ブラウン管の向こうから届く絶妙な映画たち
映画を観る。
映画館ではなく、家で。
レンタルDVDでもオンデマンドもなく、テレビ放送で。
テレ東の午後を始め、BSで深夜やってるのを撮っといて後で見たり、金曜ロードショーとかを撮り貯めたり。
ブラウン管の向こうから届く絶妙な映画たちのレビュー第4弾。
今回は2000年の映画の「ショコラ」をレビューします。
名前は知っていたが、勝手に女の人が見る映画だと思っていて見ていなかった。
チョコレートだし。
と思っていたけど、30代に入りたての男にも全然響く、強く暖かい物語。
コンパクト舞台でで、すごく濃縮された描写の数々はすごく入り込んでしまった。
男も女も、オススメだ。チョコレート食べたい。
ブラウン管の向こうから届く映画と音楽に想いを馳せてその4。
前回、前々回はこちら!
映画概要
公開は2000年で、ジョアン・ハリスの小説を映画化した作品。
ジョアン・ハリス自体、実家が菓子家というショコラを書くべくして書いた様な生い立ち。
監督はラッセ・ハルストレム。ABBAの映画や、ディカプリオの’ギルバートグレイプ’を手がけたりしている、ヒューマンストーリーに定評のある名監督。
主演はジュリエット・ビノシュ。
世界三大映画祭に全てノミネートされるフランスの名女優で、ショコラの時は36歳。
自身はこのショコラでアカデミー主演女優賞にノミネートされる。
爛漫ながらも強く優しく、感情の起伏もありながら大人な一面も見せる深い演技が、まさに適任だった。
若き日のジョニー・デップも出演。
シザーハンズ後で、まだまだ役者修行中ながら、かなりセクシーな演技で堂々の存在感を放つ。
オールバックも素敵である。
もう一人触れたいのが、ジュディ・ディンチ。
大女優であり、この映画でも重要な役処で大きな存在感だった。
一つ一つのセリフが非常に重く味わいがあった。
多くの映画に出ているが、ピンとくるのは007のMの役。
時代は1959年。
ある北風の吹くフランスの村でのストーリーだ。
そのあらすじ ネタバレ
閉鎖的な村へと来たチョコレート屋の母娘
1959年、春の訪れの少し前フランスの村ランスケにやって来たシングルマザー、ヴィアンヌ(ジュリエット・ビノシュ)と娘アヌーク。
お揃いの赤いコートに身を包み、チョコレート屋を開業するためにきた。
村の有力者のおばあさんアルマンド(ジュディ・デンチ)に店舗を貸してもらい、せかせかとオープン準備を進める。
村長的な位置にいるレノ伯爵を始め、カトリックを信仰し敬虔で排他的な考えが根付いていたこの村は、怪訝な目でそれを見つめ、特にレノ伯爵は悪いものだと決めつけ、その権威を使い気弱な神父も操りどうにか排除したがっていた。
寂れて、同じ景色が広がっていた村に、色とりどりのショコラと甘い匂いが広がるヴィアンヌの店は、逆にカトリックだという背徳感も相まって、注目の存在に。
ヴィアンヌの明るく積極的で献身的なキャラクター、さらには不思議とその人に合うチョコレートを次々と出せる抜群の接客力で、その背徳感を上回る魅力に溢れていたお店は、次第に常連客が出来始める。
夫の暴力に悩むジョセフィーヌ。
おばさま3人衆。の一人に恋をする犬連れの初老の男性ギョーム。
枯れていた夫婦の二人。
特にヴィアンヌに店を貸したアルマンドは毎日のように店を訪れた。
徐々に村の人々が抱える悩みが明らかになり、非日常だったショコラは、その悩みから抜け出せる場所だった。
アルマンドは、娘のカロリーヌとの折り合いがうまくいっていなかった。
奔放なアルマンドは、固く堅実なカロリーヌと絶縁されていて、孫のリュックに会えないことを寂しく思っていた。
次第に村人の関係が明らかになり、チョコレートを癒しに、そしてショコラの存在を活力に物語は展開していく。
ショコラティエは村の中心に
娘のアヌークが、学校で彼女の空想の友達パントゥールをバカにされ落ち込んでいるときに、ヴィアンヌは彼女の好きなヴィアンヌの祖父の昔話をする。
彼女は一族通して放浪しながら、チョコレートの不思議な力で人々を幸せにする生業だった。
活気溢れるショコラティエは、次第に物語の中心となり、レノ伯爵の疎ましい思いも暴走気味になり、異教徒だ悪魔だと村へ吹聴する。
ヴィアンヌはレノ伯爵の元へ怒鳴り込むが、イースターまでに店を閉じるだろうことになるだろうとレノ伯爵は自身の地盤に自信がある様子。
決定的に亀裂が入る両者。
それでもショコラティエを求める人は変わらず、彼女の店は中心となっていた。
絵を描いていたアルマンドの孫リュックを捕まえて話しかけると、リュックも心を開き店を訪れ、ショコラティエはアルマンドとリュック、母に内緒の祖母と孫の逢瀬の場にもなる。
彼女も老人ホームに入れ、と娘から言われているが、残りの人生を好きに生きさせてほしいと願っていると打ち明ける。
さらにはジョセフィーヌが暴力的な夫から逃げて来て、店で保護。
夫のセルジュはレノ伯爵の元に駆け込み取り戻してもらおうとする、レノ伯爵もヴィアンヌの元を訪れるが、明らかに夫が悪く旗色がよくない。
なんとかカトリックの力でセルジュを改心させようとするが、うまくいかない。
一方のジョセフィーヌはすっかりと笑顔を取り戻し、ショコラの従業員として暮らしだした。
こうして夏を迎えた村でも、ヴィアンヌの店は繁盛していた。
巡る物語 暴走する宗教
夏、アヌークが店に「海賊が来た!」と目をキラキラさせて飛び込んで来た。
ジプシーの集団が河に流れ着いたのだ。
ギターを弾くルー(ジョニー・デップ)と出会い、放浪する彼らとシンパシーすら感じ、ヴィアンヌはよそ者同士歓迎の意思を見せる。
ジプシーの集団は「川のネズミ」と蔑まれており、村の保守層、特にレノ伯爵やカロリーヌはまたも嫌悪感を明らかにする。
そのジプシーを締め出せっていう様なチラシをカロリーナが配布しているときに、美容院をサボりショコラでアルマンドおばあちゃんと会っていたリュックが母カロリーヌについに見つかってしまう。
リュックを引き剥がし、カロリーヌはショコラにも物凄い剣幕で批判を展開する。
アルマンドは重度の糖尿病だった。
彼女がチョコレートを食べることは寿命を縮めていることに等しかった。
カロリーヌが去った後、ヴィアンヌはなぜ言わなかったのだと聞くがアルマンドは余計なお節介は無用だと悲しい顔をして去っていく。
さらにはジョセフィーヌの夫、セルジュも改心を装い無理やり正装して花を持ちジョセフィーヌを迎えにくるが、ジョセフィーヌは拒絶。
その夜にセルジュがショコラティエに襲撃をかけ店を破壊するが、ジョセフィーヌのフライパンの一撃で事なきを得る。
ルーはジプシーの少女と村をめぐるが、ボイコットに合い、途方に暮れているところで、ショコラティエの前へたどり着く。
ヴィアンヌは気にせず店へと招き、少女もアヌークと打ち解け、ルーとヴィアンヌも思いを重ねる。
ルーの好きなショコラを出してあげる、とヴィアンヌは言って出すが、美味いが違うと言われてしまう。
セルジュに壊された扉を見て、お礼に直してやると言われる。
そうしてショコラとルーとの交流は深まり、レノ伯爵の狙い通りボイコットの対象はショコラへも広がっていく。
レノ伯爵はついにはミサで神父にチョコレートは悪魔だと認定させるニュアンスで説教させ、アヌークも学校でいじめられ塞ぎ込んでしまう。
さすがに参ったヴィアンヌはアルマンドの家に行くと、アルマンドが一つの提案をする。
もうすぐ自分の誕生日だから、そのパーティーを企画してくれ、と。
不安に駆られるがアルマンドの強い頼みもあり、そしてパーティーの後には彼女が言う「死の館」老人ホームへと入ることを約束し、ヴィアンヌは再び立ち上がり開催を決意。
アルマンドの名前で常連たちへと招待状を出し、物語は大詰めへと加速して行く。
パーティー 祭りの終わりには
常連客を集めたパーティーは豪華。
ルーももちろん招かれた。
ショコラ尽くしでチキンにまでチョコレートをかけていた。
そこに孫リュックも母カロリーヌの目を盗み駆けつける。
おばあちゃんの絵を誕生日プレゼントに完成させ、渡した。
全ての人がハッピーな空間。デザートはルーの船で踊りながら食べることに。
音楽と踊りとチョコレートが溢れるパーティーでみんな笑顔の中、息子がいないことに気づいたカロリーヌが遠巻きに駆けつける。
アルマンドと目が合うも、諦めたように自ら何処かへ行く。
次に騒ぎを聞きつけて来たのはレノ伯爵とセルジュ。
こちらも遠巻きに様子を伺い、レノ伯爵は手を打たなければ、と背を向ける。セルジュは何かを決意した表情。
アルマンドが自宅へと戻る。リュックが付き添いに。
心配とそして老人ホームへと言ってしまう寂しさから、言葉を投げようとするヴィアンヌに、大げさなサヨナラは好きじゃないよ、と語り、変わらずに気丈に去って行くアルマンド。
ジョセフィーヌもアヌークも他の客も皆川辺で寝静まり、ルーとヴィアンヌだけの時間に。
彼らは流れること、自由の辛さで共感しあい、結ばれた。
ルーとヴィアンヌはまどろみから覚めると、何者かが川辺の船に放火し、川辺は火の海になっていた。
ジョセフィーヌとアヌークが寝ていた船が一番火の手が強い。
ヴィアンヌは助けようとするが間に合わない、が間一髪ジョセフィーヌがアヌークを連れて逃げ出していて事なきを得た。
事態は落ち着いたが、そしてルーもこれ以上は迷惑になると、別れを決意する。
大きな事件の裏で、自宅の椅子で眠るアルマンド。
パーティーの片付けをしていたリュックが、毛布をかけようとすると、彼女はもう冷たくなっていたのだった。
リュックは母親へと泣いて告げる。カロリーヌもただ抱きしめるしかできなかった。
翌日のアルマンドの葬儀。
もちろんヴィアンヌも参加したが、レノ伯爵の指図により神父の言葉で痛烈に批判を浴びる。
そしてヴィアンヌも翌朝には街を去ることを決意する。
あなたがいないと全ては元通りになってしまう、荷造りを必死で止めるジョセフィーヌ。
元から何も変わっていないと、決意は強いが、イースターも迫り、ジョセフィーヌ達が今度は恩返しに立ち上がる。
翌日朝、ジョセフィーヌは常連を集め、独自にイースターの準備を開始。
その中にはなんとカロリーヌの姿もあった。彼女もまたリュック、アルマンドを介し、ショコラに救われたのだ。
そんな姿にまた、ヴィアンヌも立ち上がりイースターの準備を進める。
レノ伯爵は悩んでいた。
未だにショコラティエは潰れず絆は強いし、自分だけ奥さんにも浮気され一人になって行く。実はカロリーヌに想いを寄せていたが、それもカトリックの身ではどうにもならない。
その夜、セルジュがレノ伯爵を訪れ、船への放火は自分の仕業だと告白しにくる。
レノ伯爵の手を打つと言う言葉を、過大に解釈したのだ。
レノ伯爵は知らなかった。自分の過ちでもある葛藤と怒りが混ざり、セルジュを村から追放する。
さらに情緒不安定になったレノ伯爵は、イースターでの説教でもう一度権威と宗教の力を取り戻そうと、気弱な神父に練習を強いるが、空回りし自身で原稿を書くと一人部屋に残る。
窓の外を見ると、なんとカロリーヌがショコラティエで共に準備をしているではないか。
レノ伯爵は狂気に走り、その夜ナイフを持ってショコラティエのショーウィンドーに忍び込み、ショコラ作品を壊しまくる。
が、壊されたチョコの一欠片が口に入った瞬間に、その甘さに彼の感情は崩壊しチョコを貪り、そのまま眠ってしまう。
翌朝イースターの日、ヴィアンヌと神父がショーウィンドーでチョコまみれで横たわるレノ伯爵を発見。
ヴィアンヌは、落ち着くわよ、と飲み物を差し出し、内緒にするわ、とチャーミングに返す。
神父に、まだ原稿ができていないと言うが、自分で考えますと、彼も凛々しく答えた。
ラストシーンのイースターの日。
教会に集まった村人に、神父が気高く説教を始める。
神性ではなく、人間性を説こう。
何かの価値は禁じる事では決まらず、何を受け入れるか歓迎するかで決まるのではないか、と語る。
全ての村人が頷き、レノ伯爵ですらも笑顔になり、ラストのイースターのシーンへ。
全ての人がショコラを口に笑顔で祭りを楽しむ。
その中心にはヴィアンヌがいた。
常連もみんないい感じ。
カロリーヌとレノ伯爵も距離は近づきそうだ。
ジョセフィーヌはカフェを引き継ぎ、名前をカフェ・アルマンドに。
その光景に彼女もこの村にとどまることを決意する。
ルーもヴィアンヌの元に扉を直しに帰ってきた。ルーの好みはホットチョコレートだったそうだ。
時折、北風が吹くと、まだ見ぬ旅を思い描くこともあるが、彼女は窓を閉め、今日も店を開けるのだった。
物語の解説、描写の感想は後編で!