一生モノ最強の'Bサイド'アルバム
HI-STANDARDの活動休止以降、2004年から活動してきたKEN BANDも来年で15年を迎える。
ハイスタも完全復活を果たし、相対的にKEN BANDの意味合いも変わってくる中、バンドとして大きな’まとめ’に入る時期には適している。
多分普通のアーティストかバンドなら、ここはきっとベストアルバムだった。
KEN BANDの楽曲でベストを選べ、と言われればつまみなしで酒が2時間飲める。
ただ普通じゃないファニーなギフトをいつも企んでくれるのが彼だった。
オムニバスやコンピレーション・アルバムに提供した楽曲、メディアを限定して配信された楽曲、未発表になっている楽曲、KEN BANDのオリジナルの楽曲から心に残るカバーまで15曲と、今回新録になる5曲を合せたなんと20曲の彼らいわく’セルフコンピレーション’アルバムとして届けてくれた。
そもそも日本のパンクシーンにおいて最重要なバンド・人物で有り続けてきたカリスマによる珠玉のサイドトラック集という字面だけでもエゲツない破壊力なんだが、ファニーかつ挑戦的な試みで心を掴み実際に曲を聴いて完全に耳から離れない、という本人の言う’6.5枚目のアルバム’の内容。
普通に7枚目を、という声に、悪いなちょっと思いついたんだ聴いてくれよ、ってノリで数々僕らの中に大切な想い出になってる曲を生き返らせてくれた。
別に微塵も死んだと思ってなかった曲達だったけど、想い出の中に仕舞われるよりは、擦り切れるまで聴くのがきっとパンク流だ。
そういうアイデンティティーに魅せられ、ブレることなくこの最高なタイミングで最高な企みが届いた事を、自然と最大級に嬉しく感じているのだ。
日本のロック史・パンク史をしても重要な楽曲ばかり、まだ聴き込んで日が浅いがやはり最初にトラックを眺めて際立つ三曲がある。
Walk
2007年当時、解散していたHUSKING BEEのトリビュート・アルバムに参加した超名曲のカバー。
1996年のこの曲が入ったハスキンのアルバムはKENがプロデュースし、この曲に愛着が半端なかった様だ。
そういう’この曲を歌いたい!’という子供っぽい衝動こそ音楽的で、実にフラットにカバーされた名カバー。
同年代の友達でこの曲をKEN BANDの曲だと思っている奴も多いくらいライブでやってるし、原曲の味わい深いメロディアスなラインにパンクバンドらしいエッセンスの詰まったトラックに仕上がり、メロディーの美しさを超えるアグレッシブな衝動性は原曲とシンクロする部分もあってすげぇ格好いい。
Sayonara Hotel
さよならホテル feat.Ken Yokoyama / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA -short ver-
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRAのゲストボーカルとして参加した’さよならホテル’のセルフカバー。
歌詞も全て英語に、世界観も変えたストーリーを紡ぐ仰天のパンク/スカチューン。
スカパラのゲストボーカルという音楽界の殿堂入りみたいな楽曲を、大胆にもセルフカバーしたというトンデモなくすごい曲。
大人なスカパラと、子供のまま大きくなったKENのストーリーの違いが面白いし、これをKENのライブでも聴けるって思うと、また一味違う方向からも気分が高まってくる。
Soulmate
Tony Sly tribute by Ken Yokoyama「Soulmate/No Use For A Name」8/28/2012
でもやっぱりやっぱりアルバムの最後はこの曲だった。
そうだろうな、と思ってても、そうなると本当に心から嬉しい。
親友トニーへ向けたNo Use For A Nameの永遠のパンクチューンのカバー。
誰からも大切にされた美しいパンクバンドの曲を、こうして最強のバンドが歌い継いでくれる事が嬉しくてしょうがない。
僕らの何倍も優しい魂のこもった至高のカバーは、こっからノーユース聴き出したっていいんだぜ!とビッグな気持ちでこれからも鳴り続けるはずだ。
超強力な20曲
1曲目のこのアルバムの為の新録ポップ・パンクトラック、'I Fell For You,Fuck You'も。
Ken Yokoyama -I Fell For You, Fuck You(OFFICIAL VIDEO)
The Birth Dayのチバユウスケとタッグを組んだカバー曲'Brand New Cadillac'はゲリラライブをいきなりやってMVを撮った。
心臓止まる程格好いい。
Ken Yokoyama -Brand New Cadillac(OFFICIAL VIDEO)
その他も2004年結成当時のナンバーから武道館ライブに対する意気込みのナンバー、敬愛するパンクレジェンドSHAM69やSNUFFのカバー、はたまたメタルゴット・Judas Priestのカバーまで。
あるきっかけがあって、ふと世に出たり出なかったりした縁をつないだナチュラルなベスト的アルバム。
あの彼が15年やってくれれば、そりゃ想い出深い曲ばっかりだ。
それを死なせたくない想いは彼がきっと一番強くて、同じ方向を向いている僕らにも当然の如く刺さり、分厚い第0.5弾の大切なアルバムとして残っていく気がビンビンにしているのだ。
是非聴いてみて下さい。擦り切れるまで聴きたくなるはず。
それではまた別の記事で。