少しひねくれた、一人きりの長い都会の夜に口ずさむべき日本のロックバンド、ピロウズに想いを馳せる
日本のシティロックの芸術であり、本当の愛好家にこそ強烈に愛される、ひっそりとしたビックバンド、the pillows。
2019年に30週年を迎えた’ヒットチャートに乗らないバンド’は、実にオルタナティヴな存在感のままヴェテランの域にきた。
2019年秋には、彼らの30週年アニバーサリー映画の’王様になれ’も公開される。
いまこそ聴きたいこのクセの強さ。
ousamaninare.comピロウズは日本で1番、知る人ぞ知るバンドであり、その中でずば抜けて日本で1番格好いい。
それって実は凄いこと。
やり場のない虚しさも、過去にこめた深い想いも、ちょっとドランクにスタイリッシュにキマる、スマッシュなシティーロック。
ミスチルとスピッツとウルフルズとほぼほぼ同期で、ミッシェルの先輩。
次々と売れてくバンドを尻目に、あらゆる試行錯誤を捻くれさせ、結果好き勝手やってきた今、ポップもロックも撃ち抜く唯一無二のオルタナティヴとなって響くのだ。
スーパー売れてるわけじゃなくて、それでも心地よさそうにロックを鳴らす。
売れてるバンドと、ちょっとだけ違ってすげぇ良い。
そんな10曲を、彼らへのお祝いも込めて纏めてみました。
秋の夜に聴きながら読んで頂き、素敵な暇つぶしになれば幸いです。
Spotify Playlist
1.'Funny Bunny'
日本ロック史に刻まれたオルタナティヴロックの金字塔でありながら、色褪せずひっそりとロック好きに未来永劫響き続ける、そういう趣肴の彼らのキラーナンバー。
洒落たギターロックの佇まいながら、渇いた唇のように擦れていて、それがマジカルにロックなフェードがかかるバンドの世界観が作るサウンド。
誰かのおかげじゃなく、こういう歌を響かせるバンドになったピロウズだからこそ、この曲は羽ばたいて、ロックな世界で飛び回り続ける。
飄々としているが揺るぎない確固たるポップネスに昇華された彼らの存在感が、混み合った人生が、ほんの少しだけひらけるような上を向いて歩ける一曲。
エルレのカバーも秀逸でした。
2.'ターミナル・ヘヴンズ・ロック'
シティーロックって言葉があるならば、きっとその最高峰だし、この曲のためにそんな言葉があるべきだ。
こんなん狙って出せないピロウズだけのナンバー。
古く言うとモッズだし、バーチャルな未来都市でも鳴ってそうな、スタンダードながら時代概念から外れた音。
ダンサブルなロックンロールの出で立ちに、荒んでスタイリッシュなムードでピロウズ節とも言える’~ぜ’って語尾が映えまくる。
演技じみたショーマン的なボーカルがアイコニックなポイントでもある。
3.'バビロン天使の詩'
ピロウズのロックの中心で鳴り、その方向性みたいなものを永遠にブレず指し続けるメッセージロック。
一発で酔わされる強めのドランキーなギターの歪みと歌謡曲的な揺らぎ、そして語感の良さとダサいPV。
これぞ日本のロックでピロウズのロックの全てを詰めたキラーチューン。
バベルの塔になぞらえて、翼を燃やされ地に落ちても、僕に合うシンプルスカイを探して世界を変えても、再び空を目指す冒険者で居続けたい。
どこまでもアツい歌詞も、野心的というよりは淡々と荒んだビートで呑み込みやすく、ダサいPVでユニークに語られるからこそ、めちゃめちゃ歪んで心に残る。
4.'ストレンジカメレオン'
彼ら最大の曲は、知ってる人は知ってるって知名度ながら、だからこそ秘密めいた響きで永遠に僕の中では鳴る。
センチメンタルな歌声の横で、寄り添う様に付かず離れずで絶妙な距離で歌うギターが美しい。
いつか懐いてた猫は、お腹空かせていただけで。
未練がましくて煮え切らなくて、だから生々しく素晴らしい。
カメレオンの様に、リスナー一人一人の体験や経験と深く繋がる可能性が常にある、パーソナルなバラッド。
5.'スケアクロウ'
暮れ行く空、からかう風の吹くこれからの季節最高に映える絶品ロックバラッド。
アコースティックギターが歌う枯れたメロディーにグルービーなベースラインが艷やかで、憂いと躍動感を行き来する。
元々は’案山子’という意味の単語だが、ジーン・ハックマンとアル・パチーノの50年前の映画からインスパイアされた一曲。
ロクデナシの2人の男の友情、男女の恋愛の詩にも見えなくないが、そういう2人を想像した方が涙腺が緩む最高の世界観を創り出せるのは、鳴らす音で感情を描くのがどこまでも自然で上手いピロウズだからだし、彼らとシンクロする部分があるんだろう。
男臭くてどこまでも切ない至高のバラッドだ。
6.'Thank You, my twilight'
一度聞いたら離れない電子音のリフレインが恐ろしくキャッチーなオルタナナンバー。
まだかなと次を待ってしまう電子音と、振り下ろされるギターロックサウンドは絶妙の相性で、お互いを助長しながら深くリスナーに沈み込んでいく。
ガツンとくるギター、優しく撫ぜる様な声、そこにきて電子音は最後少しだけ切なく聞こえる。
ハイファイな音響を使うんでも彼らのブレないロック感性の上で炸裂させられるからこそ、彼らの曲の中でも未曾有のセンチメンタルを産んでいる鮮やかな一曲。
7.'サード・アイ'
ミッシェルばりのギターグルーヴのロックンロール。
オルタナに渦巻くギターリフと反目する様で成立する爽快な疾走メロディーは、サビで相まって恐ろしくむき出しな弾丸の様に錐揉んでダイレクトに届く。
爽快で目まぐるしいロックサウンドの中に、ドラマチックな舌回しでサードアイという言葉を中心にした物語性の強い歌詞を宿して、ポップでありながら擦れる、自然な違和感を出すのだ。
明日が来ないような重い空って表現は他で聞いたことが無い。
聴けば聴くほどハマっていく中毒性の高さは、こういうロックチューンこそ目立つ。
8.'この世の果てまで'
どストレートにぶっ飛ばされる開放的なロックンロールソング。
何処かで聞いた事ありそうなロックンロールスタンダードなメロディーとリズムを、ここまでピロウズ節で練り上げ見た事も無い光景を作り出せる。
淡く揺らめく眩しいメロディーと、メッセージ性の強い躍動感は、とてつもない風通しの良さで僕らにぶつかってくる。
この世の果てまで連れて行ってもらえる音楽は、やっぱりこういうロックンロールなのだと確信を持てるような一曲。
9.'Ride on shooting star'
絶妙な語呂の良さと癖のあるギターリフとダサかっこいいPVのピロウズの三拍子揃ったナンバー。
世界的にコアな人気のアニメOVAのテーマ曲に使われた背景もあり、アメリカツアーのライブでの興奮した観客がステージに登り、山中がブチ切れるという事件が伝説的になっている。
1音目を聞いた時のフックと、山中さわおの1声目を聞いた時の開放感だけでもうヤバイ快感が疾走る、オルタナなトロピカリズムで魅了する嵐の様なロック。
10.'ハイブリットレインボウ'
日本のロック史に残るべきオルタナティヴな名曲でありつつ、ひっそりとパーソナルに鳴り続けられる彼らと僕らだけの大切な名曲。
BUMP OF CHICKENが大好きだった小学生の時、彼らのカバーこそで凄い曲だと思っていたが、今、この原曲こそ自分には相応わしいと、そう思える擦れた大人になれた事がちょっと嬉しい。
メインストリームに対するオルタナティヴとして、確実に目の前に具現化する壁にぶち当たった時の魂の在り方みたいなものを、グランジーにオルタナティヴに爆発させる芸術的な音世界。
形容しがたい世界観は、RPGの世界の様でも、この世界の見たことのないどこかの島のようでもある。
今日も簡単そうに回る世界でpillowsを
以上、大好きなピロウズの10曲を選んでみました。
音楽で涙することは良くある。
でもその中でも特にアツい涙なのは、いつだってピロウズだった。
なんてこと無くいつもの様に回る世界が、ほんの少しだけ突抜けてよく見えるのはピロウズがこういう距離感で教えてくれたからだ。
それではまた別の記事で。