無人島に持っていくならどのアルバム?
無人島に持っていくシリーズ13。
新譜のレビューはやっていたけど、それ以外にも心に刺さったアルバムは山ほどあるのだ。
音楽友達と良く酒飲みながら話すネタ、無人島に持っていくならどのアルバムを持っていく?という話題。おもしろかったので記事にしました。のその13。
今回はUKインディー・ロックバンドのThe Kooksの2008年発売の2ndアルバム'Konk'に想いを馳せる。
2000sロックのアクモン世代のフォロワーバンドとしてシーンに登場したThe Kooksは、その秘蔵っ子ぶりをジワジワと発揮させた1stでキラリと名を馳せ、この2ndでその才気を永劫の輝きにする事に成功した。
世界的なポップアーティストの新作を抑え、全英チャート1位に輝いたインディー・ロックビックバンの集大成的傑作。
美しく洗練されたオールディーズチックなモダンロックアルバム、コンクは聞いたその一瞬だけのみならず後味で人の心に残り続ける絵画の様なアルバムだった。
今回はThe Kooksの'Konk'に想いを馳せる。
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www.footballsoundtrack.com
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The Kooks 'Konk'
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Konk
- ザ・クークス
- インディー・ロック
- ¥1900
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スタイリッシュでインディーなストリートの華
イギリス・ブライトンで結成し2005年デビューしたThe Kooks(ザ・クークス)。
イギリス政府直営のミュージシャン養成所的なカレッジで出会った4人組の2006年の1stアルバムが異例のロングランヒットを飛ばし、気づけばジワジワとアクモンを超える枚数を売っていたクークスは、英国ロック界の秘蔵っ子感満載でメインストリームに飛び出していった。
2ndアルバムの'Konk'はそんなスマッシュヒットの直後に制作された。
凄くモダンでスタイリッシュな風貌、でもどこか甘く擦れた空気が漂う、ストリートの華的な安酒の香りが漂うバンドイメージ。
自分たちに漂うそんな雰囲気が、アルバムのあちらこちらで花開くような燦めく良盤となったのだ。
The Kooks - Shine On
巨匠レイ・ディヴィスのコンク・スタジオで制作された事から'Konk'と名付けられたアルバムは殺人的に甘く支配力すらあった。
真夜中のロンドン、石畳の路地裏の空気はきっとこんな感じだ。
普段立てないコートの襟をカッコつけて立てて歩きたくなる。
時間も空気も包み込む、スピリチュアルなレベルの包容力すらある隙間なしの名盤なのだ。
まず、なんだこのギターの音は。
耳の奥の奥の心に近い所で振動まで分かる様な音色に、強烈なトリップ感も覚える。
濃密なヴィンテージな空気のフィルターがかかり、あっという間にロンドンのストリートの風景に包まれ、インスタかって程世界は映える。
眩いギターメロディーの流れは恐ろしく艷やかで甘い中にもキリッとしたクールさに微睡みながら目は冴える。
この凄みに恐れ入るタイプのギターは、英国ギターロックの宿命的なギターオリエンテッドの精神も感じ何とも心強い側面もあるのだ。
どこかアカデミックな雰囲気から感じるのは、間違いなく掛け算のサウンドデザインであるという事。
豊かな音は、潤いとツヤに満ち満ちていて、急に深度が高いドープにドリーミーな世界に引き込んでも鮮やかなまま。
ルークのソングライティングの幅の成せる魅せ方だし、アオハルな歌詞でもめちゃくちゃスタイリッシュでロマンチックで超良質な聴き触りを誇るのだ。
その声だけで芸術になる声質、そして確かな演奏力と歌唱力というレベルの高すぎるバンド。
簡単なものを難しく見せるんじゃない、芸術性を伴うから魅せられる。
天才的な才能をひけらかすのではなく、優しく柔らかい感触を残せるバランス感覚から聴きやすくもあって、わざとらしさナシの魅せる歌が自然に溢れているのだ。
1stよりもう少し夜が更けたような感触。夜に聴きたい。
それでいてメジャーでポップでどの曲も何度聴いても鮮やかにその時に映える普遍な芸術性を伴う。
何年も残る絵画芸術の世界の美しさそんな恒久的な響きを持っている。
陶酔し続けられる洗練されたオールディーズロック。
1st2nd論争も巻き起こるバンドではあるが普遍的なのはコンクだと僕は思うのだ。
ソングレビュー
'Always Where I Need To Be'
The Kooks - Always Where I Need to Be
最もアンセムらしい一曲。
優美さとラフさを半々で均衡を美しく保った聞かせるロックチューン。
美しすぎるファルセットと楽しげなギターのリズムに頬が上がる。
美的センスが目立つが、ドゥドゥドゥのコーラスが象徴的な眩しいポップネスこそ最大の煌めきの正体である芸術的なポップ・ロックソング。
'See The Sun'
The Kooks - See the Sun
このまま目を閉じて心地よい眠りにつけそうなジャジーなギター、一見幕開けには相応しくない様な独唱から始まるアルバムのオープナー。
選ばれた者しか出来ない歌い出しに歌声の中に閉じ込められる様に聴き入る。
その瞬間、爽やかに滑り出すインディーギターチューン。
オーガニックで優しいサウンド、ギュンギュンの華もキレもあるギター、ハンドクラップよろしくのポジティヴなグルーヴ、全てがバランスよく溶け合った鮮やかなオープナーだ。
'Do You Wanna'
The Kooks - Do You Wanna
アルバムのど真ん中でなるキラーチューン。
カクテル光線的なギターリフに目をくらまされつつ、次の瞬間には口ずさんでしまう超絶キラーなメロディー。
ダンサブルで、それだけでない重厚な美しい艶やかさ。
当時イギリスを席巻していた踊れるロック、それを自らのセクシーさと美しさで染め上げた代表的なナンバーだ。
'Mr.Maker'
The Kooks - Mr. Maker
こっちもアルバム屈指のポップチューン。
順風満帆のキャッチーなリズムは軽やかなステップを踏めそうなほど躍動感に溢れている。
グッドメロディーを軽快に爽やかに、それでも香るアーティフィカルな音の断片の組み合わせの火花が彼らの記名性になる。
ナイーブな聞き感触かと思えば強靭なギターグルーヴもお見事な一曲。
'Stormy Weather'
The Kooks - Stormy weather
重厚なベースリフから始まるロックナンバー。
チュンチュンのギターが花火の様に綺麗でアイコニックに浮かんでは余韻を残す。
軽快さはありつつもワイルドなドライヴ感は作品中唯一無二。
セクシャルなボーカルと暴力性の融和のバランスが完璧で、どこまでもエロい肌触りも彼らならでは。
'Sway'
The Kooks - Sway
こちらもシングルカットされてる代表的なロックバラッド。
メロディーをリードするアコギとドラマティックに鳴るエレキギターのサウンドは流麗で、合わさったサウンドの分厚さ、間違いなくガツンとくる獰猛な感触がある。
エモーショナルにうねる音の中で、ドラマティックに崩れ落ちそうでそのギリギリで輝き揺れ続けられる歌声が凄い。
'Love It All'
The Kooks - Love it all
超ドリーミーな一曲。
ザクザクのギターゆったりとしたグルーヴ、あまりにも優雅なギターの調べと特にボーカルがいい。
サビのLove It Allのリフレインは耳馴染みが抜群だしシンガーの本領を存分に発揮した強烈なパフォーマンス。
ウォーミングなサウンドの中に身を置き、類稀なる資質のその声を聞けば星空の下にいる様に綺麗な光景が浮かぶのだ。
無人島に持っていくイギリスの夜の空気
無人島に持っていくCDシリーズ第13弾はThe Kooksの'Konk'でした。
行ったことはない、けどきっとロンドンの夜はこんな感じなんだろう。
アカデミックで超絶的でもどこかストリートの匂いが馴染みやすい、普遍的なアルバムだった。
まだまだ紹介したいアルバムは一杯。
荷物が音楽でいっぱいになってもいいじゃないか。
それではまた別の記事で。