いよいよグリーンデイのレボリューションレディオに想いを馳せる
黄金の精神で作り上げられたアルバム
単なるはみ出し者の音楽ではなくなった。
以前も書いたけど、グリーンデイの音楽の凄いところは、日常の軋轢に対して反射的に、そして大量に生み出されてきた、何万回聴いてもエネルギーに満ち溢れた色褪せない音を作るメロディーメーカー的な部分。
バスケットケース、ロングビュー、シー、、、数々の歴史的な必殺のキラーチューンを世に送り出してきた。
さらには、パンク×コンセプトという'アメリカンイディオット'や'21世紀のブレイクダウン'で、世界的なパンククルセイダーとして、表現者としてパンクを昇華したのだ。
世界に火をつけ、その世界で頂点を見たパンクロックバンドとなったグリーンデイの物語は、ロマンティックさに満ちた正しい成功物語だ。
そんな現在進行形レジェンドのベテランになった姿に、期待と共に不安も混じる様な感覚でアルバムを待っていたが、一通り聴いた今の気持ちは、ジーンと心地よい残熱の暖かさが胸の奥底にしまわれて、永遠に続くような晴れやかさが持続している深い高揚感に包まれている。
ポップなパンクの瞬間的な沸騰だけでなく、ナパーム弾の如く次々に押し寄せるロックオペラの爆風だけではないのだ。
もう少し詰めていくと、今作のメインフレーズとなる革命。
その革命の起爆剤としてだけでなく、そこに至るまでのバッググラウンドストーリーを、速やかに同士達に届けるために、音楽人としてネクストレベルを踏む事を彼らは選んだ。
後述する空白期間に、ビリーはクリーンアップされ、マイクはベースを学び直し、トレも自分の技術を見つめ直した。
黄金のトライアングルの黄金の精神による鍛錬に次ぐ鍛錬。
生粋の正当な音楽家として名高い彼らだったけど、初めて訪れた空白の期間も音楽に打ち込む事を選んだのだ。
少年マンガの修行期間みたいなズルい変貌を遂げて彼らは戻ってきたのである。
パンクロックに鍛錬など必要ないのであれば、それはそれでいい。それなら今回のアルバムは至高のロックアルバムだ。
どちらもただの言葉に過ぎない、これは音楽なのだ。
そもそも元来、全くもってキャッチー極まりない音もグリーンデイというキャラクターの演奏があれば、エッジとスリリングさも増し増しで彼らでしか味わえない爽快感があった。
しかし今では、必殺のメロディーメーカーっぷりを残しつつも、タフでダイナミックにビルドアップして、ノイジーさも流麗さもケタ違いのパワーで突き刺してくる。
ドラゴーンボールのスーパーサイヤ人3にみたいな、まだ強くなるの?っていう疑問すら吹き飛ばす圧倒的かっこよさ。
それがレボリューションレディオに感じる凄さの根本にあるのである。
リリースまでのストーリー
今回のリリースに至るまで、知っておきたいストーリーがあるのでそこにも触れる。
唐突さはあったけど、SNS上で音源を小出しに公開し、徐々に明かされていった全容。
僕らに理解する時間をくれたのだ。
先日のハイスタのやり方は確かにパンクだったけど、それとは違う
満を持した漲る自信みたいなものと、僕らにそれをかみ砕かせることによってさらに深いモノになる確信的な手ごたえがあったんだと思う。
個人的には好きな曲も多いんだけど、ビリー自ら混乱していて何の意味もなかったと述べた「ウノ」「ドス」「トレ」の三部作から実はまだ3年しかたっていない。それでも長く感じたし、ファンにとっても辛い期間だった。
占い師に言わせれば大殺界だし、もっと日本的に言えば厄年って言われてもおかしくないくらい陰の出来事が彼らを襲う濃密な3年。
ビリーのドラック中毒によるリハビリ、マイクの奥さんのガン治療、第4のメンバーであるジェイソンのガン。
立て続けに起こった不幸に僕ら日本のファンにとっても心配だった。何せ全てのニュースが届くわけではない。
マイクの奥さんのガンとかはリリース後、初めて知った出来事でもあった。
イライラを隠さずに、ステージ上でギターを壊しまくったビリーに、(2013年のアメリカのポップフェスティバルでの出来事。ポップ畑のノリの悪いファンに苛立ちながら煽りまくるビリー。そんな中、オーロラビジョンに終了まで残り1分の文字が誤作動で表示される。ブチ切れたビリーは演奏をストップし'俺の1分間を見せてやる'と言ってギターでセットを破壊して帰っていった。)
能天気にまだまだパンクだなーくらいにしか思っていなかったが、当人たちはロック・パンクに瀬戸際まで追い詰められていた。
勝手にグリーンデイは大丈夫だと思っていた自分がいるのに気づいた。
いくらグローヴァルとはいえ(グローヴァルだからこそかも)海を挟んだ絶妙な距離感が、無責任なヒーロー像を作り上げていた。
ファンて言うのはそういう事じゃないよな。ごめん、ありがとうビリー。
それほど考えてしまうくらい、ショッキングであり、彼らの心情を慮りたくなるリアルな重みが時差を経て襲ってくる。
本当に戻ってきてくれてありがとう。
何か、背筋を伸ばして真摯に聞いていなかければいけない様な気持ちに少しなる。
しかし、このアルバムはそれにも真正面から答えてくれる。
大きな問題も些細な難癖に思わせる圧倒的なパワーを持ってグリーンデイは帰ってきたのだ。
ディスクレビュー 'Revolution Radio'
Green Day - Bang Bang (Official Music Video)
とはいえ、仮面を付けたままダークにポップに音を鳴らす様なニヒルなパンク像は今までにない彼らの姿だと思う。
日本民謡的なリフで始まる④Say Goodbye。
ずしっとくる重厚さとチャキチャキした軽快さを使い分ける演奏に、コーラスワーク。今のグリーンデイのスケールを感じるドラマチックな展開に圧倒される。
グリーンデイは永遠に