忘れ難いスウェディッシュパンクバンド Neverstoreに想いを馳せて 2019.08リライト
東京には声に出して言いたいカッコイイ駅名が多い。
「雪が谷大塚」とか「自由が丘」とか「清澄白河」とか。
何かのランキングで見た1位は「天王洲アイル」だった。
京王線ユーザーだった僕の心のランキング断トツトップは
「聖蹟桜ヶ丘」だ。
東京都多摩市に位置する京王線の駅で、天皇家ゆかりの地があったことで聖蹟と言う凄く強烈なインパクトの名前がついている。
これも心のランキングで断トツトップのジブリ映画「耳をすませば」のモデルの地となった事でも有名だ。
18歳~20歳くらいまでこっちの方に来る用事が定期的にあった事もあり、目的地を通り過ぎて良く立ち寄っては時間を潰していた。耳をすませば好きだし。
名前はカッコイイし、コンパクトな街でちょっと用事の前の時間にフラフラするにはぴったりで、何よりタワレコがあって過ごしやすかった。
僕のこの街1番の想い出は、そのタワレコの試聴機で出会ったNeverstoreというバンドだ。
2007年デビューした音楽大国スウェーデン発3人組ポップパンクバンド・ネヴァーストア。
飽和気味であったポップパンクシーンで、間違いなくモダンであり圧倒的に蒼いエネルギー、見た目もスタイリッシュかつポップパンクの肝を抑えたパワーメロディーは、オールドなポップパンクファンも’おっ’と腰を浮かす、ストライクゾーンのド真ん中を居抜いた途轍もない原石感はえげつなかった。
「凄いバンドを俺は見つけてしまった」というありがちな衝撃的な出会いから10年近く経ちつつ、今やほぼ活動はしていなくとも未だにフェイバリットなバンドの一つとして植え付けられている。
大好きな街で出会った個人的に大好きなバンド。
「居たねそんなバンド」くらいのフレーバーかもしれないが、僕は忘れないし懐かしくもない位バリバリで聴いてるし、耳をすませば僕の心のどこかに引っかかってるアツい存在感のバンドなのだ。
Neverstoreに想いを馳せて。
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初期衝動の衝撃力 'Stay Forever'
聖蹟桜ヶ丘のタワレコ、割りと良い位置の試聴機のコーナーに彼らのデビューアルバム'Sevenhundred Sundays'が入っていて、その一曲目がこの'Stay Forever'だった。
ナニコレ超かっこいい。
導火線に火を着けるような攻撃的でアグレッシブなベースラインに駆け抜けるメロディックなギター、ギラギラしてるけど暑苦しくないフックの効いた爽快感。
わかりやすいほどGREEN DAYビリー・ジョー・アームストロング直系のセクシーでエッジーなボーカル。
そしてわずかに引っかかるほどの蒼く暗い北欧らしい感情の轟き。
バンドのオープニングトラックとして途轍もなく起爆的で最高のクオリティーだったし、彼らも僕らと同じベクトルで憧れていたとわかるポップ/メロディックなパンクバンドと地続きのサウンドは抜群の聞き馴染みと親しみを産んで、数秒でファイバリットなバンドにバキッと確定する完璧な出会い。
聖蹟とも相まってなんか神聖な想い出として心に深く残ってしまっている。
時が経っても聴いた瞬間ヘッドホンしながら目を見開いて驚いてる聖蹟桜ヶ丘の20歳の僕を俯瞰で思い出せる、そういう光景毎切り取られたアンセム'Stay Foever'は個人的には一つの文句もない、至高のメロディックパンクナンバーであるのだ。
当時こそやっと見つけた宝石の様に輝く新しいバンドだったからカラッカラになるまで聴いたけど、それでも今想いを馳せても想い出深いのは、ポップパンクとしての着火性はもちろん、彼らのルーツであるスウェディッシュパンクのタフな骨太さ、蒼く深い影の色合いの自然な艷やかさが、いいバランスでオルタナティヴな聴き心地となって爆発的なインパクトを下地にして今もなお響くからである。
スウェーデン出身パンクバンド ネヴァーストア
そもそもスウェーデンという国は音楽処である。
国が音楽を志す者にジャンル分け隔てなく支援し、安価でスタジオや機器を借りれるなどの制度がある。
英語にも馴染み深く世界のメインストリームの音楽も消化しやすいし、先鋭的な物を好む国民性もあり、一度メインストリームの音楽を噛み締めた後スウェディッシュ・ポップ、スウェディッシュ・メタルも一つのジャンルとして確立した歴史もある。
それはパンクシーンも同じで、ストリートカルチャーは北欧でも根強く、No Fun At AllやMillencolinやRandyなど世界のスケートシーンでもヘヴィに流される'本物感'溢れるバンドを多数輩出してるのだ。
2000年、スウェーデンのストックホルムで彼らが高校の時に結成されたネヴァーストアも、その流れを汲むバンドなのだ。
Green DayやNOFXやBad Religion、Weezerの90sのパンク・オルタナシーンを聴いて育った生粋のパンクキッズであり、スウェディッシュパンク勢も身近に感じるホームの北欧感。
更にはSUM41やGood CharlotteやNew Found Gloryなど当時世界のメインストリームで鳴っていたポップパンクにも影響も受ける、超ハイブリットな環境。
だからこそ、王道も突き・オルタナティヴであり・モダンであった超新星的な存在だったのかもしれない。
ボーカル/ギターのジェイコブ、ベースのオスカー、ドラムのエリックの3人共実に甘いルックス。
ストリート&モダンな、そこはかとないタレント感を感じる見た目である。
2007年、前述の1stアルバムでデビューし地元スウェーデンでも評価を上げると、当時世界最高クラスの評価を得ていたGood Charlotteの北欧ツアーの前座を射止め、世界のパンクキッズの目に留まりワールドワイドに広まった人気が、聖蹟桜ヶ丘まで届いたという事だ。
その後もSUM41のデリックがアルバムのプロデュースに名乗りを上げるなどシーンで大きく注目されつつ、デビューから3年で3枚のアルバムを出しポップパンクシーンを駆け抜けた。
MTVのベストスウェディッシュアクトを2度受賞し、スウェーデンの顔のロックバンドになった彼らは、2010年に一度休止を挟んだ後も、アルバム制作のために森篭りするなどバンドの前進を進め、ストリートのカルチャーを受け継ぎつつ表現力に磨きをかけたロックバンドとしてスケールを大きくしている。
と言っても、このブログ調べでは2015年に出したシングルが最後の音源になっていて、今はちょっとペースを落としていると行ってもいい。
ポップパンクを超えたロックバンドとしても壮大なサウンドにシフトチェンジした音の良さも好きだが、今でも僕の中ではスウェーデン×聖蹟桜ヶ丘×ポップパンクのハイブリットな存在として今活動してなくても心の記憶の箱に仕舞われてる大切なバンドなのだ。
彼らの音楽 ソングレビュー10
あまりにも〇〇っぽいとか言うと、彼らのアイデンティティーが無いように聞こえてしまうから嫌なんだが、それでもGREEN DAYに染められた僕らOVER30ポップパンク直撃世代にとっては断トツの耳馴染み。
絶対シュガーカルトも好きだろ、サムっぽさもブリンクっぽさも感じる香り。
ポップパンクファンには、あまりにも重要なツボを抑えたメロディックなサウンドと性急なリズムが大きなベースになっている事が、どのトラックからもわかる。
3ピースらしくシンプルに、アクセントの強い音をソリッドに鳴らせるバンドサウンドに、ボーカルのジェイコブはロックシンガーとして稀有な歌声を持っているし、セクシーでスモーキーな艶やかさをもってポップパンクを彩れる。
何かドキドキするようなスリルとアグレッシブさを前面に出したメロディックなサウンドは若くありつつタフだった。
おおげさに言えば、かもしれないが、Green Day・Offspringから続く90年代~00年代の魂まで千切れそうなPop Punkの系譜として、全てのポップパンクバンドに影響を受けた世代として、シーンのアンサーバンドとして存在してると捉えても、間違いではないのかもしれない。
それでいて北欧・スウェーデンの香りと、厳しくタフなリアリズムが彼ららしさを醸す重大なエッセンスになっているとも感じるのだ。
思うのは、どんなにハイなメロディーでもピーカンの晴れ晴れしさは感じないどこか常に側にある影。
陽性なエネルギーと背中合わせに、よりドープで潤った神秘性もある陰がコントラストを作り、そのままドライヴしていくサウンドデザインが、美しいメロディーと渦巻くように作用して深い鮮やかさを出している。
行った事がないからきっとだが、僕らの知ってる世界より昼は澄んでいて夜は深いんだろう。そういう感性も彼らのナンバーの聴き応えを唯一な印象にしている一端なのだ。
1.'Stay Forever'
彼らの初期衝動にして最大のアンセム。この必殺技くらった様なパンチ力はなかなか出逢えない。
性急なリズムに刻まれる烈火の如き爽快なリフは、アグレッシブに走り切れるスケートパンク的なスピード感+メロディアスなフレーズのリフレインで強靭な聴き応えがある。
エネルギッシュな暴風感がメロディーとしてまとまる快感、アンニュイなコーラスとボーカルの儚い影が黄金律的なバランスで美しく響くのだ。
ここぞで聴くエネルギッシュなアンセムは劇的にスイッチを入れられる、全ポップパンクバンドの中でも結構有数しかないポップパンクアンセムだと思う。
2.'So Much Of Not Enough'
ストイックに炸裂するタイトなギターのエモーショナルなロックチューン。
ステイ~に続きアンセミックな位置づけで人気の曲は、エモーショナルシーンの哀愁疾走感と彼らがナチュラルにもつ憂いが重なる良的なキラーソング。
ダイナミックなボーカルがクールなサウンドにドラマチックに映える、そういうロマンチックな声の魅せ方も彼ららしさ。
ノイジーでストイック、そしてポップな疾走感の陰陽のバランスが良く、心地よい扇情感は曲全体の美観を崩さない。
3.Racer
ポップでパンクに振り切った、彼らきってのパンキッシュなキラーチューン。
飛び跳ねる様なバウンシーなリフとビート、軽やかに轟くメロディー。
字余り気味のボーカルの節回しも、どこまでもキャッチーでハッピーなリズムで僕らに届く。
ポップでキャッチー、少しセクシーという完璧なフォルムで、親しみやすさNo1のキラーチューンである。
4.'Rejected All Along'
グルーヴィーなベースラインからスピーディーでタフに滑るメロディックパンクナンバー。
王道まっしぐらのストレートな雰囲気に、パンキッシュなエネルギーと甘いロマンチシズムを交差させる眩いキャッチーなデザイン。
バシッと決まるサビの決め手の良さもパーフェクトな収まり。
キャッチーな疾走感は最後の瞬間まで続くビックなナンバーだ。
5.'Nanana'
ポップでロマンティックそしてメロウなミドルチューン。
キラキラしたメロディーが大流星群の様に降り注ぐ壮大さと、ストレートで飾らない素朴さ。
ポップパンクバンドのこういう曲は、どうしてこうも親しみ深いのか。
ライトで繊細、重なってもナチュラルな聞き触りで決して無駄に厚くない音は染み入りやすい。
北欧の夜を想像したくなるようなどこまでも透明に伸びやかな一曲。
6.L.Y.D
タイドなメロウチューンであり、彼らの美しさの面が炸裂するような一曲。
抑え気味のメロディーラインを歌う時点で既に美しいが、それがエモーショナルに弾けても、ブレない芯の力強さも感じて、よくある構成のドラマ性もより深く聞き入らせる。
どこまでも表情豊かでサウンドの高鳴りに併せても、わざとらしくなくナチュラルな聞き心地を実現できる澄んだノスタルジーは劇的に好き。
後にシンガーとして強烈に輝きを放つのもわかるアイコニックな声だ。
7.'Another Sentimental Argument'
おそらく、Green Dayの'Worry Rock'の出だしの歌詞から取ったタイトル。
新たなセンチメンタルな喧嘩、みたいな意味。
グリーンデイはポップ・ロックだったが、こちらはギザギザのマイナーなギターに染められたエモーショナルチューンだ。
ダークでクールな印象のコーラスを振り切るようにパッショナブルなボーカルのジレンマ感が良い感じの崩壊感。
アコースティックverになっている程メロディーは美しくトリッキーな印象もあるけどストレートに音のいい一曲。
8.Count Me Out
キャッチーなポップパンクは彼らの’カッコよさ’が前面に出たソリッドなナンバー。
男臭いセクシーさが濃縮されたパンキッシュさ、こういうの待ってたっていうシンプルな豪速球。
マイナーなサウンドが、タフにソリッドに鳴らされるシンプルでアツいナンバー。
途中の遊び心ある転調がまたかっこいい。プロモが日本の映像でそれも好き。
9.Shallow Beautiful People
3rdアルバムはSUM41のデリックがプロデュースに携わった。そのアルバムのキラートラック。
分厚いベースラインと迸るエモーショナルなロックサウンドは、余計なもの無くガツンと殴られる様にミニマムにメロディアスで、少しセンチメンタル。
メロディックで攻撃的なデリックらしい瞬間も、艶やかな音空間は完璧に彼らのもの。
凄く短いレコーディング期間で撮ったことにも起因するスリル高い衝動的なパワーも上手く内包される良曲だ。
10.'For The Rest Of My Life'
決意のセルフタイトルアルバムのタイトルトラック。
森篭りして制作したアルバムの肝の一曲は、ダイナミックでメロディアスなサウンドが、光と影を入れ替えながら疾走的にドラマティックに響く。
緩急と陰陽がより一層巧みで、暗い部分はダークでも鮮やかに、光の部分は抜群に眩く優しい。
よりストイックながら表情は豊かに、よりスウェーデンらしい壮大なロックバンドに近づいた一曲。
ポップパンクと聖蹟桜ヶ丘とスウェーデンとネヴァーストア
好きなバンドの話は合いそうな、親近感たっぷりの隣人的友達的ヒーロー像がポップパンクには欠かせない。
それがキレのある音楽大国スウェーデン人ってなると、俄然興味が湧くってもんだ。
あの初期衝動から10数年たっても、彼らは絶妙な親近感で付かず離れずずっと聴いてきた。
人間30年以上生きるとお気に入りの何かを持ちたくなるもんだ。
聖蹟桜ヶ丘で初めて聴いたポップパンクバンド、ネヴァーストアはそういう壮大な掛け算の元、僕の心に定着している。
なんなら行ったことないがスウェーデンも好きになりそうだ。
それではまた別の記事で。