Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【今月の新譜】Jack White 'Boarding House Reach'を聴いた!【ジャック・ホワイト ボーディング・ハウス・リーチ】

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オルタナの奇才によるギターアルバムの傑作!Jack Whiteのソロアルバム'Boarding House Reach'を聴いたレビュー!

ジャック・ホワイトとは、The White Stripesのギター・ボーカルとして2000年代のロック音楽シーンを牽引したガレージロックリバイバルの中心人物であり、間違いなく現代で最も影響力のあるロックミュージシャン10選とかに確実に名を連ねる人物である。

ホワイト・ストライプスの他にもラカンターズやデッド・ウェザーというバンドでも活動し、ソロ・アルバムもいくつか発表していたが、いよいよ今年もドでかい人物が動き出したか、という印象の今回のアルバム。何しろデカイ人物なだけに期待がデカい。

ホワイト・ストライプスは凄いバンドだし、ラカンターズも大好き。

何よりギターの音に強烈な憧れを持ち続ける僕にとっては、重々期待したいアルバムだ。

ホワイト・ストライプスのギターが未来永劫残りそうな事も記事にしてたし、非常にタイムリーなタイミング。

www.footballsoundtrack.com

今回はJack White 'Boarding House Reach'に想いを馳せる。

 

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Boarding House Reach

Boarding House Reach

  • ジャック・ホワイト
  • オルタナティブ
  • ¥1900

 

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ボーディング・ハウス・リーチ

ボーディング・ハウス・リーチ

 

 

2018年というカオスを、ギターで鳴らした脅威の音

2000年以降のギタリストとして世界最高の評価を欲しいままにするジャック・ホワイトは天才というよりは奇才的で、その卓越した技量におもねらず、風変わりで一線を画したアイディアを独創的なタッチで演奏するタイプのギタリストだ。

ホワイト・ストライプスを経てロック界を席巻し解散後も2012年と2014年にソロアルバムを発表。

クレイジーかつアーティスティックなギターの分厚いサウンド。

その芸術性と独創性を高く評価された作品は、ジャック・ホワイトのソロ作品らしく長らく評価を受け続ける作品となっている。


Jack White - Lazaretto

 

言うまでもなく、現代のミュージックシーンはダンスそしてヒップホップが最前線の潮流を闊歩する。

ロックはその中で自分たちのフォルムをどう時代と投影するか、或いはそれすらも反抗的なエネルギーにして自我を貫く音を出すかを迫られている。

そういう中でダークで唯一神的なギターヒーロー、ジャック・ホワイトが鳴らした今回のアルバムは、2018年に鳴るべきギターの音が崇高で特異な形で結実した作品だと言っていい。

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アナログな音創りにこだわり続け、生の音のミニマリズムの中で鮮烈に多彩なキレを放ってきた彼のアイデンティティーを、今回は放棄しPROTOOLを使ったデジタルな編集を実施。

更にはヒップホップやダンス系のサウンドを作る演奏者と密にコラボし、今最もモダンなビートやメロディーを取り入れる。

時代に逆行はせず、先取りもしない、今ここでギターはどう鳴るべきなのか。

必要だ必要でない、ではなく根底にギターサウンドはありきで、試行錯誤し音へのアプローチを変えてまで鳴らしたギター。

デジタルな音かと聴き間違うような聴いたことの無いような歪み。

エレクトロな世界を飲み込む様などストレートな生音の圧巻のソロ。

間違いなく独創的であり、同時にヘヴィメタルのギタリストが同じフレーズでもどこか誰のギターかわかるような記名性もある。

明らかにジャック・ホワイトのギターであり、他の誰にも再現できない様なレベルで、突き抜けたギターをモダンな音と共存しつつ、最も大きい存在感で鳴り続ける。

まさに今、ジャック・ホワイトが先駆者として再び大きな可能性をロックに与えた瞬間かもしれない、圧巻のアルバムだった。

 

ソングレビュー

いくつか心に刺さった曲をレビューします。

一つ一つが違う作品の曲の様な、抜群の幅。

その根底にギターがあるという幸せを噛み締めながら楽しみたいのだ。

 

Over And Over And Over


Jack White - Over and Over and Over

ホワイトストライプスを彷彿とさせると思ったら、実際にその時代に書いていた曲らしい。

このアルバムの中枢でなるギターアンセム。

キャッチーなフレーズを妖しく繰り返し、トリッキーながらロックの魂を揺らす様なギターが終始エロい。

デジタルなエッセンスも纏いつつギターの力でねじ伏せられる、こりゃ違う、と普通じゃないシンプルなパワーを見せつける彼らしい一曲。

 

Connected By Love


Jack White - Connected By Love

社会的な内容も入る賛歌的なアンセム。

力強く拳を上げそうな聖歌のような空間ごと震わせる音の広がり、スピリットがこもったジャックの声は心を震わせる振動圧がある。

ブーミーでエレクトロな音を下地に、ゴスペルのように芯の強いボーカルで荘厳に愛を叫ぶ。

聴いたことのない種類のサウンドのギターソロはこの世で今ここで鳴っていることに不思議さすら覚える幽世感。

 

Hypermisophoniac

Hypermisophoniac

Hypermisophoniac

  • ジャック・ホワイト
  • オルタナティブ
  • ¥250
  • provided courtesy of iTunes

強烈にヘヴィなデジタルなサウンドと世界観。

ピコピコしたエフェクトの中ピアノやベース、ドラムの生音が確実に息づき密かにじわじわとロック的な瞬間が迫る快感がある。

ギターソロ・ベースソロの香しさはいい、その瞬間に確かに主役として奏でられるに相応しい只事でないうねりが曲を覆っていくのだ。

 

Respect Commander


Jack White - Respect Commander (Audio)

ブレイキーなビートのダークでポップなナンバー。
超高速ベースラインにランドマーク的にリズムよく高鳴るギターがアイコニックで、それに加えてデジタル的なジャングリーさが不可思議さを深くする。
そんな冒頭のメチャクチャな世界観から、ジャックのスペイシーなボーカルで世界を回転させていく。
デジタルな音にも敢えて寄せてそれを歪みで巧みにねじり上げ、臨界点スレスレのギターの音はアルバムでも最も高鳴る一瞬かもしれない。
永遠にこの曲を繰り返す様な終り際も、戦慄が走る。
 

Corporation


Jack White - Corporation (Audio)

大振りなリフで始まるほぼインストな一曲

スクラッチの様なギタープレイが重なるアナログでデジタルを踏破する凄い高揚感。

何故か南国的なリズムの中、クレイジーに渦巻き続けるギターサウンドの明るい狂気。

 

Ice Station Zebra


Jack White - Ice Station Zebra (Audio)

グルーヴィーなブレイクビートがめちゃくちゃカッコいい中にギターが鳴ってジャジーなピアノが踊る。

ヒップホップのフリーキーなビートで小刻みにドラムを振り回し、ライム的でもジャックらしい妖しさを失わないラップを事も無げに操るのだ。

デジタルとアナログのせめぎ合いの奇妙な音空間を、ジャックのラップが切れ味鋭く切れ込んでく妖しく快楽的な一曲。

 

Why Walk A Dog?


Jack White Live “Why Walk a Dog?” at Warsaw

ダークでメロウなナンバー。

凄く怖いライブ映像。

アシッドで孤独感漂うサウンドデザイン、ブルージーで狂気的なジャックの声。

底知らずの闇の濃さとともに、零れそうでこぼれない絶妙な心のバランスで立たせてくれる様な、絶え間ないギターの波は危険に心地いい。

 

Humoresque


Jack White - Humoresque (OFFICIAL 2018)

ギターとピアノの優しい音はクラシックのカバーで、ドヴォルザークの一曲だ。

緩やかな大きな流れは損なわずに徐々に大きくなるピアノサウンドのうねり、それと相反してノスタルジックでアコギの旋律が素朴にこんなにも奥深く響き、優しいままでも途方もない存在感を醸す。

モノクロの映画の様な美しければ美しい程儚い声も、このメロディーに尽くあうのだ。

 

これからもこのギターは鳴り続ける

途轍もなく妖美で、クレイジーに鳴らすギターの音は、フォルム的にモダンな仕様でも、どこか魂の篭った眩しさがあった。

どこまでもストイックに音を磨き上げ、様々な音と共存共栄するだけでなく、畏怖されるようなギターの音は、きっとギターでしか未来永劫出せないものなんだろう。

ジャックを見ているとそういう悪魔的な魅力すら漂ってくるのだ。

これは是非、今あらゆる人に聞いてほしい音楽である。

 

それではまた別の記事で。