Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【映画レビュー】ブラウン管の向こうから ’ナイトクローラー’に想いを馳せる【NIGHTCRAWLER】

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ブラウン管の向こうから届く絶妙な映画たち

映画を観る。

映画館ではなく、家で。

レンタルDVDでもオンデマンドもなく、テレビ放送で。

テレ東の午後を始め、BSで深夜やってるのを撮っといて後で見たり、金曜ロードショーとかを撮り貯めたり。

ブラウン管の向こうから届く絶妙な映画たちのレビュー第5弾。

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今回は2014年の映画「ナイトクローラー」を観た。

事故や犯罪の瞬間のスクープ映像を専門で狙うパパラッチ通称’ナイトクローラー’。

アメリカでは倫理的な観点から深刻な社会問題になるほどの題材を敢えて映画の脚本にし、アカデミー賞脚本賞にもノミネートされた話題作。

前にも取り上げたコラテラルと同じく夜のロサンゼルスが舞台。僕が好きなのかもしれない、ロサンゼルスの夜にいつか行きたい。

ダークな成功物語的なストーリー展開も凄く引き込まれたが、何より主演ジェイク・ギレンホールの怪演に衝撃を受けた。

ブラウン管の向こうから史上、ロサンゼルスの夜史上最高傑作のナイトクローラー。

ブラウン管の向こうから届く映画と音楽に想いを馳せてその5。

素敵な暇つぶしになれば幸い。

 

前回までのシリーズはコチラ

www.footballsoundtrack.com

映画概要


映画『ナイトクローラー』予告編

 

2014年公開のナイトクローラーの監督は脚本家として名を馳せてきたダン・ギルロイ。

今回が初の監督作品でもちろん脚本も彼。

ナイトクローラーを題材に社会の悪をダークに描写するストーリー、登場人物の教典的なセリフ、テンポのいい展開。

凄く重厚なんだけど途轍もなく見やすいし、ズシッと心に残る。

 

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主演を務めるのはジェイク・ジレンホール

映画一家に生まれた彼は個性的実力派俳優として名を馳せる。

もともと演技の幅に定評があり、名作’ブロークバック・マウンテン’でアカデミー賞助演男優賞にノミネートされ、名実ともにトップアクターになってから衝撃の代表作になったのがこの’ナイトクローラー’だ。

脚本に感銘を受け、プロデューサー的なポジションにもついて助演のオーディションには本人が読み合わせで参加し、本人も12kgの減量を果たし撮影に入る前には昼夜逆転の生活を続け主人公の奇妙な男ルイスを投影していった。

 

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主役のルイスのナイトクローラーとしての活動に巻き込まれていくキャストも渋い。

深夜ニュース番組の女性ディレクター、ニーナ役にベテラン女優レネ・ルッソ

ルイスのアシスタント役の青年リック役にイギリス人の俳優でもありラッパーでもあるリズ・アーメット

ナイトクローラー・ルイスのストーリーに振り回され、言いくるめられるこの2人はかなり重要な存在感を放っていた。

 

そのあらすじ ネタバレ

こそ泥からナイトクローラーへ

映画は夜のロサンゼルスでルイスが金網を盗んでいるシーンから始まる。

警備員に見つかってIDを求められるが、良く回る口で喋りスキをついて殴り倒し彼の腕時計も拝借する。

盗んだ金網を工事現場で現金に換え、金額交渉の勢いで「勤勉で仕事を覚えるのが早い僕を雇わないか?」と持ちかけるが「こそ泥は雇わない」と一蹴される。

作り笑顔でその場を去るルイスの生活は友達も家族も仕事もなく絶望的でそれでもどこまでも冷徹に社会の存在をテレビで眺める日々だった。

帰り道、交通事故現場に出くわす。車を停め警官が救助する様子を眺めているとその現場を至近距離まで近づきカメラを回す2人組が目に入る。

事故や犯罪現場専門のパパラッチのナイトクローラー・ジョーのチームだ。

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彼らに興味津々のルイス。

撮影を終えた彼らの取材車に押しかけ質問攻めし雇ってくれと言うが一蹴される。

だがそれでもルイスは何かを掴み晴れやかな顔で夜の街を後にする。

悲惨な映像が金になる。彼はナイトクローラーになる事を決意した。

 

翌日、早速競技用自転車を盗み、その金でカメラと無線傍受機を用意。

言葉通りの飲み込みの良さと努力で警察の無線コードを理解し、早速夜の街でカージャック現場の被害者の映像を抑える事に成功する。

その足でテレビ局に向い深夜帯のニュース番組のディレクターで安全だと思われていた街での凄惨でショッキングなストーリーを求めるニーナがその映像を絶賛。

ルイスの映像はニュースのトップで使われ、報酬も手にする。

ニーナは「場所は閑静な郊外富裕層の住宅街で、犯人は貧困層かマイノリティが理想ね」とルイスにアドバイスをし、撮れたらまず私の所に持って来いという。

ナイトクローラーの一歩を踏み出したルイスは確かな生きる手応えを手にしていた。

 

加熱するナイトクロール

金を持たない貧困な若者リックをアシスタントに加え、毎晩街に繰り出すルイス。

リックを奴隷の様に扱い毎夜仕事に勤しみ、道路事情や映像のギャラの相場、無線のコードの分析など研究を惜しまず、次々と凄惨な映像を押さえていく。

時には住宅内にまで侵入し生々しい写真を抑えるなど、徐々にその手法は加熱。

ディレクターのニーナも絶賛し、彼の映像はニュース番組の常連となった。

成功を手にしたルイス、車も赤いスポーツカーに乗り換え新しいカメラも購入し、ネットやTVで見た格言を振り回しリックを叱責する性格も加熱気味でディレクターのニーナすら口説こうとする。

事故現場で死体を動かす改ざんをし、その映像を売った後同業者のジョーに業務の拡大提携を持ちかけられるがルイスは断る。一人でもやっていける自信が彼にもあった。

が、リックのミスで飛行機墜落事故という大きなスクープを取り逃してしまいジョーに先を越され、ニーナの信頼も失いかける大失態となった。

プライドも傷つけられたルイスは初めて激昂し、更なる成功に飢える様になり、その過熱ぶりに拍車をかけていく。

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最大のスクープ 強欲の果てに

ある夜、強姦の事件現場に向かう予定だった所を自動車事故の現場へ変更する。

実はルイスはジョーの車に細工をしていたのだ。

案の定、強姦の現場に向かっていたジョーの車は事故を起こし、血まみれになって搬送されるジョーの姿を撮影するルイス。

自分しか知らないタイミングでの独占スクープに業界も騒然としルイスの存在は更に広まっていく。

 

更なる成功を求めるルイスに最大の事件が訪れる。

車を流している所に無線を傍受。高級住宅街での強盗の警報が鳴った。

警察より先に現場に到着したルイスは邸宅内に侵入。

そこで発砲音と現場から逃げる犯人2人とその車の映像を抑える。

さらに家の中にも侵入し住人3人の死体を映像に収め、警察が来る前に撤収しTV局へ。

ニーナは最大級のスクープを絶賛、しかしルイスの要求も過去最大のものに。

相場を遥かに上回る金額に、業界内での自分の地位の確立、自身の会社名をテロップ入りで読み上げること、更にはニーナにも体の関係を迫る暴走ぶり。

結局この映像は放送され過去最大級のスクープに大反響となった。

しかし映像からは犯人たちの逃げる姿と車のナンバーは消されており、翌日自宅に来た警察にもその証拠を出すことは無かった。

彼には既に次のスクープの絵図が出来ていたのだ。

 

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車のナンバーを調べ、登録者を突き止めその近辺で張り込むルイス。

不審に思ったリックに副社長の就任を告げ何とか丸め込む。

彼は逮捕の瞬間も自分で作り出そうとしていたのだ。

通報しなかった事をリックが咎め、これ以上仕事をするならお前とギャラは折半だと要求を上げ、ルイスも渋々了承し最後のナイトクロールへ。犯人の車を尾行し深夜のチャイナレストランを逮捕現場に’選んだ’ルイス。

犯人たちが席についた所で警察に通報し、犯人が銃を持っていることも告げ銃撃戦を演出する下地を作る。

リックに車外から撮影させ自らは車内からカメラを回す。

警官が到着し、気付いた犯人たちが発砲し銃撃戦に。警官が打たれ一人の犯人が射殺されるが一人は逃走しカーチェイスに。

リックが助手席でカメラを回し、犯人の車・パトカーをルイスのスポーツカーが猛追する。

最終的に犯人の車が横転しカーチェイスは決着し、ルイスはいつものようにリックに車内にいるように命令し犯人の車に近づく。

「大丈夫だ。死んでる」とリックを呼び寄せるが、犯人は生きていて近づいたリックに発砲。その様子をルイスは映像に押さえていた。

その後駆けつけた警官に犯人は射殺され、そのシーンからリックの死に際にカメラを寄せる。

リックは彼にとっては邪魔だった。だから出演者にしたのだ。

「狂っている」とリックはつぶやき息を引き取る。

 

TV局は騒然となるが、彼の映像を使うことを決意。

実は強盗事件は麻薬取引のトラブルだったという真相も闇に葬り「このストーリーが私のストーリーよ」とニーナはルイスの映像のままを放送する。

警察の取り調べを受けるルイスはお得意の嘘で犯人の車に付けられていたと物語をでっち上げる。警察も怪しさは感じるも証拠不十分で彼を釈放せざるを得ない。

彼は社名の入ったバンを二台に増やし、インターンで3人のスタッフを雇い、再び夜の街を流すのだったー。

 

感想

見終わった感情はとにかく言い様がなくムカつきも痛快さも同居して何か怖くなってしまうほどだった。

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とにかくイカれたやつのルイス。でもきっとこういう奴は予備軍も含めて今の社会には多い。

ひとりぼっちで社会的な弱者ながら崇高な思想をネットから得てそれを振りかざし、クレイジーでどこまでも冷徹な現代的な悪いヤツ。

もちろんストーリー的にも全てに伏線があり、何か冷酷に見れる自分も怖くなる。

きっとリックは死ぬだろう、マイノリティで低所得者だから。

弾切れまで計算していたんじゃないかというラストシーンのマジカルな迫力はルイスの表情に全て表れていた。

 

ストーリーの方向性的に、ルイスに鉄槌が下される事を望む半分、活躍を望んでしまう奇妙な高揚感があった。

胸糞悪かった第一印象が徐々に彼に引き込まれていく。

痛快さと残酷さが入り混じるこれぞ社会悪という、彼も悪いんだが社会的な傾向に大きな問題がある事自体が悪という映画全体で描かれるテーマがより混沌としたものになっている。

痛快に思ってしまうこっちがヤベェなと思うルイスの非道っぷり。

テンポが良く冷酷なほどに効率よく、無意味に陰鬱な表情は無いのも彼の存在感を際立たせる。

利用される小物から変わる、それでも利用される側には変わらないが明らかに天職であり、思えば最初の現場からほぼ表情を変えずカメラを回せるその姿。

貼りついたような冷笑は忘れられないのだ。

 

 

社会全体の被害者だ、と見る事も出来るが、そこに思いっきり阿って一瞬で道を踏み外せる冷静さ、そこにこの主人公のダークな魅力があった。

怪演でした。

 

それではまた次の映画で。