Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【バンド&ソングレビュー】The Cribsに想いを馳せて

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誰だって絶賛するモダンロックのアヴァンギャルドな存在The Cribsに想いを馳せる

人は30代になると新しい音楽・バンドを探すことをやめる、という研究結果つきの記事が出たらしい。出処はNMEだ。

nme-jp.com

30代になった今、100%頷けるわけではないが、ちくちくと胸に刺さるものはある。

新しく世を騒がせているバンド、それを何か別のものに騒がしくなってる自分がスルーしてる事は今までもきっとあった。

知らず知らずに音源は手に入れていて記憶に刻まれている。

いつの間にか結構なくらい繰り返し聴いていて、アレッ!?ってくらい伸びた再生回数。

慌てる様に記憶を呼び起こし、調べてみればそりゃそうさってくらい痺れるバンドのバイオグラフィーがあったりするのだ。

最初から覚えてれば、今回の来日にも間に合ったのに。

今日日僕にとってそんなバンドはThe Cribsだった。

 

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ロック好きなら好きだろ、ロック好きじゃなくても好きになんだろ。
委細かまわぬという時代性無視のロックンロールが逆説的に今モダンなアートさになる不思議なロックマジック。
インディー的な活動を主に'聞きたい人だけ聴けば?'ってくらい吹っ切れたギターロックは強烈に捻れた爽快感を纏い、モダンロックの実は最先端の姿なのかもしれない。
 
本日はThe Cribsに想いを馳せる。
 
 

淡々とロックの今を引っ張るぶっ飛んだバンド

どっかの誰かが良いって言ってた。そうやってバンドを知ってくのが世の常だ。

雑誌だろうがネットメディアだろうがこういうブログだろうが友達の言葉だろうが。

そういうふとした一個になればいいなと思って書いている次第だ。

特にその誰かが巨大な影響力を持つ人物の場合はそのままそれが冠になる。

帯のどっかには〇〇絶賛とかかれる。イギリスのロック界で言うとオアシス絶賛とかはそれに当たるだろうと思う。

それで言えばThe Cribsは超太鼓判の付いたバンドだった。


The Cribs - Live at Amoeba (Jul 20, 2007)

インディーシーンで注目を集めると、すぐさまオアシスのリアム・ノエルが絶賛、リバティーンズもそれに続き、何故か大御所ポストパンクバンド、ザ・シミスジョニー・マーもギタリストでバンドに参加を立候補しホントに在籍までした評価のされっぷり。

一方で〇〇絶賛という触れ込みの魔力はコンビニエンスになりすぎてしまうきらいもある。

いかに気にしていないようなコメントを残しても本人の知らない処で〇〇絶賛は意図せず間口を広げ、期待のベクトルの乖離によるアイデンティティーの喪失にも繋がる危険は常に孕むのだ。

サッカー界にはマラドーナ二世が20人くらいいるが、未だにその誰もがW杯を掲げていない、そこにもそういう見えない重圧が作用している気がしてならないのだ。

 

そこで言わしときゃいい、関係ないよってブレない態度が逆にロックに映る見え方にもなるのだが、何ともガチで気にしていないようだったのがThe Cribsなのだ。

そこが実に痺れるしカッコイイ。

デタラメでローファイ割りとそんなに売れなくても良いってスタンス
だからこそ、ささくれたロックの鮮やかさを存分に感じられるし、ラフさ・荒さの先のロックはこうでなきゃ感は自然とオーセンティックな香りを宿すのだ。
型になど見向きもせずただただ耳にこびりつく中毒性は、時勢関係なく本質のみ撃ち抜く浪漫があって、〇〇絶賛のレッテルをスルリと透かすパンキッシュなスタイリッシュさにも繋がっている。
 

The Cribsとは

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2000年初頭のリバティーンズやストロークス、更にはアークティック・モンキーズ、フランツ・フェルディナンドのガレージロック・リバイバルのムーブメントの弟分のような位置取りで姿を表したザ・クリブス。

双子+弟による3ピースバンドで弟のロスがドラムで、ギターのゲイリーとベースのライアンがボーカルを変幻自在に変えつつ歌う。

リバティーンズの前座を抜擢されたり、フランツ・フェルディナンドのアレックスがアルバムをプロデュースしたり、ジョニー・マーがバンドに参加したり、イギリスのバンドの中でもトップの話題を集めながら活動していながら、前述もしたが何かこうサラッとしたスタンスが実にマイペースな印象を与える。

 

根本的にローファイ・サウンドに大きな影響を受けた3兄弟は、まさに独自なインディー路線でエネルギーを発揮する事を望んでいた。

巨大な成功を毛嫌いするわけではなく、ナチュラルに必要のないものとして捉える真のインディー精神として数多くのリスペクトを浴びつつも、こっちがアツくなればなるほど更にひらりと躱して掴めないぶっ飛んだ印象すらある。

ライブは事件的に過激で、そのサウンドもまさに独特なロックとしてガタガタながら成立しているのだ。

 

兄弟ってのも活かしつつボーカルも曲中にとって変わったり変わり返したり、めまぐるしい3ピースロックは常に基本線で音も声も入り乱れるガレージなロック。
別の色のペンキをぶちまけられつついつの間にか凄い絵になってるような、はちゃめちゃをスペシャルにする才気を感じさせる。
 
衝動的で音楽的に何かが欠けていそうでも、それを感じさせない音の強さと彩度は魅力的で、作り込まれたものとは相反するアイディアに長けるポストパンク的な側面もジョニー・マーの琴線を刺激したのかもしれない。
快感指数が高くありつつ、何だかわからんがとても楽しいロックのロマンを味方につけ、イヤホンで聴いてるやつをドヤ顔にできる無敵感は、聴き手を楽しませ、ここではないどこかへ連れ出してみせるような、わくわくさせるサービス精神+インディー精神から来ているのだ。
 

ソングレビュー

1. 'Hey Scenesters!'


The Cribs - Hey Scenesters

ソングレビューの一発目は実にクリブスらしい初期のハチャメチャナンバー。

ローに躍動感を誘うベースライン火花散るギターカット、カオティックに跳ねるフリーキーなメロディーに、コーラスもシャウトも自在に入り乱れるツインボーカルの味わい。

蛍光色の黄色いペンキを次々とぶちまけられてるような圧倒的な染められる感じは、3ピースながら超強力。

バラバラな個性が不思議と一体となるマジカルな魅力が詰まった一曲で、ちょっと風刺的な感じも良い。

 

2.'Our Bovine Public'


The Cribs - Our Bovine Public

コミカルなメロディーの滑り出しに一瞬で心奪われるこれぞクリブス流のマジカルな高揚感。

四方八方に散らばった音がねじれてうねる収束感、しかもマキシマムな地点は実にメロディアスでキャッチーになる不思議でちょっと聴いたこと無いぜって曲。

キャッチーなコーラスに高音で煌めくエッジのギター、はちゃめちゃに見えつつ誰も同

じように歌えないだろうスペシャルなボーカルを思う存分堪能できる2分半。

クリブスとはなんぞや的なアンサーアンセムだ。

 

3.'I'm a Realist'


The Cribs - I'm A Realist

メロウなミッドテンポのアンセムナンバー。
ストリートなポップネスが滑り出すロマンティックなメロディーに、趣きある情緒すら感じるセンチメンタルな香り。
自然と顔が綻ぶ様なアンセムメロディーに包まれ、油断してると涙を誘われる怒涛のコーラスは超エモい。
繊細で捻くれた最高のポップネスがクリブス最高の形で結晶化した一曲だ。
 
4.'Men's Needs'


The Cribs - Men's Needs [Non-PA] (Video)

一度聴いたらこびりついて離れないリフの屈指のアンセム。

強烈な個性を放ちつつ、滑り落ちるような爽快感でアンバランスに鮮やかにキマる。

メロディアスなボーカルとエッジーなボーカルを巧み入れ替え、突如聞こえる重なるコーラスも単純な仕組みながらインパクトは凄い。

ギターロックの浮遊的な魅力をおさえつつ、眩しさに目を奪われるキラーチューンだ。

 

5.'Mirror Kissers'


The Cribs - Mirror Kissers

インディー全開のライブ感と密室的疾走感あるロウなナンバー。
超ガレージなとっ散らかったサウンドもドキドキするくらい高揚する。
しっかりと歌を感じるセンスフルなボーカルとコーラスが鮮やかだしセクシーで、突進するようで跳ねまくる音は全方位に突き刺さる。
斬新ながら心を掴む変調で型の外からぶん殴られる神出鬼没さも初期から完成されていた。
 
6.'Rainbow Ridge'


The Cribs - Rainbow Ridge

ニルヴァーナ的なサウンドデザインの新しめのナンバー。

ロウでピュアなメロディー、鋭角に切り上げるギターで惹きつけてまとまり滑空する様なサウンドは攻撃性より切なさを纏い響く。

終始シンプルなメロディーメイクだからこそキャッチーに掴むし、尖ったエッジがえぐっていくだけのフックもあるのだ。

ちょっと大人だし、インディー的な深さを感じさせる一曲。

 

7.'Don't You Wanna Be Relevant?'


The Cribs - Don't You Wanna Be Relevant?

終始強烈に眩いギターにリードされるメロディアスなナンバー。

歌謡曲みないなコブシ的情感も感じる歌うようなギターリフ中心のメロディーラインは心地よく聴く事が出来る。

どこかクラシカルなサウンド・デザインがホッとする心の柔らかい部分を突くし、彼らの歌心がストレートに出た良曲。

 

8.'Kind Words From the Broken Hearted'


The Cribs - Kind Words From The Broken Hearted

ミディアムなポップナンバー。

ギターとシンセの眩いばかりの広がりのサウンドに、ポップなビートが跳ねるわかりやすくポップな一曲だ。

高音でめちゃめちゃに絡みあうメロディーは虹のように綺麗で、セクシーに味のあるハスキーなボーカルにロックを感じつつ、しっかりサビでキメてくるドライヴなサウンドメイクは実に聴いていて嬉しい祝祭感すらあるのだ。

 

The Cribsはきっとずっと密かに僕の心で鳴る

きっと耳の早い音楽ファンはあっという間に好きになってるバンドだろうし、10回以上超える来日を果たしている事からしても、既にファンベースが日本にもあるというデカイ存在のバンドだ。

全然僕が知らなかっただけであるが、それでも気付かずに驚くほど聴いていたのは彼らの音楽性とスタイルにおもねる所が大きいと思った。

どんなプレイリストの中で聴いてても異彩を放ち、彼らだけ聴いてみりゃ異様にカッコイイ。

音楽人生で実は密かに幾度もドラマティックな瞬間を作っているバンドは、実はこういうバンドなのかもしれない。

 

それではまた別の記事で。