あの頃と今のポップ・パンクを繋ぐ、そして1987年生まれ同い年バンド、オール・タイム・ローに想いを馳せる 2019年9月26日リライト
意地になって嫌いと言い続け、中々認めたくないものってあるのだ。
僕にとっては茄子とかそうなのだ。味よりも色とかが嫌で避けていただけで、多分もう大人になったから食べれるけど、なんか認められず食べないでいる。
周りにいる人でも、そういうモノとか人がある人いるはずだ。無意識の内にレッテル貼ってるのだ人は。
何か認められないポイントが少しあるだけで、遠ざけてる部分があるもの。
アクの強い女性だったり、男にとってのイケメンな有名人とかそうだ。
でもそれを一回認めると、反動でめちゃくちゃ好きになったりする。
僕はイケメンが好き!という事では決してない。
そういうフィルターがかかり、斜に構えて手に取った音楽がめちゃくちゃよかったって話だ。
All Time Lowはめちゃくちゃカッコいいぞ。
アメリカの底力を見せつけられる系イケメンの彼等。
そこで斜に構えるのが男の性である。
ベクトルは全く逆方向だが、可愛い女の子への反射神経のスピードとほぼ一緒で。
1番最初にアーティスト写真を見た時にはアイドル的な売り出しをされるポップパンクバンドだろーなと思って斜め上からCDを手に取り試聴機で聞いた所、直立不動むしろ前のめりに首を振りたくなる曲が流れる。こういう楽しい電流は予想を超えてくる時こそ強烈だ。
スピード感もメロディーも歌心もルックスも、これぞアメリカの総合力である。
オーバー30ポップパンク直撃世代の僕を襲った最強の同い年バンド、本日はAll Time Lowに想いを馳せる。
Spotify Playlist
好きな理由はパーソナルに
何かを好きになる理由とかきっかけはいつも、割かしシンプルなものだ。
斜めに見ざるを得ないくらいイケメンでアイドル的な風貌の彼らを、あっさりと一生聴くフェイバリットに出来たそのキーワードは、圧倒的な親近感とぶち抜けたクオリティーだった。
'Let It Roll'
死ぬ間際まで喉乾いてる時のコーラよりも爽やかで、徹夜明けに厄介な仕事に臨まなきゃいけない時に飲む致死量ギリギリのエナジードリンクよりもエネルギーが漲る。
彼らに最初に出会った'Let It All'には、Green DayにBlink182、更にはSimpleplanだったりNew Found GloryだったりGood ChalotteだったりSugarcultだったりが持っていた、僕らには細胞レベルで刷り込まれたメロディックなパンクのエッセンスと本質が良きバランスでカチッとハマり、それでいて顔面に風を直撃されるようなクオリティーのインパクトに満ちていた。
こんなもんかっこよすぎるぜ。
容易にレッテルを吹き飛ばすだけのパワーを数秒で感じさせられて、あっという間に心ん中のフェイバリットバンドにカテゴライズされる即効性こそ、ポップ・パンク大きな魅力であり、数秒で彼らがそれを宿していると感じられる衝撃だった。
そして超同年代。この盲目的好意。
ボーカルのアレックス・ガスカースとドラムのライアン・ドーソンは僕の同い年1987年生まれだ。
シンプルプランもNFGもグリーンデイもブリンクも好きな同い年なんて、もし地球上で出会うことがあるならば、ちょっと一席設けないわけにはいかないほっとけない存在なのは、ポップ・パンクファンなら頷けるだろうと思う。
'Time-Bomb'
もちろん同い年が全員好きなわけではないし、全ポップパンクバンドがストライクど真ん中って訳でもない。
でもオール・タイム・ローのポップ・パンクを聴きながら同い年と聞いた時、自然とイイね!は心から離れず、滅茶苦茶いいやつそうにも見えてきた。
友達ができる時っていつもこうだろう。男にだってイケメンの友達はいるのだ。
そうやって勝手に親友になった様な気持ちで彼らを聞き出したが、タイミングとしても彼らの登場は新しい時代を予感させて、そのスケールに期待感は膨らむ、何かすげぇバンドになりそう感は半端なかったのである。
ポップ・パンクの新世代を切り開き、スタジアムクラスになったモダンなバンディエラ(旗手)
Green Day、Offspringのメロコア旋風から更に細分化と加速を繰り返し、ポップ・パンクというジャンルは確実にロックミュージックのユースシーンに根付いたものになった。
間口は広く、甘くキャッチーで、フックもある。
そういう取っ付きやすさの裏には、類似バンドの多さから’格好だけ’という数多くの偽物扱いが付きまとってきたが、それを突き抜けてきた時代を象徴するバンド達は、圧倒的に本物なクオリティーの’何か’を持って若者たちをロックアウトしてきた歴史がある。
All Time Lowも決して追い風だけではなかったが、雑音を捻じ伏せられるクリアな輝きは多くの成功体験と共に、シーンの先頭を走ってきた。
2003年、ボーカルのアレックスとベースのジャックを中心に、高校1-2年時に彼等は結成される。
バンド名はNew found gloryの'Head On Collision'のフレーズから取った(サビの直前の部分)「史上最低の」って意味の単語で、Blink182のカバーを歌うポップパンクの正門から音楽の世界に入りこんだ。
New Found Glory - Head On Collision
まだ在学中の2004年に最初のEPをリリース、2005年には1stアルバム'The Party Scene'を発表すると、徐々にインディーシーンで話題を集め、高校を卒業した翌2006年にはインディーズの大手レーベルと契約し2nd EP'Put Up Or Shut Up'をリリースし、数多いるポップパンクバンドの原石達から1つ抜けた輝きを放つバンドになった。
Coffee Shop Soundtrack
All Time Low - Coffee Shop Soundtrack (Official Music Video)
2007年には2ndアルバム'So Wrong, It's Right'を発表し、これが全米でスマッシュヒットを記録。
その波は日本へと渡り僕はここで彼等に出会ったわけだ。
今でもお気に入りの1枚だし、ポップ・パンクアルバムとしてのバラエティー性を網羅したおもちゃ箱の様なデザインは、超濃縮された究極の1枚とすら思える名盤なのだ。
もちろんメディアも超新星的な捉え方をして一気にポップ・パンクバンドのNewスター枠として露出を増やしていく。
ヒットしたアルバムでのツアーで露出を増やしまくり、レジェンドとの比較や同世代バンドの類似性から抜けられないポップパンクバンドも多かった成熟しきったシーンの中で、真正面からそのスケールの大きさ・オーディエンスを魅了してしまうオーラを遺憾なく発揮し、世代のアイコンとしてリスナーの心を僕の時の様に掴んでいった。
Six Feet Under the Stars
All Time Low - Six Feet Under the Stars (Official Music Video)
2009年にも3rdアルバム’Nothing Personal’をリリース後、メジャーレーベルへ移籍し活動の幅をワールドワイドに広げる事になる。
MTV Unpluggedのライブ・アルバムを経て、4枚目のアルバムを2011年に発表。
4th'Dirty Work'は色んなゲストも参加するメジャーらしい豪華な陣容。Weezerのリバース・クォモも共作したりしている。
そのメジャーアルバムの中で、ポップネスに比重を置いても、その辺のアイドルなんか周回遅れで置き去りするくらいの音圧のクオリティーを見せ、メロディックなロックチューンとしてクリアに昇華されてる進化を見せた。
ポップ・パンクバンドとしてワープドツアーのヘッドラインをこなしつつ、スタジアムクラスで音のレンジを広げたロックバンドとしても試行錯誤を繰り返し、サクセスストーリーの中でも物語先行にならない音楽性の逞しさは、満点のポップネスの中にも常にあった。
Weightless
All Time Low - Weightless (Official Music Video)
All Time Low - I Feel Like Dancin'
2012年にはメジャーを離れ、古巣のインディーズレーベルへと復帰し、精力的にライブツアーをこなし原点回帰。
5thアルバム’Don't Panic’6thアルバム’Future Hearts’も立て続けにリリースし、原点回帰から統合的進化を果たしたスケールの7thアルバム'Last Young Renegade'では、規模が大きくなりスタジアムが主流になった彼らのギグをも呑み込む音圧を披露。
キートラックの'Dirty Laundry'のダーク且つ広く波及する新たなサウンドデザインで大きな注目を集め、そのスタイルを陰陽ひっくり返せば彼らのメロディックな音作りと地続きになっている事が、今深みとなって大きな空間を満たしている。
All Time Low - Dirty Laundry (In The Style of "So Wrong, It's Right")
10代20代を生き急ぐように曲を書き続け、ライブをやり続けた彼らは、それだけ進化のスピードも驚愕的で、親近感の持てる人懐こそうな笑顔を持ったまま、モンスターバンドになっていった感すらある。
この進化と変わらぬ親近感こそ、2010年代以降に加速度的に進む音楽を取り巻く環境の変化に適応した、モダンなスタイルでのポップ・パンクのキーワードだった。
Somewhere In Neverland
All Time Low - Somewhere In Neverland (Official Music Video)
その音楽
先行世代が大物になったピークの過渡期、ポップパンク新時代の幕開けをタイムリーに感じたAll Time Lowの物語。
ルーツにあるポップパンクらしい音とストーリーを持ちながら、従来のポップ・パンク像とと少し違う部分も感じる。
特にどこかパーティーの主役にもなってしまいそうな享楽性は、彼らの放つイケメン的オーラも相まって強烈に光る彼らのアイコニックな部分だ。
For Baltimore
All Time Low - For Baltimore (Official Music Video)
ナードでサッドな青春すら究極のポジティヴィティーで泣き笑い飛ばしてしまうエネルギー。
これぞ新世代であり旧時代の最終形態のバンドの音と言えるかもしれない。
なぜこんなにツイてないんだ?って問いかけよりも、究極の明るさを持ってライブハウスでもクラブでもスタジアムでも、と汎用性を持った音。
オールタイムローの音は時代を超えポップパンクが息づいている事実と、それを更新しカルチャーを反映した新たなフォルムを加えられていたし、彼らの底抜けに明るそうでアイドル的(悪く言えばチャラい)なオーラでこそ抜群の広がりを見せた。
ただそこに、'顔だけ野郎'的な批判を蹴散らすズバ抜けたバンドサウンドとしてのクオリティーがあったからこそ、彼らは先頭を走れたのだと思うのだ。
Dear Maria, Count Me In
All Time Low - Dear Maria, Count Me In (Live from Straight To DVD)
とにかくとびきりキャッチー。こんなもん即死だ。
でもそれだけでなくエモさや哀愁的なギターワークとツボを抑えたポップパンクのエッジは継承されている。
人懐こいメロディーでも媚びずにエネルギッシュな音を鳴らし、スタイリッシュにまとまりつつもアグレッシブにパワーをぶつけてくる感覚はもれなく感じる。
引き合いを出すならば、キャッチーで挑発的なグリーンデイスタイルも感じるし、エモーショナルな爆発力はスターティングラインだし、ボウリングフォースープみたいなショー的なポップネスもある。
脈々と息づくメジャーなバンドのエナジーは、きっと彼らの根源的な所に先輩バンドへの憧れとして常にあって、ただのポップにならない甘い痺れみたいな感覚にモダンなものを聴きながら思い出させてくれるのは正統派の証でもある。
'Damned If I Do Ya (Damned If I Don't)'
All Time Low - Damned If I Do Ya (Damned If I Don't) (Official Music Video)
パンキッシュなサウンドでも、ノイズよりもクリアな音が主体のバンドアンサンブルは、ポップな王道さを掠めとり彼らのイノセントな良さを常に引き出し続ける。
甘いルックスから油断を突く、割りかしタイトなバンドサウンドは、メロディックさを印象深くしつつ、芯に残る様な生音を響かせる。
そして何より圧巻なのが、中心に据えられるアレックスのボーカルで、喉の強さと幅を感じさせつつ、セクシャルでありスタイリッシュであり、音の躍動感と跳ね合うようなポップパンクボーカルの真髄に近い完成形なのだ。
ド真ん中で突き抜けるように響くアレックスの声に、さり気なく重なるコーラスワークはメロディーを何重も厚くさせる美しさがある。
燦めく様なポップネスでも、完成度の高いサウンドプロダクションでしっかりとした音圧で炸裂させられる彼らの才能は、より開かれたポップパンクワールドのトップのバンドになるに相応しい程にまぶしかった。
言葉として先行しがちな'ポップパンクバンド'という響きを、まさしく褒め言葉へとニュアンスを変化させられるような音楽性。
僕らはAll Time Low世代のリスナーなのだ。
ポップ・パンク・イズ・ノット・デッド
顔がイイのは見ればわかる。
音がアツいのは聴けばわかる。
多分良い奴なのは、同い年の僕が保証します。
王道太文字のポップパンクは死なず、フォルムを変えながら時代を超えていく。
誇るべき同世代ではそれが彼らなのだ。少しイケイケなのは時代なんだと思う。
グリーンデイに衝撃を受け、ブリンクに憧れ、シンプルプラン・ニューファウンドグローリーを聴きながらここまで来た。
僕らと極めて近い位置からのポップパンクは、かつて無いほど響きやすい。
素直に聴ける僕は割と恵まれてるかもしれない。
ポップだパンクだロックだイケメンだリア充だとか関係なく一度聴いてくれ。
All Time Lowはカッコいいぞ。
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