Hi-STANDARD "The Gift Tour Fainal inさいたまスーパーアリーナ" ライブレポート
2017.12.14。さいたまスーパーアリーナ。
10月にリリースされたHi-STANDARDのアルバム"The Gift"のアルバムツアーのファイナルライブに行って来た。
パンクロックの熱量と自由を謳歌し、過去も現在もそしてきっと未来も彼らを目の前で見れる幸せを噛み締めた一日。
世代もアリーナのエリアも取っ払ったハッピーでパンクな夜だった。
ライブレポートをしたためましたので、是非聴きながらご覧頂けると幸いです!
以前までのソングレビューはコチラ
マキシマムザホルモンからハイスタへ
10月から行われているこの"The Gift Tour"は全14公演で日本各地でライブハウスとアリーナの2つの会場で行われてきた。
12/14のこの日のライブで最後。
各公演で対バンで数々のバンドと共演してきたが、最後ファイナルの対バンはツアーの話が上がった時、最初にハイスタからホルモンに声をかけたらしい。
そんな事すらネタに、もはやMCというかフリートークの域で喋りまくる。
数々の爆笑を取り、その笑顔のまま攻撃的に激烈なハードコアを鳴らし首を振らせる。
バカバカしい位の情熱は、数々の爆発とともに会場を最高潮のボルテージにキープし続ける。
彼らがキッズだった頃、アングリーフィストのツアーでハイスタと撮った写真がビジョンに映し出され、その時に恒岡にメガネを貰う約束をしたけど果たされていないとダイスケはんが語り笑いを取る。
そんな冗談を言える位置にまでホルモンが居ることと、更に同じステージにハイスタが立つという考えられなかった奇跡を、噛み締めつつ痛快な笑顔にする彼らのステージは、最強の対バンとしてハイスタでなければ喰われていたと思える場だった。
ホルモンの余韻を残しつつ、ハイスタを今かと待つ時間。
60-70sのクラシックなポップ・ロックがかかる会場、ビジョンには会場の様子をカメラが抜き映し出され、笑いが起こったり歓声が上がったりする。
彼らの復活のツアーという事で、ライブハウスだけでなくアリーナでも公演をする今回のツアー。
数々のフェスで証明されているようにアリーナでもハイスタのパンクは機能し衝撃を生み出すことが出来た。
今この新しいハイスタの姿で、もはやアリーナでライブハウスの様に鳴るパンクは、少し次の次元に行っているかのような気がしていた。
ただ、昔のままでハイスタはツアーはしない。必ず何か面白いことを引っさげてここに立つはずだ。
そう思いながら、暖まった空気の中、いつでも火をつけられる笑顔に溢れた会場を眺める。セキュリティースタッフの動きが慌ただしい。ハイスタまではもう少しだ。
Hi-STANDARD 開幕
暗転とともに馴染みのSEが流れる。
全員白のTシャツで揃えたハイスタの3人がステージに姿を現す。
高揚しつつもその緊張感にも慣れた姿、でも少しファイナルを噛み締めている様な表情だ。
最初に一言言わせて、と難波がアルバムのギフトってのはハイスタからリスナーへのギフトって意味だけでなく、例えば時代とか期待とかそういう目に見えないモノがハイスタへ与えてくれた授けものであると語る。
どっちかがではなく、僕らとハイスタがその贈り物にありつけた。
想いをのせた1曲目はそんなアルバムのタイトルトラック"The Gift"。
Hi-STANDARD -The Gift(OFFICIAL VIDEO)
一音目から落雷のようなギターが鳴り、とてつもない爆音で奔る。
オープニングトラックにふさわしい飛躍的に鼓動を上げるビートに会場が渦巻いていく。
初期衝動的に身体を揺すられ、鮮やかなメロディーが同時に押し寄せる”ハイスタ的瞬間”溢れた新しいキラーチューンに、夢みたいな光景でもカチッとピントが合って目の前の3人の姿を身体で感じられるのだ。
立て続けに2曲目"Growing Up"へ。
Hi-STANDARD - Growing Up [OFFICIAL MUSIC VIDEO]
新旧立て続けの選曲となった、特別な輝きを初期の放つキラーチューン。
爆音に耳が慣れ、その爆音の意味が理解できる怒号の様なシンガロング。
何万人が一人残らず歌う音にぶつかっても負けず鳴るパンクサウンド、アリーナに対するパンクの答えの1つがこの爆音なのだと思った瞬間だ。
サビの大合唱は、誰もが心に秘め閉じ込めてしまっていた蒼いエモーションを、ステージの3人と共に炸裂させた感動的な光景だった。
それを生み出すのも、僕らの声と彼らの音が弾けて混ざる巨大な音空間の壮大さによるものだ。
3曲めは"All Generations"。
Hi-STANDARD -All Generations(OFFICIAL VIDEO)
外は桁外れに寒い12月だが、トロピカルなパンクサウンドが温度を上げ、季節感すらもぶっ飛ばしパンクの楽園を作り上げる。
5曲目は"I Know You Love Me"。
メロウなギターから入り、その艶やかさを纏いつつ軽快に跳ね上がるメロコアサウンドのニューアルバムからのナンバーだ。
縦横無尽なセットリスト、そのファニーな企みに意表を付かれる。
そういう”何か面白い事を”という思考は常にハイスタが唯一の存在だった理由でもあるんだと、ライブの中でもそれを実感する瞬間。
今回の公演のアリーナはエリア分けされたブロックを柵で仕切られ、そのエリアは事前に公開されずチケットに書いてあるアルファベットが当日どのエリアか分かる仕組みだった。
当日まで予期できないポジションだった困惑もあったのは事実で何か様子を見ながらハイスタを見ている人もいた。
「左の後ろのブロックいいね」と難波が急に言い出し、逆に「前列中央こんなもんかよ!
」と煽る。
こういうアグレッシブさも彼ららしい、ハッピーなだけでなく攻撃的なパンク精神を忘れてはいけないのだ。
「ここに来れなかった人もいるんだぜ?」と心を掴む一言と共に、その分もここだけじゃない繋がりも心に刻みながら遊ぼうと、6曲目は"Dear My Friend"。
フレンドリーな親しみ溢れるサウンドが眩しくキラキラと光るメロディアスな輝きは、そんな見えない絆を歌う、ここだけじゃないスケールで全てを包み込む優しさを帯びて今限りなく美しく響く。
割りと長めのMCに入る。
難波の子供がケンの真似をして、ツバを吐くという話題に会場が笑い包まれる。
良くないことかどうかは置いといて、そういう学校では教えてくれない事を教えてくれるのが道(ストリート)だと、ケンの発言を引き合いに出してイジる。
もう彼らで盛り上がってるのをただただ見ている至って普通の会話なのだ。
バンドの良い部分というか、もうバンドを超えたバンドというか、単に大人になっただけではない自然な親しみが感じられるやりとり。
それを何となく見てしまえるカリスマ性もそうだし、それを感じさぜずと同時にバンドの中にもバンドと僕らの間にも何も境目のない空間がいつの間にかできあがっているのだ。
子供の話から派生して(彼らはお○んちんの歌だと言っていたが)7曲目は"Hello My Junior"
コミカルでパンキッシュなフレーズが溢れ、"Fuwa Fuwa"のコーラスに会場も次々と踊りだした。
次第に観客もこの夢の様な一日にピントが合ってきたことを、フロアにいると実感する。
一度トチったがケンの"1.2.3.4!"の掛け声で始まる8曲目"Glory"で更に会場は爆発する。
弾丸の様な疾走感に、彼らのエッセンスが漲りまくる必殺のショートチューンに、地軸が歪むほどのモッシュが巻き起こる。
ケンも笑いながらツバを吐く。
タイトなモッシュの中でもエネルギーをメロディーに乗せて一人一人の心を更に突き動かせる、その無敵感を纏えるこの曲、僕は一番好きなパンクチューンだ。
キラーシューンが続く9曲目"Close To Me"。
「ずっとずっと近くにいるぜ」と、何度も何度も僕らを安心させる様に、スウィートな言葉をエッジ立てて心に刻みつけてくれる。
流麗かつキレのあるパンクサウンド、ライブ中盤にもってきたキラーチューンに、数々の笑顔と涙が交錯し感情があらゆる所で溢れ出す。
それぞれがそれぞれ、一曲一曲にかけがえのない想い出を抱えているのだ。
どうしてもドラムのツネがやりたいことがある、と難波とケンに時間をくれという。
サッカー日本代表のチャント"バモ!日本"を何故か要求するツネ。
埼玉スタジアムと化した様な観客の叫びが、ツネのドラムでビシっとリズムが合う。
難波がベースを、ケンがギターを加え、サッカー好きで30年生きてきたが、最もロックなチャントをスーパーアリーナで聴いた。
難波が「ツネちゃん聴いてないよ」ケンが「これエアジャムの時にやりたかったんでしょ?なんで今やるの?」と笑いながら突っ込むなど彼らのキャラクターも見えた最高の幕間だった。
そこから更にインストの名カバーに。10曲目は"Pink Panther Theme"
Hi-Standard - Pink Panther theme [HD]
ツネのシンバルから、妖しいサウンドに包まれたピンク・パンサーのテーマが流れる。
ジャジーなベースに、チャカチャカとリズムを付けるギター。
骨太で魅惑的な演奏力。
圧倒的に魅せられる時間で何度も何度もキメつつ、次第に熱を帯びパンクサウンドに。
音速のギターとドラムと、流麗なベースメロディーに、彼らのロックバンドとしての力を魅せられた貴重な時間だった。
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