高校時代暗かったヤツのアンセム・これぞスクールパンクス Bowling For Soupに想いを馳せて
皆様の高校時代はどうでしたか?
僕には、良くも悪くも無かったし、言いようのない閉塞感みたいなモノは常にあった。
あの頃に戻れるけどどーする?と言われたら、やり直したい気持ちはもちろんあるが出来んなら他の時代にしてくれと言うと思う。
そのくらい印象のない時間を過ごしてきた僕の高校生活は、どっちかって言うとナードだ。
高校時代暗かった事が笑いのネタになる昨今。
笑っちまったほうが良いには良いけど、自慢げにTVでエピソードを話す人見てるとお前らホントにそうなの?と思ったりもする。
笑っちまったほうが良いには良いけど、自慢げにTVでエピソードを話す人見てるとお前らホントにそうなの?と思ったりもする。
同族嫌悪なのかもしんないが、あのモヤモヤを思い出したくないのかもしれない。
どうにも蔑まされてる様な企画だぜ彼らに自己投影は出来ない、そんな気持ちでこのPVをフラッと見て何故がスカッとし、このバンドに想いを馳せた。
ここまで仕返しをしたいヤツが多いわけではないが、底抜けに明るいアメリカンなコメディータッチのPVは何故か痛快で、チープだとわかっていても肩入れして見てしまう。
溌剌なポップパンクメロディーでも曲の内容は、高校生活終われば終わると思ってたサイテーな世界は大人になってもそんな変わらない、と'なんてこった!'みたいなテンションで嘆く。
めっちゃ分かるし、あざとさゼロの後ろ向きなファニーさは暗黒時代の僕すら照らすようにやけっぱちに明るく響く。
彼らを高校時代に聞いていれば、何か違った色で世界を見れたかもしれない。
少し大げさにそう思う程、今聞いていると輝きを増すのがこのBowling For Soupだ。
2000年代中期、日本では数々ブレイクしたポップパンクバンドの一角というイメージでも、本国アメリカでは絶大な人気を誇るポップパンクレジェンド。
こっちもおじさんになった今、何故か無性に聞きたくなり勢い良く泣けるバンド。
セピアな瞬間とカラフルな瞬間が黄金律で混ざり心のパーソナルな部分にダイレクトに刺さる。
ちょっと切ない自己投影は、何日かに一回おじさんには必要なのだ。
Bowling For Soupに想いを馳せるレビューです。
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Spotify プレイリスト
ド名曲にして彼らの本質も描いたアンセム'1985'
彼らの代名詞となった最大のヒットナンバーは'1985'という曲。
そのメロディーのキャッチーさと切なさという曲自体の鮮やかさと共に、エピソードも語り継がれるアンセムだ。
グリーンデイによるポップパンクビッグバンの起きた1994年に結成した彼らは2000年前後にはメジャーバンドに。
そして2004年に彼ら史上最大のアンセムのこの'1985'が生まれる。
元々はSR-71というパンクバンドの2003年に発売されたアルバムに収録されてる曲でそのカバーなのだが、元々親交のあったSR-71のメンバーにボウリング・フォー・スープのボーカルのジャレットがどうしてもカバーをしたいと頼んで産まれたカバーだそうだ。(全く逆にSR-71からお願いしたという説もある)
かつてのクラシック・ロックのカバーではなく、直近出された同系統のバンドのカバーという珍しいケース。
それが抜群にボウリング・フォー・スープに馴染み、ラジオでハードプレイされ全米のリスナーにも彼らの曲として馴染んでいった。
彼らにとっては運命の曲で、聴いた時に電流が流れる曲だったはずだ。
デビーという結婚して子供も産んで退屈な人生を過ごす女性が主人公で、今のポップシーンと自分の現状を嘆き1985年はどこに行ったの?と彼女の黄金時代にしがみつき想いを馳せる。
それをダサいって言われようが、こっちは時間よ止まれと恋い焦がれるほど想っちまってるんだ。
強烈に眩いポップなギターサウンドの中に、どうにも変えることの出来ない時間の経過という絶望にも近い切なさが濃縮される。
MTVより前、ニルヴァーナじゃなくてマドンナじゃなくて、あの頃のU2をモトリークルーを返してと、バンバン超有名な固有名詞が出て来て、鮮やかに懐古的で苦しい程にわかりやすいこの曲の良さと、根っこの部分で彼らのポップパンクは大いにマッチしていた。
底抜けのハッピーさでスカッと笑い飛ばすコメディチックなファニーさはありながら、切なく真摯に想い出を噛みしめジワッと溢れるセンチなエモーショナルで急に胸を染め上げ、想い出を投影し青春映画のサントラになり得る様なサウンドを作るのがめちゃくちゃ上手かった。
だからこそだ、海の向こうの何十年前の光景だろうと、どこかパーソナルで懐古的な瞬間に投影出来て、止めどない感情移入はあっという間に涙腺を粉々にしていくのである。
ポップパンクとユース・カルチャーの密接な関係 その達人ボウリング・フォー・スープ
グリーンデイを皮切りにした1990sのポップパンクの勃興とともに、日常を感情的な演奏とともに叫ぶというスタイルがユースカルチャーに反響を呼んで、その内容はポップパンクの成熟と共に恋愛や家族や友達や学校の事にまで及んだ。
世界情勢よりも僕らの周りの世界にまず言いたい事がある。
好きな女の子の事だったり、パーティーばっかしてるモテてる奴らの事だったり、そいつらに何か言われた事だったり。
圧倒よりも共感が最大の武器であったポップパンクにおいて、スクールアンセムはリスナーにとっても至極身近なメッセージだったのだ。
歌詞もメロディーもサウンドも、そしてヴィジュアルも。
彼らボウリング・フォー・スープはその達人だった。
超アメリカンなビッグな4人組からポップなメロディーに力点を置いたメロディックなサウンドが発せられるのが既にテンションが上がるユースポップパンクの様式美を醸し出しているし、おちゃらけてアイコニックに振る舞うバンドのフォルムと、気取らない丁寧で真っ直ぐなサウンドメイキングは、チャラさはなく嫌らしくは映らない。
常におふざけを狙う少年的なイタズラ心があって、本気でヤバいアウトロー的な悪さではなく、あくまでもファニーにユーモアを持ったやり方でふざける。
キラキラして潔いくらい振り切ったポップネス、あざといくらいのちょっとユーモア感じる甘いコーラスのハーモニーで、甘酸っぱいエッセンスはどこを切っても滲み出る。
ことの外、丁寧にメリハリ深く響かせるシンプルなギターサウンドのエッジ感も相まって、メロディアスなフレーズがバランス良く交差させられ、ユースらしい軽やかな躍動感と爽快感が沸く。
そこに誰もが思う日常への摩擦を茶化しながらも芯を付くメッセージで載せる。
部活のエースでもクラスの人気者でも不良でもないけど、それでも普通は嫌なんだ、と誰の心にも宿る大多数のマイノリティーを本質的に貫くメッセージ性は極めて自然に僕らに馴染むのだ。
憂いだ気持ちを覆い尽くす様な輝きに満ちたメロディーはいつだってノリノリで、退屈な日常にロマンティックな色を加える魔法、というのも大げさではないかもしれない。
20年近く経った今でも、変わらぬサウンドで、ギターの身体は大きくなり続けている。ボーカルも追いつきそうだ。
Pop punkの域を少しだけはみ出しポップソングとして彼ら自体ジャンルとしてアイコン化されたのも、定番曲としてしっかり根付いた曲の力とその描写力、ブームやトレンドを超えた普遍のテーマを真正面から扱ってネガポジ変換し、時代を越えてでも僕の様なダメだった奴が思い出して聴いているのもあるんだろうと、おじさんになった今そう思うのだ。
ソングレビュー
1.Highschool Never Ends
まずは冒頭も書いたけどこの曲から。
ユースアンセムらしいリズムの良いメロディアスで大ぶりのアップビート。
湿り気ゼロのカラッとしたサウンドにミュージカルばりにキュート&エッジな声が響く。
ハイスクールさえ終わればクソつまんない毎日からも脱出できると思っていたけど、卒業しても鬱陶しい事ばっかなんだ。
煌めくポップネスに乗せて、ネガティブ&ユーモラスに毒づいて、笑い飛ばしてやる。これを僕らの歌として持っておくのが、クソつまんない毎日を乗り越える秘訣だ。
2.1985(SR-71 Cover)
Bowling For Soupの中でも一番のヒットソングとなり時代に残るポップソングにもなった一番のアンセム。
夕焼けみたいに切なくも美しく暖かく響くメロディックでキャッチーなポップサウンドに、ジーンとくるような感覚が何よりも嬉しくて、いつまでも聴いていたい心地よさはずば抜けて良い。
歌詞の意味を知ればもう涙が止まらない。今になって感情移入が止まらない。
それを極めてフラットに哀愁に満ちた声で淡々と歌うジャレットの声に、感嘆せざるを得ない名曲。
3.The Bitch Song
彼ら初のヒットソングでメジャーデビューのきっかけになった曲。
ポップパンクらしいシンプルでキャッチーな爽快サウンド。
美しいコーラスに彩られるサビもまた切なく染みる。
僕への態度がキツくても、そばにいてほしい。
そんな切ない男心をなるだけ穏やかに歌う、ナードさは共感せざるを得ない。
4.Allmost
ギターメロディーが美しくキレるパワーバラッドソング。
ドライヴィンなギターリフに乗せたキラキラしたメロディーのラブソング。
そこにも、あーすればよかったなって想いが何度もリフレインされる彼ららしいカラッとした後悔の仕方が、何とも胸を打つ。
もう少しで色んな事が起こりそうで起こらなかった。それは全部君に恋した事がきっかけだった。
憧れに届かない想いを、どこかドライに馳せ、心を落ち着けようとする、何度も僕らが試した想いの飲み込み方だ。
5.Girl All The Bad Guys Want
どストレートなタイトルのテーマが最高なアンセム。
フックの効いたグライムなギターが全面に出てパワーを感じるメロディックロックサウンド。
ねたみと恨みと欲望の高鳴りに合わせて音もパワーを増していく構成に引き入れられる。
ラップメタルを聴いて筋骨隆々の悪そうな奴らを向いてる天使の様な女の子、結局そうなんだよなって歌。
ポップパンクのいい感じのカッコよくなさを卑下しながら等身大な姿を見るし、精一杯’彼女は僕が最高の男だって知らないのさ’って言うあたりが良い。
コレを理解できない男とは一生、友達にはなれない。
6.Punk Rock 101
スクールパンクの雛形とも言えるようなストレートでまじりっけ無いポップパンク。
漲るポップネスがキラキラと、爽快に速度を増していく。
パンクロッカーになるための訓練というコメディータッチのPVがまた良い。
パンクキッズを風刺した様な内容はフフッと思わず口角が上がる。
7.Circle(Edie Brickell & New Bohemians Cover)
1988年のEdie Brickell & New Bohemiansというアーティストの曲のカバー。
ポップパンクバンドのこういうメロウでナチュラルなアコースティックは心を打たれるものがあるのだ。
どのPVでもバカやってるジャレットの真摯な姿、鋭く刺さる変わらぬざらついたエッジとそれでも優しい包容力で純粋な歌の力で心を打つ。
PVには日本での光景もあったりして、ちょっと心温まる。
8.Stacy's Mam(Fountains Of Wayne Cover)
世界に響いたパワーポップバンド、ファウンテンズ・オブ・ウェインのキラーチューンのカバー。
友達のステイシーのお母さんが色っぽすぎるぜという、思えばどこまでもBFSらしい煩悩溢れる内容のキラーパワーポップソングは、どこまでも丁寧なパーフェクトカバー。
FOWのこの曲は歌いたくなるよねってウキウキで無邪気に一緒に楽しませてくれる。
音楽と共に振り返る僕らの時代
皆様はどうやって高校時代を振り返りますか?
こうやってぼくの場合は高校時代を振り返る。思い出の中のサウンドトラックは自由なのだ。
いつか僕らが気づいていた真理を思い出させてくれるスクールアンセム。
今彼らを聴いているだけでも、意外と悪くなかった時代だったなと思えてしまう。
それではまた別の記事で。