っていないし、それが彼の魅力の震源地になっているのかもしれない。
だからきっと、イヤホンが変わろうって時にふと心に引っかかるんだろう、なんにせよこうやって想いを馳せれる事は良いことだ。
新たなお気に入りに加わった僕のフェンダーのイヤホンから流れるクレイグのギターは、今日も今日とてやっぱり忘れ難いほどカッコイイのだ。
 
それではまた別の記事で。