Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

2018年W杯のモダンファンタジスタ10人

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W杯の見方のススメ モダンフットボールにファンタジスタは輝けるのか

皆様は初めてW杯を見たのはいつでしょうか?
98年フランスW杯が僕のW杯デビューであった。

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1994年アメリカW杯アジア予選の最終戦のロスタイムで失点し出場を逃したドーハの悲劇を経験し、2002年の自国開催の前に是が非でもW杯に出場したいと、死闘の連続だったアジア予選をドラマチックに勝ち抜け悲願の出場を果たした日本代表はあっさりと3連敗で姿を消した。
小学5年生の僕にとってはこの頃なんて日本代表とJリーグがサッカー観戦の全てで、それなりにショックも受けたが、それ以上に初めて見た世界のプレーヤーのプレーが、あまりにも美しかったのを覚えている。
 
W杯のプレー集のVHSを買い、擦り切れる程見た。
バッジョがビエリに出したパス。
ベルカンプの信じられないトラップ。
大会通して最も上手かったジダンの優雅なプレー。
ストイコビッチのドンピシャのFK。
当時のファンタジスタと呼ばれた人達のプレーは、サッカー小僧をもう3歩くらいサッカーへのめり込ませるのには十分過ぎる程輝いていた。
それから僕はファンタジスタを目指してそこから20年以上生きてきているのだ。
そして今モダンサッカーにおいて、ファンタジスタは過去になった。
激しい連動性と連続性で走り続け、より高度なシステムでアスリート的になったフットボール。
最早決定的な仕事をするにはフィジカル的な要素が不可欠になってしまったのか。
 
2018年という時代を反映する最高峰の舞台W杯。
そこにファンタジスタは立っていないのか。
意地でも探してやろうと思った。
20年前の輝きが今でも焼き付いている僕にとって、ロシアの地でその閃きを発揮する選手を少しでも探したいのだ。
今回はそんな現代に姿を変えつつも、閃きと芸術性溢れる10人をピックアップしてみた。
少しでも、ほんの少しでもファンタジスタが気になっている人がいれば読んでみてほしいです。
それでは行きます。
 
 

世相を反映するW杯 ファンタジスタとはロマンである

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2018年6月に開幕するロシアW杯。
4年に一度の世界最高を決める祭典は、ただの世界大会という領域を超えて存在してきた。
国同士の威信・プレーヤーの栄光ももちろん、その後4年間の流行を生み出す様なフットボールワールドにおいての巨大な品評会の場でもあるのだ。
フットボールカルチャーを反映し、プレーヤーもチーム戦術もモダンフットボールの最先端の流行が昇華され、この大会で栄光を勝ち取ったり大きなインパクトを残せばそれが次のフットボールカルチャーを産む。
要は、'今'世界で勝てるフットボールはこれだ、と決定付ける場でもあり、その後のフットボールの流れに与える影響力は途轍もないのである。
強く速い連続性のあるフットボール。可変式システムと進化したゾーンディフェンス。
その中で、走らず・守らず・計算のしにくい純粋なファンタジスタという種類のプレーヤーは確実に、生き辛くなっているのは確かだ。
 
 
現代サッカーにおいてのトッププレーヤーを見るとフィジカル的な一芸に秀でていて、アスリート的な速さ強さの中で、強度を落とさずに技術を発揮できる事がキーファクターになっている。
わかっていても止められない選手だ。わかった時にはもう遅い、という類のプレーだ。
逆説的に言うと、ファンタジスタは分からないから止められないという選手なのかもしれない。
時代が流れて、分析が進んだフットボールにおいて予想だにしない事は少なくなってきていて、そういう中でトッププレーヤーは進化してきた背景もあるだろうと思う。
フィジカル的なチームの総合力も問われる中、そういう平均値を大幅に下げざるを得ないし、今の高度な守備システムを破るのには強さと速さの方が効率がいいのだ。
 
ここからはロマンの話だ。
プレーヤーのプレースタイルとか、音楽のジャンルとかを考えるとき、より狭義な条件によって線引きをした方が、より芸術性を増すし、ロマンがあると思っている。
ファンタジスタとは何かを考えた時に、当然ただ上手いだけの選手って括りにはならない。
広義的に考えれば、予想を裏切る何か違いを起こせるプレーをできる選手と言える。
ロマンを求めて狭義で考えれば、そこにフィジカルもスピードもなく、ただ圧倒的な技術で予想だにしない閃き・アイディアを、これまた予想だにしないタイミングで発揮できる選手と考えるのが良い
そういう狭義の閃きのプレーは無限であり、実にサッカーの本質に近いプレーであるとも思うのだ。
本当に無限なのかもしれないし、無限に見える、という意味合いもある。
予想だにしない選択を、予想だにしないタイミングで行うからこそ、無限の可能性を感じ深い畏怖とともに、心奪われる芸術性を帯びるのだと思うのだ。
 

W杯で時間を止められる 現代のファンタジスタ10人

超スピードのモダンフットボールの中でも、旨さを凝縮し、時間も音も止まった様に感じる芸術的な空間。
ボールを持ったらそんな瞬間が想像できる様な選手は、まだまだモダンフットボールにもいるはずだ。
今のフットボールを理解しつつ、その理を破れる閃きを実現できる極上の選手たち。
ファンタジスタもモダニズムを帯び十分に時計を進めていると、この10人のプレーを見れば感じられるはずだ。
そんな私的な10人をご紹介。
 

1.メスト・エジル ドイツ代表


Mesut Özil - The Silent Wizard ● Real Madrid 2010-2013 ● HD

ドイツ代表の新皇帝エジルは今回が3回目のW杯となる。

今、最もジダンに近いプレーをするファンタジスタのモダニズムの体現者と言えるかもしれない。

同じレフティーで、レアル在籍歴というのも相まって、グティやレドンドと言った選手とも重なる優雅で独特なリズムも彼の長所だ。

大柄だが、とにかくしなやかな動きと、左利きらしい彼にしか触れない場所に置き続けられるボールタッチは、特別なトリッキーな動作無くとも創造性を感じられる究極のシンプルさ、だからこそ美しい。

今最も10番らしいエレガントなプレーヤーだ。

 

2.エベル・バネガ アルゼンチン代表


Lo mejor de Éver Banega ● The best of Éver Banega (Skills & Goals)

タレント溢れるアルゼンチン代表の中でも独創的な技術を発揮できるバネガも注目したい。

バレンシアでの鮮烈な活躍から、クラブを転々とする辺りもファンタジスタらしい。

インテルでの経験も経て、再びスペインの地で攻撃のタクトを奮っている。

南米的な中盤のファンタジスタでインサイドハーフの2.5列目の位置を好み、リスクも多い中盤の底であっさりと高度な技術を連発できる抜群のスキルは見るものも楽しませる。

驚異的な技術を持っていれば、中盤の底から創造性を発揮できるというモダンなファンタジスタの可能性を見出だせる、最も成功したアップデート例かもしれない。

 

3.クリスティアン・エリクセン デンマーク代表


This is Why Eriksen is World-Class

歴史的にアヴァンギャルドな名手の多い北欧の現代最高傑作、デンマーク代表のクリスティアン・エリクセン。

アヤックス出身で、ファン・デル・ファールトやスナイデルとも比較され育ったトップ下のクリエティブなプレーヤーで、現所属のトットナムでもケインだアリだとFWが注目されるが実は最も欠かせないプレーヤーになっている。

視野とプレービジョンが広くシンプルな展開で急所を付ける、少ないタッチで魅せるファンタジスタで、1タッチ2タッチでも、ソコに出されるとヤバい!という場所に最も良いタイミングでパスを置ける。

こういう名手の存在で常に北欧は怖い存在として、W杯を面白くしてきたのだ。

 

4.エミル・フォルスベリ スウェーデン代表


EMIL FORSBERG | Leipzig | Magic Skills, Goals, Assists 2017/2018 (HD)

 

イブラヒモビッチの後にスウェーデン代表の10番を背負うエミル・フォルスベリ。

ブンデスリーガで絶対王者バイエルンを一時凌駕したライプツィヒ旋風の中心となった10番は、ゴールも稼ぐがアシストの多いクラシカルなタイプの中盤。

往年のファンも唸る様な、トップ下として理想のプレーヤーで、チームで最もボールを触り最も多くのチャンスが彼から生まれる。

中央だけでなくピッチを幅広く使い、数多くのギャップに顔を出しチャンスを作れるアイディアの幅も豊富だ。

 

5.イスコ スペイン代表


イスコさん マジ神プレー集【銀河系のファンタジスタ】ISCO Greatest Skills.

世界最高峰の技術がしのぎを削るスペイン代表においても、イスコは異彩を放つ。

レアル・マドリーでもスペイン代表でも今後10年イスコの時代になり得る様なタレント性を持ったプレーは覇気に溢れてる。

股抜きもエラシコもルーレットもお手の物のマジカルなボールタッチ技術はもちろん、ワールドクラスのスピードにも乗れば3-4人のDFを剥がして独力で持ち込める、アタッカー型のファンタジスタの最高峰。

イニエスタやジダンにも比較されるが、天衣無縫のテクニックと突破の推進力はロナウジーニョにも通ずる破格の才能を備えている。

 

6.ネマニャ・マティッチ セルビア代表


Nemanja Matic v Chelsea | The Numbers Game | Manchester United

 

大柄でパワフルな選手も多いが、飛び抜けたテクニシャンも多い東欧選手。

そんな2つの要素を兼ね備えたのがセルビア代表のマティッチだ。

190cmを超える体格と驚異的なリーチの長さ、それに頼りきりではなく相乗的に活かせる抜群の左足のテクニック。

中盤でのボールキープは安定感ある上に、唸らせる上手さもある。

ボランチながら中村俊輔の様なキックフェイントの優雅さに魅せられた。

 

7.ジャック・ウィルシャー イングランド代表


Jack Wilshere - Skills, Goals & Assists

 

17才でアーセナルでデビューし誰もが恋に落ちたジャック・ウィルシャーのプレー。

度重なる怪我で終わった選手の様に思われていたが、W杯イヤーに入り復調の兆しを魅せている。

トップフォームとそうじゃない時のプレーの落差が顕著で、数多くの酷評と絶賛を週替りで受けている辺りはまさにファンタジスタ。

小柄ながらパワーもあり、何よりその左足のドリブルのイマジネーションはメッシを凌駕しているレベルにある世界最高峰のそれだ。

展開力やプレービジョンに優れたボランチというよりは、勇敢に3列目から守備ブロックをこじ開けていく突破が最大の長所であり、見る者を魅了する見せ場。

 

8.ルカ・モドリッチ クロアチア代表


When Luka Modric Used Magic in Football | Best Skills Ever

 

クロアチア史上最高の選手になりつつ有り、レアルマドリードでも圧巻のパフォーマンスでモドリッチの時代というべき時代を作り上げている完璧に近いMF。

サッカーヴィジョンがとにかく高次元で、目の前のDFもDFブロックも全てを手玉に取れる俯瞰する視野を持っている。

トリッキーで難度の高いスキルを、自陣のペナルティエリア近辺だろうと方法論として組み込める圧倒的な技術、どこでいつ彼を見ていようと楽しめる。

糸を引く様なアウトサイドのミドルパスはファンタジスタにしか描けない美しい放物線だ。

 

9.ベルナウド・シウバ ポルトガル代表


BERNARDO SILVA - Welcome to Man City - Ultimate Skills, Passes, Goals & Assists - 2017 (HD)

テクニシャンウィング大国、ポルトガル代表の期待の若手ウィングのベルナウド・シウバ。

左利きでディマリアの様なスピーディーで滑らかな動きから、急にゆったりと時間を作れるリズム感は幻惑的で、突破もチャンスメイクも自在だ。

ディバラとかアザールにも似たハイブリットなファンタジスタで、アタッカーとしても存分にダメージを与えられる選手。

アウトサイドのクロスの精度は異常に高い。

 

10.ジョバニ・ドス・サントス メキシコ代表


Giovani Dos Santos Goals And Skills 2015/16

 

最後はメキシコ代表のファンタジスタ、ジョバニ・ドス・サントス。

バルセロナの超新星として名を馳せたのはもう10年以上前だが、まだ20代。

代表の支柱としてベテランの様な風格を見せる。

数々のクラブを渡り歩き、現在はメジャーリーグサッカーの地でスペシャルな存在になっている。

どうしても必要な1点を、チームの誰よりも鮮やかに決められる。

そんな絶滅危惧種の選手だ。

 

ファンタジスタを追うW杯

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ご覧いただきありがとうございました!

きっとW杯を端から端まですべて見る事は出来ない。

だからこそテーマで絞って楽しむのも乙なものなのだ。

この10人。

きっと覚えておけば、心躍るW杯になるはずだ。

 

それではまた別の記事で。