僕の夏に強烈なインパクトを残した新進気鋭の若手ロックバンドに想いを馳せる
去年もそうだったんだが、今年の夏も想像の万倍心打たれたバンドに出会ったという性懲りもない話だ。
やっぱり音源から入るよりもライブから入ると異常な程、思い入れが強くなる。
そんな事、本来はあまりないんだがサマソニの場では往々にしてそういう事が起こるのだ。
去年そういう形で出会ったSWMRSもCirca Wavesもゴリゴリにまだパワープレイしているし、今年のThe Sherlocksも既にそうなっている。
2018年のSUMMER SONICの開幕ステージを飾ったザ・シャーロックス。
出演が決まってからサラリとしか聴いていないが、きっと予習はそんなもんの方が楽しめるような気も最近してきた。
いつもより高く青い空の下できいたシャーロックスは、この夏を物語にしようって時にも挿絵つきで紹介したいレベルの満足感だったからだ。
本日はThe Sherlocksに想いを馳せる小コラム。
昨年心を打たれたバンドはコチラ
兄弟+兄弟からなるアークティック・モンキーズの後継バンドとして
複雑で重厚な音事を如何にデジタルの力で組み合わせ世界観を構築するか?が世界の音楽的トレンドの中、ロックはその反骨精神でストレートな音だけで濃淡自在に世界を描き出す道を選んだ。
どこまでもダークな心象風景を描く濃さもあれば、ポップ性と大衆性は清涼性と結びつきより遠くまで降り注ぐ様な音と化していった。
今回見たシャーロックスもその’モダンさ’を的確に捉え、どこかUKロックらしいギターロックに対する誇りすら感じる、正当な後継者感も後押しし世界的な規模で鳴っているのだ。
2010年イギリスのシェフィールドで結成されたThe Sherlocks。
言わずと知れたモダンロックの王者アークティック・モンキーズの生まれた街の出身として、彼らの音楽がルーツになり、他にもビートルズやザ・ジャムやオアシスやカサビアンやリバティーンズ辺りを聴き漁ってきた青春時代を過ごして来たようだ。
4人組のオーソドックスな構成だが、それが2組の兄弟からなる珍しいバンド。
ボーカル/ギターのキラアン・クルックとドラムのブランドン・クルック。
ギターのジョシュ・デヴィッドソンとベースのアンディ・デヴィッドソン。
全員20代前半の幼馴染で、幼少期の頃に引っ越しによって近所になりサッカーしてたらいつの間にか親しくなったそうだ。イギリスらしい青春。
幼馴染って2人とかでも何でも出来る感は常にあるが、それが兄弟もプラスされる4人ならきっと最強だ。
ハイスクール時代に結成したバンドは割と長い下積みの時代に入る。
2013年には最初の音源を作りライブに明け暮れる日々だったようだ。デビューアルバム時までには1200回ライブしたと言ってるから一年で150回換算になる。
2014年のシングルのLive For The Momentを発表すると怒涛の勢いでイギリスに広まり、翌年にもシングルが本国インディーチャートでトップを飾り大物ルーキーとして期待の的に。
デビュー前からMVの再生回数は伸びまくり、2015年にはレディング・フェスティバルにも出演し更に名を挙げる。
決定的だったのが2016年リバティーンズのツアーの全公演でサポートを勤め上げたこと。
その後もアルバム制作に入りつつもキングス・オブ・レオンやリアム・ギャラガーのサポートも務め莫大な経験値を積みながら2017年いよいよアルバムデビューし、いよいよサマソニにやってきてくれたわけだ。
震えるほどにストレート
ビジュアル的にも、あれThe Who?みたいな立ち振舞と表情魅せるザUKロックな出で立ち。
それに違わず音も中々のドストレートだった。
出身地が同じであり最も直近の敬愛を集めるロックバンド、アークティックのフォロワーとしての雰囲気も存分に感じられつつ、サーカウェイヴスの後輩らしい潤いのあるメロディーのミックス具合も丁度いい。
どこまでも風通しの良い鳴り方をして、大胆な程クラシカルなギターロックをなぞるメロディーも盛り込む。
ギターの鳴り音の響き方を何よりも重視し、混じり気なしの純粋な色のギターサウンドとビートで、思わず口ずさんでしまいそうなメロディーやリフがたくさん。
どこまでもクリアだけど、繊細さよりもどしゃっとしたウォールオブサウンドに近く寄った性質もあって’聴かせる魅せる’よりも衝動的に身体を動かされるエネルギーも持っている。
ボーカル・キラアンの透明な声は反響しやすくも、芯の通ったハスキーさが良いしなりで奥行きのあるボーカルになってるし、綺麗に鳴ると思ったら、ここぞって時にガシガシ攻めてくるギターのアレンジには膝を打たざるを得ない。
おとなしめでキレイめなバンドに見える。もちろんそりゃスタイリッシュで綺麗だ。
でも奥には確実にイギリスのバンドにしか出せない類の誇り高いエネルギーが良い形でブレンドされてる。
それはどこか遠い日からの約束のようにも思えてくる、そんなロマンチックな思いすら浮かぶ彼らの佇まいは浪漫に溢れていた。
ソングレビュー
1.Live For The Moment
The Sherlocks - Live For The Moment (Official Video)
1stアルバムのタイトルトラックでもあり1stシングルでも出した彼らのアイデンティティーがつまったイントロダクション的な一曲。
MVの冒頭から中盤まで歌っている人はボーカルではないから注意。
透明な疾走感と渦巻くような美メロギターライン。
ドシっとしたベースラインが聴かせてくるギターメロディーの自在さを支える良い補完。
捲し上げる度にフワッとこっちが浮き上がってる様に感じるボーカルで、キャッチーなフレージングを繰り返すのが実にスタイリッシュ。
2.Escapade
高音のリフに彩られたエモーショナルなギターロック。
アシッドに妖しい雰囲気もクールに染めるアート性はUKらしい。
光線のように回転するギターからコーラスも含めて陶酔感に包まれたドラマチックナンバーに仕上がってるサウンドメイクが一貫性あっていい。
メロディーとベースラインの表裏の抑揚がきっちり出ている部分も、バンドの連携力の高さを感じるのだ。
3.Chasing Shadows
The Sherlocks - Chasing Shadows (Official Video)
壮大でカラフルなメロディー、スムーズに聴かせるシンクロナイズドなロックンロール。
疾走感の裏で割とギラついたギターが燃料になって大きく広がって包む類の音。
耳に鮮やかなでどこまでも飛びそうな飛距離のあるボーカルが耳元を吹き抜けていく感覚はちょっと普通じゃないくらいに気持ちいい。
凄く歌謡的なところもあってグッとくるユニゾンで立体的で花開く爽快スタジアムアンセムだ。
4.Will You Be There?
口ずさみたくなる王道太文字のギターリフで攻めまくるギターロックチューン。
攻撃的でもどこかセンチメンタルに情緒を増幅させるビートのうねりに、エモーショナルでもスタイリッシュさからはみ出ないクールでアツいボーカルが映える。
軋むように鳴くギターの枯れた色合いもボーカルと絡んでセクシャルに響く。
モノクロなMVも良い感じ。ドラム格好いい。
爽やかながら物凄くロックな気分にさせてくれる、モダンロックの最良の形。
5.Nobody Knows
The Sherlocks - Nobody Knows (Live at This Feeling TV)
湿気ゼロの爽快なサウンドに、超ハスキーでセクシーなボーカル。
浮遊するようについに雲の上で聴いてる様な陶酔感、それでもしっかりと踏みしめられる土台に根づいたどっしりとしたサウンドに魅せられる。
終盤のセッション的な見せ場はロック的に洗練されていてハイブロウな衝撃が有るとともに、大きな夕日を見ているような凄くロマンチックな光景に心を打たれた。