僕らのWeezerの不思議な最高傑作が届いた。
2週間連続の台風により、様々なニュースが吹き飛ばされた様に、個人的な感触では10月の超絶怒涛のリリースラッシュに吹き飛ばされそうになったウィーザーの新アルバム。
でもやっぱりウィーザーは一番好きだし、フーファイやハイスタやリアム・ギャラガーの名前の中に彼らを見つけた時は、死ぬほど飲み食いした後、帰り家の近くのコンビニで同じく死ぬほど美味そうなアイスを見つけたように、全くもって別腹な幸福感が訪れる。
そういう不思議なポジショニングを取り続けるバンド、ウィーザーの新作は不思議な世界の最高傑作だった。
本日はWeezer ”Pacific Daydream”に想いを馳せる。
前回の記事はコチラ❕
”Pacific Daydream”
amazon
iTunes
前作10作目となる4回目のセルフタイトルアルバム、通称"ホワイト・アルバム"から約1年半。
このペースも異色の速さだし、個人的に2016年ベストアルバムだった前作の感触とサマソニ2016で見た感涙のステージに、余韻がまだまだ続いている中だったので、唐突な印象が抜けきらなかった。
今年の3月くらいには、先行となるリードトラック”Feels Like Summer"が発表されて、最初は唖然とした。
Weezer - Feels Like Summer (Official Video)
モダンテイストをこれでもかと盛り込んだメロディーは、PVのイメージよろしくのデジタルで反響的である。
聴き進めると同時に、ウィーザーらしいキャッチーな瞬間も出てくるが、可能な限りモダンに溶かした彼らのポップネスは、開放感ではなく霧雨の様に肌を覆う不思議なグルーヴに包まれている。
過去、見たことがないウィーザーを何度も感じ、それでも確かなリバースの声に、見たこともないウィーザーが新しいモノとして驚くほど馴染んでいく感覚も同時にあるのだ。
不思議。
タイトルの”Pacific Daydream”=太平洋の白昼夢は今作のテーマになっている。
中国の思想家、荘子による説話「胡蝶の夢」にインスピレーションを得たのだという。
「胡蝶の夢」は、うつらうつらと蝶々になってひらひらと飛んでいる夢を見たが、目が覚めた時、自分が蝶々になった夢なのか、それとも今が蝶々の自分が見ている夢なのかわからなくなった事を説き、形の区別があるものでも主体の意識からしたらわからないものだと言い、最終的には万物は変化しても本質は変わらないという思想にたどり着く。
その結論までを描いているかはわからないが、おそらく夢か現実がの境界がわからなくなるような、ドリーミーなポップ・ロックがテーマとしてあるんだろうと想う。
明晰夢の様に、意識をもった夢の世界の様な、この世とは少し違う世界観。
そこでロックをポップを鳴らすとこう聞こえるのかもしれない。
カリフォルニアの海の次は、中国の古書という、それこそバリアフリーな突拍子もない発想は、なんともリバースらしい。
ソングレビュー
少し夢想のテーマだけに、音や展開も曖昧で難解なものになりがちだが、そこに今作の凄さもあった。
泣き虫ロックをフラフラでもまっすぐ鳴らしてきたウィーザーの圧倒的な手練感。
一人一人が卓越したミュージシャンとして、世界観の雰囲気を助長させ、時には前面にさり気なくいつのまにか出てくる聞き慣れた演奏。
鮮やかに演じきるだけでない、ちょっとのエッジで莫大な存在感を香らせる、そういう至難の業を軽々とやっている凄腕職人感を感じるのだ。
その真ん中に堂々と、そしてポツンといる様なリバースの声。
ロックシンガーとしてのオリジナリティと技量は今更疑いようがないが、そことは違う次元のモダン・ポップシンガーとしての彼の存在感は、異様な程のパワーがあった。
リバースならこの位やってのけるだろうって期待をあっさりと凌駕する抜群の声質。
澄んでいながら身に纏わる様で、優しいようで突き刺さってくる。
口笛の様なポップネスを、心優しく捻くれたロックバンドが巧みに奏でる。
単なる閃きによって生まれた音でなく、思慮深さすら感じる甘美な芸術作品的な趣も溢れるパシフィックデイドリーム。
是非聴いてみてほしい。
1.Mexican Fender
2.Beach Boys
3.Feels Like Summer
Weezer - Feels Like Summer (Roses N’ Weezer Version)
4.Happy Hour
5.Weekend Woman
6.QB Blitz
7.Sweet Mary
8.Get Right
9.La Mancha Screwjob
10.Any Friend Of Diane's
Weezer - Any Friend of Diane's
秋らしい不可思議な最高傑作
唐突に訪れた寒さに対応できない様に、急に現れたこのアルバムは今までにない格好いいウィーザーを見せてくれた。
聴き進めて馴染んでいったときが今から楽しみなような新しい音。
なんと、実は次のアルバムもほぼ出来ているらしい。
その名も’ブラックアルバム’。
12作目という大ベテランでこのペース。
いよいよ訳がわからない奇人レジェンドの粋にいるウィーザーは、これからも楽しませてくれそうである。
それではまた別の記事で。