スペイン・イングランドで名を馳せた名プレーヤー、シャビ・アロンソに想いを馳せる
紳士的とは、かなり広義の言葉で便利な言葉である。
意味は広く、簡単に言えばジェントルマンである事で、礼儀正しかったり、レディーファーストだったり、ステッキ持ってたり、ハットかぶってたり。
なにかと余裕がある人に対して使うのが正しそうだ。
「男はやっぱり紳士的じゃないとイヤ」って言う女性に限って淑女的ではないのは何故なんだろうか。
フットボールは紳士のスポーツである。
プレーヤーにもエレガントさが求められ、激しいだけの粗暴な男も必要だが敬遠される事も多く模範的な評価は得にくい。
特に母国イングランドではそうだ。
そんなエレガントなプレーヤーを思い浮かべて真っ先に思いつく選手がいた。
シャビ・アロンソ。
見てくれこのエレガントな風貌を。
この人がホテルのコンシェルジュでフロントにいるだけで星が二つくらいあがりそう。
洋服の青山のディスカウントされてるスーツでも、高級ブランドくらいバリッと着こなしそうなオーラ。
それでも表情は常に戦う男の表情だった。
エレガントさを醸すのには、強靭なタフさで支えられたベースがないと不可能なのだ。
今日はシャビ・アロンソに想いを馳せるレビュー。
素敵な暇つぶしになれば幸い。
バスクの星から世界的な選手へ
スペインの中でも特に「血の濃い」地域、バスク地方にシャビ・アロンソは生まれた。
父親も、バスクの血が流れるサッカークラブ、レアル・ソシエダでエースとして君臨していたサッカー一家。
アロンソの折れない闘争心とか体内に宿り時にオーラとなって纏う熱量みたいなモノはこのバスクの血で培ったものだ。
ソシエダの下部組織に入ると、ストリートやビーチで磨いたテクニックと、天賦の視野の広さで、チームの心臓’ピポーテ’のポジションで活躍し出す。
元日本代表の乾も所属した当時2部のエイバルにレンタル移籍され、若き司令塔として堂々と落ち着いたプレーを見せる。
ソシエダにレンタルバックされても、勢いは止まらず、中堅チームだったソシエダを2位まで引き上げる原動力となった。
Xabi Alonso , the boy with the perfect pass.
CLでも活躍したアロンソは、知将ベニテス率いるリバプールへと移籍し、イングランドへと舞台を移す。
もともとスペイン人らしい技術をベースにしながら、小気味いいエキゾチックさよりはゆったりとエレガントにプレーするアロンソは、イングランドに驚く程フィットする。
ベニテスの知略的な采配に、フットボールを頭で理解するアロンソの動きは欠かせず、相乗的な効果をもたらした。
アロンソはその知略を体現し、自らの引き出しに加え、ピッチ上でより総合的なプレーヤーと化した。
プレミアリーグで最もロマンチックなフットボールを見せていた00年代中盤のリバプールの中心にはシャビアロンソがいたのだ。
チームの顔では無かったが、心臓部そして頭脳としてフットボールとして最も味方に相手に効くプレーを見せつけた。
怪我の問題も抱えた事もあったが、ピッチ上にアロンソがいる時といない時の差は歴然だった。
代表でも2006年W杯も経験し中盤に当代きってのタレントを擁するスペインでも欠かせない存在感を出すようになったアロンソは、リバプールで一時代を築いた後、再びスペインへと戦いの場を移す。
銀河系再建を目指すレアルマドリーに迎えられたアロンソは、かつての銀河系のどの選手よりも早くフィットし、煌めく星々を銀河に留め輝かせる、最も欠かせない人物となった。
わずか3年で100試合出場を果たすなど、ほぼ全ての試合で中心としてプレーし、グティの移籍後は14番も背負った。
自身初となるリーグ制覇とCLの制覇も果たし、結果としてキャリアの絶頂を迎える事もある意味必然だったと言える程のキャリアの昇華っぷり。
キャリアも終盤になったにも関わらずグァルディオラが指揮を執ったバイエルンに迎え入れられ、ペップサッカーの心臓部を具現化するキーポジションを任され、ペップのイメージを浸透させるのに大きな役割を果たす。
インテリジェンスかつスタイリッシュなプレーは、とにかく上質なサッカーが似合う。
どのチームの印象も強いアロンソ。時代時代を象徴とする上位のクラブに必要とされ続け、そのポテンシャルを遺憾なく披露し続けたのだ。
インテリジェンス溢れるプレー
どこの国であろうが、超一流のクラブに在籍する様な選手であれば、どんなサッカーであろうと本人のレベルの高さで相応の対応を出来る。
それでも高レベルの選手がフィットし切れないケースもあるのは、超一流クラブは高次元で複雑かつ魅力的なフットボールを標榜するからだ。
その面で言えばシャビアロンソのフィット力は群を抜いて素晴らしかった。
ベースのテクニックでまず奪われない。
360度の均等な対応を要求される中盤の底のポジションにおいて、自分のバランスを崩さずいなせる技術で、プレスに行ったDFが簡単には飛び込めないオーラを放つ。
それはチームにとって戦術の礎となる部分だ。
覇気みたいなオーラで自分のスペースを確保する事は、指揮者が壇上に上がるような物で、後は悠々とチームの指揮を取り出す。
力みゼロのリラックスしたフォームからは想像できないくらい正確な高速のロングボール。
それは右でも左でもインステップでもインサイドでもアウトサイドでも、どんな形でも精度を損なわないので、長短と緩急、そしてタイミングを問わずに、ピッチのどこへでも指揮者のタイミングでパスを届けられる。
サイドチェンジのボールをぎりぎりまで幅を取らせる為、スペースへ走り込んだ選手の頭を狙っている。
状況判断に優れた長短のパス、というプレーヤー修飾語の最高峰とも言えるプレーの質。
そのバックボーンにはアロンソ持つ天賦の才であり、数々の知将と触れた事で磨きをかけたフットボールインテリジェンスがある。
ゲームの潮目を見ながら、ポジションを微調整し、攻守に渡って流れを引き寄せるプレーの選択が出来る。
対人でも長身を活かした守備で、ボールを奪えるセンターハーフとして完成されたプレー。
別物とも言われるイングランドとスペインのセンターハーフの役割の違いすら、彼にはさしたる障害にならなかった。
どんな相手であろうと、自チームがどんなフットボールを選択しようと、極力シンプルにそしてエレガントにフットボールの肝であり続けた。
時には戦術を飛び越えたエキサイティングな判断で、スペクタクルも起こす事もしばしばだ。
彼のフットボールにミスはあっても、間違いはなかったのだ。
時代が彼のポジションに注目しだす幸運もあったし、或いは彼がその評価を確立させたとも言えるかもしれない。
数々のチームメイトと監督に絶賛されたそのプレースキルが、時代を創り上げた。
IQの高い選手
モウリーニョやベニテス、グアルディオラを始め、数々の知将も唸らす気の利いたプレー。
監督が教授で、アロンソが生徒みたいだ。
憮然とした顔でシレッと話を聞いている。
急に当てられても、こういう事でしょ?と満点以上の答えを出す生徒。
もっと憮然として両手をお手上げにするモウリーニョの映像が眼に浮かぶ様だ。
こういう選手をフットボール界は忘れてはいけない、そう思う選手だった。
【Football soundtrack theme Xabier Alonso】
Green Day ’Jesus Of Suburbia’