世界の中心から鳴るロック
楽園的なイメージと洗練的なイメージが共存するオセアニアの大っきな島・オーストラリア。
世界第6位の面積の国土には、最近パソコン開くと出て来る「気に入りましたか?」みたいな壁紙にいつか出てくるだろう、美しいグレートバリアリーフと巨大なエアーズロック、最先端のスタイリッシュ建築まで揃っていて、雄大な自然と多様な文化が混ざり合う大陸らしい独特で強靭な風土の国になっている。
豪州という呼ばれ方が国名の略称の中でもトップクラスに心地いい。
だから行ったこと無くても凄く存在感がデカイ外国なのだ。
オーストラリアといえば何を思い浮かべるだろうか?
行ったことがない1987年生まれの僕からしたら、ベタにコアラだカンガルーだから始まり、長澤まさみが世界一可愛かったセカチューのエアーズロックだ、テニプリがビームとか出す前の超初期のオーストラリアンフォーメーションだ、水曜どうでしょうの縦断だ、中田がPK外した黄金世代のシドニー五輪だ、と色々浮かんでくる何かと気になる国。
そしてロック音楽大国なのだ。
地理的に文化の結節点となり、あらゆるミュージックカルチャーが大胆に吸収され大陸的であり、独自のロックカルチャーの流れを自然と汲むバンドたちは、絶妙な存在感で僕の心に刻まれる。
一見するとわからなくて、あのバンドそうなんだ、と思うこともあるクオリティの遜色の無さもありながらも、大陸的なオルタナティブさが雄大に作用して世界のロックシーンを引っ張るバンドが出て来る事もしばしば。
今回はそんなバンドを1987年生まれロック好き的に11個選んでみました。
雄大さと自由さが上手く醸造されて、実に味わい深く力強いロックのキレの良さ、フジロックも御用達でアップルがiTunes関係のCMでも乱起用したりと世界もほっとけない輝きを放つのだ。
行ったこともないが、何かと僕らの目に耳に飛び込んでくる巨大なオーストラリア。
こういう音楽の聞き方もある、今回はオーストラリアという地域に区切ってのロックコラムだ。
素敵な暇つぶしになれば幸い。
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1.AC/DC
オーストラリアンロック最初の開拓者にして、世界的なレジェンドになった超巨大バンド。
1978年のアルバム'Back In Black'は世界で5000万枚を超える天文学的な売上で、その上を行く売上は歴代でもあのマイケル・ジャクソンのスリラーしか存在しない。
つまり史上最も売れたロックアルバムを作ったのは、オーストラリアのバンドなのだ。
もじゃもじゃ半ズボンのアンガス兄弟のリフを中心にした音は、無骨で強力なハードロックサウンドでありながら、エネルギッシュで色気があって実にキャッチー。
かなりパンクなバンドのバイオグラフィーの中で、メンバーチェンジが多くともブレないぶっといロックスタイルは大きな自信に満ちていた。
パンクロックビックバンをデコピンで弾き飛ばす程の、桁違いのロックパワーでロック界で最もオルタナティヴ=パーフェクトなまま頂点に居続け、ロックのオーソドックスさを強靭に叩き上げる精神とパフォーマンスは世界中のバンドの敬愛を集めてきた。
'Back In Back'の人類史上最強のロックリフに電撃を浴び続ける限り、きっとこの世からロックは不滅なのだ。
AC/DC - Back In Black (Official Video)
2.The Vines
そのAC/DC以来、オーストラリアのバンドとして20年ぶりにローリング・ストーンズ誌の表紙を飾った純度100%のロックアイコンThe Vines。
Nirvana meets Beatlesと称された、今にも壊れそうな荒々しさと今にも壊れそうな美しさが、爆発寸前で同居するサウンドがどこまでもナチュラルに鳴っていたパンクさ。
オーストラリア史上最高にパンクなフロントマン、クレイグ・ニコルズのキャラクターに大きく左右されたバンドは、不安定で破天荒で、そして苛烈で世界で一番カッコ良かったのだ。
再びオージーロックから世界を制すと共に、00年代ガレージロック・リバイバルの大陸からの担い手として、ロックそのものを救ったんじゃないかという稀代の評価を得る時代性を越えるバンドだった。忘れたくない大好きなバンド。
'Ride'はipodのCMでも使われたキャッチーで攻撃的なギターロック。
'Outtathaway'の緑のパーカー姿は一生目に焼き付いているほどアイコニックだ。
3.Jet
’え?これカバー?’と頭が考える前に身体が動き出す華麗なロックンロール、快楽度合いは天井知らずなそのビートをモダンに蘇らせたJETは、オーストラリアから世界にロックンロールの灯をつけた。
2003年アルバム'Get Born'の衝撃は強烈で、ガレージロックリバイバルとはこういう事か、ロックンロールが蘇るとはこういう事か、と瞬時に理解できるロックンロールの原初を鮮烈に色付けしたサウンドは、大げさでなく当時世界を席巻していた。
フジロックにはデビュー前にすでに出演していて実に親日なバンド。
オージー・インベイジョン・ツアーというツアーを前述のヴァインズと一緒に行っていた事もある近代オージーロック最重要バンドの1つ。
数々のタイアップと表彰を受け、ゴキゲンなロックンロールサウンド・似すぎとまで言われたクラシックへのオマージュとセクシャルなパフォーマンスで彼らの代表曲'Are You Gonna Be My Girl'は誰もがその再点火に歓喜した時代を彩るキラートラックとなった。
Jet - Are You Gonna Be My Girl
4.Living End
現代のオーストラリアの国民的バンドで2000年代オージー・インヴェイジョン三銃士の1つにして最初のバンド。
1994年結成され、GreenDayのオーストラリア公演のサポートから火が点いたバンドで、パンクロックのアティテュードにロカビリーのエッセンスを取り入れたスタイルが抜群にキャッチーでオルタナティブだった。
ポップパンクブームとも少し一線を画される、クラッシュとかイギー・ポップ寄りのオリジナルなパンクのリヴァイバルに近い音、それも抜群の技術でタイトに鳴らされる彼らにしか出来ない=オルタナティブに繋がるバンドの理想形が彼らだった。
'Roll On'は彼らの味わいの詰まった看板の一曲。
The Living End - Roll On (Video)
5.5 Seconds Of Summer
何故か毎回彗星の様に現れる今最前線を走るポップロックアイコン。
元々はYouTuberという現代らしい経緯もポップパンクの間口の広さ・裾野の広さを象徴する進化の証でもある。
ボーイズグループと勘違いされがちだが、ポップバンドとしてきっちり演奏するイケメン4人組だ。
ポップソングをカバーできる鮮やかなポップセンス、本人達もカバーしてたがAmerican Idiotが最初に買ったという世代が脈々とポップにパンクに時代の先頭に立つのは、イケメンだから、と腹が立つ前に普通に嬉しい。
億超えの再生回数を誇る曲も多いがやっぱりアメリカン・イディオットのカバーが彼らを象徴していて好き。
5 Seconds of Summer Covers "American Idiot" On The Howard Stern Show
6.DMA's
2012年にシドニーから出現した3人組、天才オルタナティブロックバンド。
オアシスの再来と言う「またまた…」という触れ込みの斜め上を行く、超独自路線のオルタナ的ソングライティングセンスと、全く異質の良さながら触れ込みに存分に比肩しうるグッドメロディーぶり。
超メロディアスでタイドで、マッドチェスター?いやブリットポップ?あれREM?とさ、まざまな香りを香らせながらスルスルと掴みどころ無く雄大に鳴る不思議なポップ・ロック。
雄大過ぎるオージー屈指の素朴な才能のデカさは、初めて聴いた時からちょっと只事ではない感がずっとつきまとう。
'Your Low'は超絶タイドなグルーヴにマジカルなポップネスの絡んだキラーチューン。
ちなみにライブの時はバンドの人数が倍になる。
DMA's - Your Low (Live) - Vevo UK @ The Great Escape 2015
7.Silverchair
1979年に生まれカート・コバーンの死で揺れた1994年に結成したオーストラリアの伝説的なバンド。
グランジを引きずる世界のド真ん中を撃ち抜くアツく重い曲を15歳にして作り、あっという間にオージーで世界で大成功を収めた。
サウンド・ガーデンやパールジャムや、もちろんニルヴァーナのアルバムと共に彼らが15歳で作ったアルバム’Tomorrow’はグランジ・ロック史に残る事になった。
こういう唐突もない突出した才能ってのも底の見えないオーストラリアらしい。
2011年の活動休止までグランジからポップネスを昇華した独自のサウンドデザインも賞賛を浴びたが、やはり'Tomorrow'のピュアで鈍く眩しいグランジの炎のような燦めきは何年たっても聴き続けたい。
Silverchair - Tomorrow (Video/Australian Version)
8.Bodyjar
メロコア/メロディックパンク好きには外せないオージーパンク界の大物バンド。
世界中の数々のバンドが芽吹いたメロコアパンク旋風で、こうやってオーストラリアのバンドと出会えたのは嬉しい限り。
キャッチーでファストでメロディックなパンクサウンドは、どこか他のバンドより大らかで途轍もなく聞きやすかった。
きっとオーストラリアのパンクキッズが、こっからバンドやろうぜ、ってなるのが余りにも自然なロールモデルたる純然なポップパンクサウンドは確実に時代を紡いでいる。
'Not The Same'のキラーチューン辺りは世界的にクラシックスとして広まる、仮に知っていなくとも頭振れる超キャッチーなポップパンクソング。
9.Local Resident failure
オーストラリアのストリート・パンクシーンから世界に飛び出したパンク界隈では噂のバンド。
超気になっていたYouTuberのバンドなのだ。
ドラマーのKye Smithは元々ノーエフやブリンク、サムにグリーンデイと言ったパンクバンドからBECKやフーファイまであらゆるドラムをメドレー形式で叩きまくり大人気のYouTuberだった。
そんな彼のバンドもファットレック直系DIY精神に溢れるストリートなパンク。
Kye SmithのドラムカバーYou Tubeチャンネルも一見の価値あり。
Local Resident Failure - Around the World [Official Video]
Green Day: A 5 Minute Drum Chronology - Kye Smith [HD]
9.Wolfmother
モジャ毛のロッカー、アンドリュー・ストックデイル率いるハードロックバンド。
70sを思い起こさせるエレクトリックでサイケに’魅せる’音でギンギンのハードロックを鳴らし、世界中から絶賛を浴びグラミー賞まで獲った。
寝かさられ良い感じに醸造された抜群のオーセンティック感はずば抜けてエロかった。
オリジナルメンバーはもうアンドリューしか残っていない。
'Love Train'もオージーロック大好きAppleのCMで使われ全世界で死ぬほど流された。
Wolfmother - Love Train (Official Video)
10.Tame Impala
各方面から絶賛を浴びる現代最高のサイケデリック・ロックバンド。
70年代ラブ・アンド・ピースの時代だからこそ花開いたサイケデリックロックを、モダンに昇華させる神業的な音創りで、今世界最高にアーティスティックなバンドの名をほしいままにする。
陶酔感の深さとか、ドリーミーな世界感の支配力では現代では比肩するものがいない、魔術的で究極の自然的な’体験’となって身体に浸透していく。
凄すぎて怖くて、まだ深く聴いていない自分もいる。そんな自分も納得できる飲み込まれそうなほど深くデカイ時代を背負ったバンド。
Tame Impala - Feels Like We Only Go Backwards
11.John Butler trio
オーガニックギターの神様ジョン・バトラーを中心に結成された神業ジャム・トリオ。
サーフ・ファンクを独自にミックスさせ、超絶技巧によって成る究極的にナチュラルなグルーヴは人類の財産。
ギター1本でコレだけの人を静まり返らせ、全く同時に心を動かせるのは今この人しかいないのかもしれないと思わせる、音楽の力を最も感じる人物は雄大なオージーの文化から生まれた。
フジロックのヌシでもある。
John Butler Trio - Ocean Live @Fuji Rock Festival '10
John Butler Trio - "I'd Do Anything" Live from Red Rocks
地球のへそで、ロックを叫ぶ
あらゆる音楽が混ざりあい、醸造されたからこそ独特の香りになって花開いたオーストラリアのロック。
或いは、だが、きっと世界の中心たる場所でなる音楽はこういう事をいうのかもしれない。
世界中を巡り巡って、時代を超えてきた音が、雄大な大地の元に帰るように。
天の川がそのまま落ちてきた様な燦めきも雄大な大地はしかと受け止め、再び新たな流星を空に流していく。
そんなロマンチックな光景すら浮かぶ、オーストラリアのロック。
これからも是非、注目していきたい。
それではまた別の記事で。