無人島に持っていくならどのアルバム?
2007年と2009年にリバースの個人名義で発売されたこのアルバムは、1992年から2007年までの間、リバースが溜め込んだ音源をまとめたデモトラック集。
超ラフにナチュラルすぎる魅力が詰まった一枚は、もちろんファンにはお宝の一枚なのだが、それ以上にメロディーメーカーとしてのリバースの凄みが滲み出るし、ラフな眩しさは時折神々しさすら感じる空想理想郷的な一枚でもある。
そのグッドメロディーっぷりはファンならずとも”おっ”と耳を傾けたくなるグッドチューン揃い是非聴いてみて頂けると幸い。
それでは行きます。
Alone: The Home Recordings' 'AloneⅡ: The Home Recordings'
iTunes ダウンロード
amazon 購入
Alone: The Home Recordings of Rivers Cuomo
- アーティスト: Rivers Cuomo
- 出版社/メーカー: Geffen Records
- 発売日: 2007/12/18
- メディア: CD
- クリック: 12回
- この商品を含むブログ (22件) を見る
Alone II: The Home Recordings of Rivers Cuomo
- アーティスト: Rivers Cuomo
- 出版社/メーカー: Geffen Records
- 発売日: 2008/11/24
- メディア: CD
- この商品を含むブログ (5件) を見る
オルタナティブロック界に燦然と輝くキャリアを誇るパワーポップバンドWeezerのフロントマン、リバース・クォモは、同時に稀代のソングライターでもある。
メロディアスでフックの効いたパワーポップを次々と作り出し、ナードで泣ける激しいアンセムは独自の深いファン層の心をワシ掴みにし、そこのみならず変幻自在なロックミュージックで数多の名曲を作りロック史にも名を残すバンドそしてサウンドメイカーとなった。
そのリバースのソロ・デモトラック集と聴いたらファンなら飛びつかずにはいられない。
Weezerの活動の狭間に発表されたこの2枚は、1992年のWeezer以前から2007年までに撮りためた音源を、選りすぐって出来た。
陽の目を見なかった宝の山は、チープでナチュラルなグッドチューン揃い。
表に出てライブでビルドアップされ、輝きを放つヒットチューンとは裏腹に、原石のままとっ散らかったガレージ感が秘密めいてて素晴らしいのがデモなのだが、今作はまさにそういう原初的衝動感すらあるシンプルさラフさで占められる。
必殺のパワーポップサウンドも随所に感じるが、幅も深みも様々。使ってる楽器もバラバラだし、音質や曲作りのラフさもバラバラだ。
だからこそこの凸凹が楽しい。Weezerのメロディーのピースを感じる事もあれば、もっと変幻自在なリバースのオリジナリティに触れる事のできるサウンドデザインもあるし、これ何でアルバムに入らなかったのってクオリティ抜群のアンセムすらある。
そういうラフだからこその音楽的豊潤さは、なんとも楽園的で神秘的さすら感じる。
色んな斥力が付く前の原初の鳴り響きは、とても味わい深いし、Weezerを剥いて剥いて行った時の音がこんなにも穏やかだった事に気付いて、なんだか報われた気がして心は晴れ晴れしいのだ。
ソングレビュー12
'Alone: The Home Recordings'
1.Lemonade
デモらしい割れ気味でノイジーな音が、暖かい柔らかい抱擁感を創りだし、穏やかでゆったりと時間が進むその陽の空間の中心にいるリバースの魔法的なトラック。
必殺のパワーポップギターが徐々にフックを帯びるサウンドメイクも、突発的でとても新鮮。
ラストのバンドサウンドの高鳴りにウィーザーを感じるのもちょっと嬉しいところ。
2.Buddy Holly
Weezerの1stブルーアルバムの代表曲、バティーホリーの別録版。
より篭ったサウンドをヘヴィでスモーキーにゆったりとしたスピードで、その中を自由に好き放題楽しそうに歌うリバースの躍動感が際立つ不可思議な高揚感。
じっくり聴くと制御しないフリーダムな演奏に魅せられて、原曲聴くとこっちも一回聴きたくなるような秀逸なアレンジだ。
3.Longtime Sunshine
今作屈指の美しいバラード。
ピアノの旋律が力強く、しっとりとしたグルーヴで、まるで大きな夕陽が沈んでいく様な不変なドラマチックなメロディーを漂わせる。
紡ぐように歌うリバースの声は、美しさで聞く側を圧迫するほど美しい。
4.Blast Off!
この一曲に虜になった。
一撃必殺のディストーションギターリフをただただ繰り返し、”あ、これさえあれば何もいらない”と再確認せざるを得ない音塊をぶち当てられる。
ヘヴィな音をスイスイと泳ぎきる、アイコン的なリバースの声も、最高なのだ。
5.Lover In the Snow
ロウに歪んだギターリフに乗っかる手拍子、そしてクリアなリバースの声。
穏やかに凍てついた冬らしいロックチューン。
ザラついたギターに呼応するみたいに咲き乱れ、あちこちに飛び回るボーカルが、雪の中を駆け回る犬を見ているようなキュートさを帯びる。
歪んだ音にクリアなリバースの声の対比は、凄く綺麗だ。
6.I Was Made For You
'AloneⅡ: The Home Recordings' レビュー
7.I Was Scared
8.My Brain Is Working Overtime
9.The Prettiest Girl In The Whole Wide World
10.Can't Stop Partying
アルバム’ラディチュード’の同曲のデモ版。
アコギにリバースの声だけという、まさにデモな一曲。この手探りな感じの味わいはファン冥利に尽きる。
原曲よりもダークでマイナー、なぜかこっちの方がウィーザーっぽい印象もある。
11.Paper Face
ささくれたまま突っ走るインディーギターロック。
渦巻いて轟く真っ黒なつむじ風みたいなインディーギターが、つんざくようなリバースのシャウトで突風となって襲ってくる。
アンダーグラウンドな迫力と少しの狂気を孕んだグランジパンク的な名チューン。
12.I'll Think About You
ラストを飾るハッピーなグルーヴのキラーソング。
柔らかいギターメロディーとハートフルなビートに、飾り気ない優しいリバースの声。
ここまでポップネスを振りかざすのも珍しいけど、それもこのアルバムならではの特別な多幸感に包まれる。
無人島に持っていく大量のCD達
以上いかがでしたでしょうか?
’すっぴん’のリバースはもっともっと素朴で、カラフルでもどこか淡い眩しさに包まれたトラック達は、一生の宝物になりえるのだ。
今後もたくさんこのシリーズはやっていこうと思います。
荷物が音楽でいっぱいになってもいいじゃないか。
それではまた別の記事で。
【2018.1.3 リライト】