2016年 個人的なベストアルバム ウィーザーのホワイトアルバムに想いを馳せる
今年ももう2週間が過ぎようとしている。
今年はそこまで寒くないな、と思っていたけど本気を出しつつある冬に凍えつつ、まだまだ本気を出せそうな冬の前に戦々恐々としていつつも、もう寒さに飽きてきた頃だ。
そんな日に、夏のアルバムのレビューになる。
Weezerの"White album"。
これが僕にとっての2016年ベストアルバムだった。
思いのほか遅くなってしまったが、今レビューを書いていきたい。
聴き倒すアルバムが多かった2016年の中、1番聴いて最も耳に馴染んだアルバムだった。
そんなWeezerの"White album"に想いを馳せるレビュー。
Weezer "White album"
Weezerのオリジナルアルバムとしては10作目のこのアルバムは2016年4月1日にリリースされた。
4枚目となるセルフタイトルアルバム(1stのブルー、3rdのグリーン、6thのレッド)で、真っ白なカリフォルニアのビーチに変わらぬ4人が並ぶ。
2016年グラミー賞の最優秀ロックアルバムにもノミネートされた年を代表するアルバムとなったホワイトアルバム。
あのビーチボーイズの’ペットサウンズ’にも通ずるサーフポップネスが大きな評価につながった意欲作だった。
スコット&リバースの活動などで、頻繁に日本のメディアにも顔を出していたリバースの元気そうな表情にWeezerの活動も期待できていた近年。
前作2014年の'Everything Will Be Alright In The End'はウィーザーが今再びロックという音楽を再解釈した、ロックバンド・ウィーザーとしての現在を知らしめた名盤となった。
その中のウィーザーとしての新作は、アメリカでは今こそ原点を、あのころのウィーザーを。ブルーアルバムとピンカートンの喜びを。という機運が高まっていた様で。
www.footballsoundtrack.com
彼らは、ゾンビのように無理やり甦らせるのではなく、シーンを背負って立ってきた存在として、ネクストレベルを見せるという挑戦だった。
それでもそこに至るまでの過程が実にウィーザーらしくて、そんな難しいことは考える前に幸せな気持ちになるのだ。
ウィーザーフリークの若手のプロデューサーを起用し、熱心にブルーアルバムとピンカートンの良さを説かれ今こそ復活を!と圧がかかる。
前作の勢いもありバンドの状態はいい。
枯渇から来る苦し紛れの原点回帰でなく、機運が熟しつつ、いつでも行けるけど少し恥ずかしかったのだと思うのだ。その中での若手ファンでもあるパートナーからの後押しで、行動に移す事が出来た。
少しやってみたかったのだけどちょっと恥ずかしい、でもみんながそんなに言うならやってみようかな、そんなウィーザーらしい理由だったのだと思うと勝手に推測してしまった。
テーマをカリフォルニアのビーチに置いて、そこで確かなウィーザーを奏でる。
爽やかな陽光と通り抜ける海風、カモメの鳴き声。
数々のインスピレーションを受けて美味しい曲盛りだくさんのアルバムを作って見せた。
ヘンテコな人がホントにビーチには多いんだと語るリバース。
サーフアルバムってそこじゃねぇけど、それでこそリバースだし、臆面のないポップネスとホロリとくる哀愁はさすがだった。
やってくれたという嬉し懐かしさが何重のも厚みで襲ってくる。そして驚くほど軽快に。
ブルー、ピンカートンはやっぱりすごい。でもこれは相当凄いぞ。
新しいウィーザーに喜びつつも、どこかに喪失感すら感じさせてきた側面もあった偉大な過去作ブルーアルバムとピンカートン。
その過去の香りを十分にふりまき、ウィーザーの原風景に真っ白に色付けした眩いまでの今を見せてくれる。
眩しさにこらえて目を凝らして良く見ると、立っているのは変わらぬ四人なのだから、ますます嬉しくなるのだ。
それでは全曲レビューに入ろうと思います。全部で10曲、聴きながら是非ご覧ください。
ソングレビュー
1.California kids
Weezer - California Kids
カモメの鳴き声の様なドリーミーで暖かい幕開けに、やってくれた!と頷きながら口ずさみたくなる。
何度も聴いたザクザクのギターに、リバースが辿々しく歌い出す。
冒頭そのたった何秒かで、優しい郷愁感に胸が一杯になる。
全編通してキラキラしたサウンドでも、切れ味というかソリッドな部分は魅せるのはさすがだ。
’大丈夫さ カリフォルニアキッズが助けてくれる’
根拠はなくても前を向けそうなポジティブなメッセージにホッとするスタートだ。
2.Wind In Our Sail
カリフォルニアキッズを引き受けて始まる跳ねる様なピアノの音が印象的なサーフポップナンバー。
瑞々しさに乗る晴れやかで艶やかなリバースの声。
自由なギターの鮮やかさと反面、感傷的な風を感じさせる。
晴れやかさだけで終わらないのがウィーザーらしい。
それが見事に混ざり合う丁寧さが今のウィーザーの証だ。ホワイトアルバムらしいのかもしれない。
歌詞に迸る夏の光景が眩しい。
間違う事が必要だったというメッセージに深さを感じるのだ。
3.Thank God For Girls
4.(Girl We Got A) Good Thing
キュートでロマンチックなパワーポップ。
甘いリバースの声に躍動感を加える豪快なギターカットに弾けるポップネスが眩しく優しい。
サンクゴッド~の次の曲とは思えない突拍子のなさもウィーザーのアルバムを楽しむポイント。
僕らはうまく行くというメッセージも、どこか寂しく聞こえさせるのもリバースの味だ。
5.Do You Wanna Get High?
Weezer - Do You Wanna Get High?
奇妙なPV。
センチメンタルで苛烈なグランジポップバラード。
厚みのあるギターと足元から襲いかかる低い重いメロディーのグラつく感じが気持ちいい。
シンセな音とリバースのボーカルとコーラスで彩りが加わる、それに付随してギターも表情を変える極彩色的サイケさも魅力。
アルバム内でも至高のギターソロは是非聴いてみてほしい。
6.King Of The World
Weezer - King Of The World
Weezerのロゴの後、青→緑→赤→白で変わる背景に少しニヤッくるPV
。ヘンテコな始まりから高らかに鳴るギターに沸騰するセンチメタルパワーポップバラッド。
うねりながらまっすぐにこっちに向かってくるサウンドが美しさと迫力を持つ。
パワーはあってもバウンドする様な軽快さを失わないバンドサウンドとメロディーの強固なつながりがあるのだ。
日本人の妻へ向けたラブソング。’もし王なら女性は君を選ぶ’なんていいじゃないか。
7.Summer Elaine And Drunk Dori
ハピネス満載の口笛で始まる軽快なポップナンバー。
ウィーザー馴染みのパワーポップサウンドに泣きの入ったグルーヴが満載。
ちょっとおかしな唯一無二のウィーザーらしい展開がいい。
コーラスで哀愁に拍車かかり、キュートなサビも心が弾む。
8.L.A. Girlz
間髪入れず反響音の中、それを霧散させる眩いギターの音塊。
耳に響きやすいフックを効かせたサウンドが渦巻きながら、昼下がりから夕暮れの切なさを感じさせる。
エモーショナルにシャウト気味のリバースがどんどん加熱していくのもいい。
PVの大きい女の人は誰なんだろう。
9.Jacked Up
Jacked Up
- ウィーザー
- オルタナティブ
- ¥250
- provided courtesy of iTunes
夜の顔をみせるアダルトなロックナンバー。
濃密な憂いを感じさせるダークなアイコニックさがある。
ある意味夜の不気味なビーチと考えると不思議と納得がいく雰囲気。
暗い雰囲気の中でも、優しげな感触の音作りが秀逸。
10.Endless Bummer
ラストソングは’終わらないがっかり’。
何ともウィーザーらしいけど、朝焼けのビーチっぽいゆったりとしたサーフな立ち上がりに、ビーチのコンセプトをなぞった満足感みたいなものもある。
おっとりしたグルーヴに満ちたボーカルとコーラスのアコースティックな前半から、中バンドサウンドも加わったハードなロックギターが鳴る後半。
ナイーブでロックという唯一無二の彼らのスタイルをなぞった締めくくりとなった。