Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【忘れたくない選手】ルイス・フィーゴに想いを馳せて−嫉妬の炎を受け止めた世界最高の裏切り者−

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禁断の移籍を果たした銀河系の10番、ルイス・フィーゴに想いを馳せるプレーヤーレビュー

 
世界のフットボールは季節とともにあっという間に巡り、終わったと思ったら新しいシーズンが始まりつつある。
いつの間にか始まっている感が毎年増しているのは慣れなんだろうなと感じるオジサンの昨今。
オフシーズンを賑わせるのは移籍市場だった。
 

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行く者来る者その噂、そして実際に行った者来た者は、ファンに哀しみと夢をもたらせた。
 
その中でも近年ビッグニュースとして駆け巡ったのが、バルセロナからパリ・サンジェルマンへ移籍を果たしたネイマールだった。
世界最高のパートナー達に別れを告げ、現在のフットボール界で最も価値のある男は、巨額な資金で欧州制覇を狙う野心に溢れたチームの王様として迎えられた。
その金額は200億だとか、とんでもない事を言っている。
各メディアははてなのお題のように200億で、ネイマール1人の値段で何が買えるか何が成せるかを発表しあっていた。
 
近年のフットボール界のニュースでは最も大きい衝撃だったろうネイマールの移籍金。
だが、移籍に関してだけで言えばもっとすごいストーリーを僕たちは知っている。
 
もっと海の向こうが遠かった時代、ピンと来てなかった僕に海外サッカーの本気のアツさを感じさせた、カンプノウでのコーナーキックのシーン。
 

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バルセロナからレアル・マドリードへと”禁断の移籍”果たしたルイス・フィーゴの凱旋地合。

コーナーキックを蹴るフィーゴにはペットボトルやらビンやら缶やら豚の頭まで投げつけられた。

 
ネイマールがなんだ。レアルに行くよりはましだ。
 
そんなバルサのソシオ名誉会員のスペインのおじちゃんが言いそうなセリフを思い浮かべて、また1人忘れたくない選手に今日は触れようと思った。
ルイス・フィーゴの移籍がなぜあれほどの事件になったか。
レアル・バルサ云々の前に、それは彼が当時最も止められない世界最高のプレーヤーだったからに他ならないのである。
今日はそんなルイス・フィーゴに想いを馳せる。
素敵な暇つぶしになれば幸い。

 

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ポルトガルの宝は、禁断を冒し銀河系の10番に

1972年のポルトガル生まれのフィーゴは、幼少期から医者を志す程の秀才だったらしい。
それでも国中で盛んなフットボールと出会った彼は、11歳でポルトガルリーグの名門スポルティングCFと契約。
17歳でプロデビューするとわずか20歳の時にはリーグMVPを獲得し、ポルトガルを背負って立つ世代のNo1プレーヤーとなる。
この頃に出場したU-21欧州選手権で優勝を果たしルイ・コスタらとともに、ポルトガルの黄金世代の顔として欧州そして世界へ名前を轟かす。
欧州のビッククラブも彼に目をつけて、稀代の才能を手にしようと彼の元へとオファーが殺到し、フィーゴは世界トッププレーヤーの階段を順調に登りだした。
 
 

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1995年、セリエAへの移籍が決まりかけたフィーゴだったが契約問題のゴタゴタにより消滅。
その隙をバルセロナが逃さず、フィーゴはバルセロナの一員となる。
グアルディオラやラウルドロップなどを擁したクライフ監督率いるドリームチーム解体直後のシーズン、世代交代を進めるバルセロナの移籍戦略においてフィーゴ獲得はまずマストで必要なタスクであり最大の功績だった。
その他にも国内外からスターを収集し、’怪物’ロナウドやデラペーニャ、コクーにリバウド、クライファートなど数々の名手が共演。
その中でもフィーゴは右のウィングのポジションを不動のものにして、ドリームチーム以後のバルサの象徴的存在となり、当時ドリブル=フィーゴという図式が成り立つほどの選手となった。
CLこそ逃したものの、在籍中のリーガ、カップ戦で抜群の成績を残し、2000年には欧州選手権での活躍もあり欧州最優秀選手賞を獲得し歴史にも名を残すレベルの選手の仲間入りを果たした。
そして彼が禁断の移籍を決断したのも、まさにその絶頂期だったのだ。
 

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レアルとバルサというフットボール界で最も情熱的なライバル関係は、時に大きな事件にまでなる。
そのアツさ故、そのクラブ間での移籍はクラブやファンに対する最悪の裏切り行為とされるのだ。
過去にシュスターやラウルドロップ、エンリケなどの選手がレアルとバルサ間で移籍していてその度に大きな憎悪を巻き起こしていたが、フィーゴの場合は過去に類をみない裏切り劇という事件となった。
後のコーナーキックの事件でもそうだし、バルセロナでフィーゴがやってたサイドビジネスの寿司屋が襲撃された、なんて話まである。
フィーゴのコーナーの際には盾を持った警官隊が配置されるのがおなじみの光景となった。
噂程度の確執はあれど移籍を決断させるものでもないし、脂の乗ったキャリア最盛期、中心で不動の選手として戦術的にも大きな役割を果たしていたフィーゴに不満はない様に思えた。
本人の口からも決定的な理由は今も明かされていないし、「バルセロナにとって僕は悪者でいい」と卑下しそれ以上の議論を避けている。
それでも後に「移籍を後悔はしていない」と胸を張れるのは、レアルで築いた銀河系がかけがえなく輝く煌めきをもっていたからに他ならない。
 
ラウルやロベカル、ジダンにロナウドという時の最高の選手たちが一堂に会する銀河系軍団を築き、その中でも10番を背負った。
バランスを失い安定して長続きはしなかった銀河系だったが、短期間の間にリーガそしてCLも制覇し、史上にも残る圧倒的な輝きを残した。
ゲーム画面でも見ているかのようなパスワーク、ボールを持ったかと思えば極上の個人技、平然と行われる超技術の粋を極めた様なゴールの数々。
フィーゴの世界一のクロスからロナウド、ラウルの世界一のゴールというシーンを何度も何度も見た。
事実フィーゴは近年メッシに抜かれたものの、リーガでの最多アシスト記録を保持していた事からも、世界最高の攻撃陣の最後のピースを埋める重要な役割を果たしていたと言える。
更にはゴール数もレアル時代の方が多い事を考えれば、よりピッチの広範囲に影響を及ぼした高次元の活躍を見せ、それは移籍の成功を意味していると考えていいだろう。
すなわち、フィーゴは禁断の移籍をするだけでなく、成功させていたのだ。

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EURO2004での失意の準優勝もあり、銀河系の解体、凋落と共にフィーゴはインテルへと移籍する。
キャリアの終わりも見えていたが熟練されたプレーはまだまだ一級品でセリエA4連覇も経験。
監督とのイザコザもあり終の住処を変える事も考えたが、新監督となった同胞モウリーニョには若手の手本になって欲しいと依頼を受け、穏やかで価値のある晩節を過ごし2009年に引退を決意したのだった。
 

世界が注目したプレースタイル

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冒頭にも触れたコーナーキックのシーン。
レアル加入後、初めてのバルセロナのホーム、カンプノウでのクラシコ。
左サイドからのコーナーキックをフィーゴが蹴る。
最も観客に近い位置でボールをセットした瞬間、興奮した何百人単位という観客がフィーゴの元へ詰め寄る。
ありとあらゆる罵詈雑言が浴びせられ、フィーゴのグッズや豚の頭が投げ入れられた。
何十人という警官隊がバリケードを作り、何分も試合が中断した。
まだ整っていない銀河系で、意外とキッカーがいないのもあったが、フィーゴはコーナーフラッグから離れる事はなかった。
責任を果たすかの様に、ただただ暴徒を見つめながら、哀しみも混じっているがそれでも凛とした姿は、絵画の様に美しくも感じた瞬間だった。
 
パニック状態に陥ったカンプノウには様々な感情が入り混じっていた。
怒り、哀しみはもちろん、ただ騒ぎたいだけのフーリガン的な発想もある。
でもフィーゴのプレーを見ていると、そのプレーヤーを自チームが手放してしまったという嫉妬の想いが最も色濃いように思ったのだ。
 


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敵陣奥深いサイドを主戦場とするウィング全盛の時代に置いて、世界最高のウィンガーでありつ続けたフィーゴ。
低めの姿勢から身体を上下しながらリズムを取り、対峙するDFのタイミングを外す。
同じ事をしているのに何故か止められない類の、物理的ではない魔法的なドリブルは彼の大きな武器の一つだった。
スピードってよりはテクニカルにキレよくいつの間にか重心の逆を付く。それでスルスルと危険なエリアまで入っていくのだ。
シザースも独特な使い方で、スピードに乗るという技ではなく、タイミングを外し眩惑するような彼ならではのものだった。
クラシカルで機能的で若くして熟練の技を持っていたし、それはキャリアを重ねるにつれてさらに奥が深くなっていった。
ドリブラーとしてだけでも歴代のランキングに入ってくるレベルのドリブルを持っているが、フィーゴの技はそれだけに止まらない。
 
 
ドリブルに隠れがちな抜群のキックセンスこそフィーゴの真骨頂だ。
だからドリブルも止められないという相関関係にもなる。
空間を繋げるようなピンポイントのクロスは支配的で、ほんの僅かなスペースでも合わせられる正確さがあったし、インサイド気味に滑らかにカーブを描く軌道は対応するDFが予測できないものだった。
そのクロスがあるからこそキックフェイントが鮮やかに決まるし、距離を開けてしまえば正確無比のクロスの餌食になる。
 
そのキックがうまいってことはシュートもうまいってことだ。
縦ばかり警戒しているとあっさりと中にカットインされ、左足で弧を描くシュートでファーサイドを揺らす。
或いはどちらも警戒しすぎてエリアの45度の位置にDFが立っていると、それをブラインドにキーパーのニアサイドをインステップでぶち抜いてくる。
どれもとんでもない技術なのだが、それを平然と選択できるセンスがフィーゴにはあった。
 
数々の選択肢を持ち、そのパターン一つ一つの技術レベルが高すぎて全く対応できない。
創造性に満ちたファンタジスタ的ウィングプレーヤー。
それが世界が焦がれたルイス・フィーゴという選手だった。
 

世界を魅惑した裏切り者

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禁断の移籍というイメージで今回フィーゴを思い出したが、思い起こしていけば彼のプレーが鮮明に目に浮かぶ。

僕がどっちかって言ったらレアルの方が好きだからそう思うのかもしれないが、その事件を上回るプレーのインパクトがあった。

この移籍は良かったように思うし、一生忘れることはないだろうとも思う。

すごい移籍なんだとは思っていた、そしてその後のコーナーキックの光景で衝撃的に意味を理解し、更にその選手が見れば見るほどめちゃくちゃ巧い。

そういうストーリーの元、忘れることのできないフットボール界の夏の出来事は鮮烈に脳裏に焼き付いている。

 

【Football soundtrack theme Luís Filipe Madeira Caeiro Figo

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