Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【バンドレビュー】Kula Shakerに想いを馳せて【ソングレビュー10】

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ブリティッシュでインディアでセクシーでロック。唯一無二のバンド、クーラ・シェイカーに想いを馳せる。

Kula Shakerについての記事を書こうと、ブリットポップを壊して~、とかオアシスの売上記録を抜いて~、とかインド音楽との結びつきが~とか、想いを馳せる内に彼らのアンセム'Hey Dude'を50回くらいは聞いた。
 
 
1996年ブリットポップ狂騒の過渡期にあったUKロックを切り裂いた雷鳴の様、なんだけど何処か不思議なロック。
濃密に渦巻く濃い音空間を切り裂く物凄いキレのあるリフと、呪文の様に魔術的・酔いどれの独り言の様なボーカルの混ざった陶酔感ある音世界。
想いを馳せようと掴もうとしても、サイケな濃霧の中で想いは浮かんでは消えていき、いつの間にか自分の深層世界にドープに入り込んで、目の焦点が合わず口半開きで首振って無意識に音を聴いてるのだ。
何度やってもこうだから、いつしか諦めて思考を解放する様にそのトリップ感を楽しむことにした。これこそクーラ・シェイカーの味なのかもしれない。

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ロックを何のために聴くのか?
この世のありとあらゆる軋轢に仕方のない事だと恭順するんではなく、感情と欲望との摩擦に敢えて気づかせ、心を映し出し解放するキッカケを得る為だ。
思考の迷路の一つの行き止まりで、そんな事を思うくらいクーラ・シェイカーは音に没頭できる陶酔感がある。
そしてそういう答えは聞けば聞くほどわかっていくもんだ。
 
元々様々な要素が詰まったバンドだ、UKロックのメロディー、サイケな色合い、60年代の元祖ロック的なグルーヴ、インドの香り、アメリカへの答え。
それら全てを等しく感じられる極上の錬金術ロックは途方もなくロマンチックだ。
彗星の様にチャートを制覇し、UKロックに革新をもたらしたイギリスのロックバンド界のファンタジスタ、クーラシェイカーは2018年に50回聞こうとドラマチックで、がんじがらめになっていた思考はいつの間にか爽やかだ。
そんなクーラシェイカーのススメ。
今回はクーラ・シェイカーに想いを馳せる。
 

Oasisの記事はコチラ❕

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彗星のように現れ、時代と眠り付かない普遍的で特殊なバンド クーラ・シェイカー

音楽において、時が経ちメインストリームが移り変わり、その繰り返しの中で一度時代と眠りについた曲は懐メロ化していくものだ。
それでも今聴いて、当時の時代背景が見え隠れしつつ、もたれかかること無く、曲本来の普遍的なパワーをタイムレスに響かせる事がロックでは大いにある。
 
そういう感覚が僕は大好きだし、宇宙のように広がるロックアーカイブの世界星の数ほどあるロックバンドが全て燦めいて見え、例え今どんな予備知識無く聞こうがポップスに有りがちな懐かしいセピアの香りよりも、何かすげぇと直情的に心揺さぶる要因はソレだと思うのだ。

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凄い特殊性と普遍的な力を持ったバンド、まさにクーラ・シェイカーはそんなフェイバリットバンドの一つだ。
ロンドン出身、ボーカルギターのクリスピアン、ベースのアロンザ、ドラムのポール、キーボードのジェイで、1995年に結成された4人組バンド、クーラシェイカー。
この目を惹くバンド名は9世紀のインドのクシェハラ王に由来する。
’全てを魅了する者’という意味の名前らしい。
バンドの中心であり熱心な仏教徒でもあるクリスピアンがインドの文化・哲学に感銘を受け、そこまで定まっていなかったバンド名をインドの王様から借り受けたのだ。
バンド名だけに留まらず、インドの影響をモロに音楽に映し出しつつも、初期衝動的ロックンロールと融合させ磨き上げ、多彩さを持ちつつ耳を掴んで離さない音楽を鳴らす実にアンタッチャブルなバンドだった。

僕が最初に聴いた'Smart Dogs'は直感的に、以前から探してたサッカーに合う音楽に入れたい!とピースがカチッとハマるような超絶的にスタイリッシュ&フリーキーなギターロックで、これだ!っていう即効性の快感を引き起こすロック的なエネルギーに満ちていた。

 

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何処かで聴いたことありそうで全く無いという革新性、特にキレのある音にボワッと絡みつくように確かに感じる陶酔感溢れるグルーヴは、身体が勝手に反応している類のものだった。

何とも引っかかりの強さを感じながら、それに次いでクーラ・シェイカーで読み方合ってんのか?と奇妙なバンド名に目を惹かれ、調べた結果インドの言葉という答えに、行ったこともないのにどこか腑に落ち納得する本物感がギンギンに漂っていた。

 

 

探究心をくすぐられるように1stアルバムの'K'を聴いてみれば、インド音楽・東洋思想とサイケでハードなロックを混ぜ合わせたオルタナティブでイマジネイティブなトラック達は聴き応え抜群。こうして彼らは僕のマスターピースにもなったのだ。

当時を知らないにせよ、90年代に名を残す絶大なマスターピースいうのは聞けば理解できるし、ブリットポップという一大ムーブメントの狂熱にも焼かれること無く、時代と眠りにつかず誰かとか僕の耳にも届くという事が、彼らの特別性を証明し続けていると言っていい。

彗星の様なデビューの後、3年という短い期間で解散を決め、頂上にいる時間は長くなかったが、ブリットポップという狂熱すら味方につける衝動性、インド音楽という特異性もサイケに輝く事で、唯一の燦めきを持つバンドになり、2005年の再結成以降も変わらぬ一目置かれ方をする理由なのだと思うのだ。

ソングレビュー10

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彼らの音楽を紐解くキーワードはインド音楽と初期衝動的ロックンロールのサイケな融合だ。

ただそこには彼らが唯一になり得た絶妙なブレンド方法があった。

東洋的な世界観を深く理解し、あっさりと具現化出来る表現者としての一面も天才的でありながら、ロックサウンドとして鳴らすバンドの高度な技術も天才的

ギターもボーカルも奇才なクリスピアンに、サイケなオルガン、超絶なグルーヴを産み出すリズム隊も細部のディティールに神が宿ったような音を鳴らす。

神秘性と衝動を最も強靭に発揮出来るメロディーワークを見出し、キャッチーに響かせられる構成力も絶妙だし、それと同時に挑発的でセクシャルでありつつ、人離れした雰囲気すら感じる福音的な神通性のバランスも凄まじかった。

耳にこびりつく中毒性を持って、狂ったように走り、トリッピーでもメロディーとビートは簡単には手放さない。

マニアの自己満には程遠い、どこまでもオープンで華がある感じも、実にロック的で素晴らしいのである。
そんな珠玉の10曲を集めてみました。
是非聞きながら御覧ください。
 
1.'Hey Dude'

最も狂熱を引き起こせる彼ら随一のアンセム。

破格な激流サウンドは龍の様で、まさに太陽をつかもうと天に登るような荘厳さと挑戦的なマインドを内包する。
うねりまくるベースと跳ね上がるドラム、アンセミックかつ狂気のギタープレイに、マントラなのか酔っ払ってんのか、いずれにせよ脱力が柔の魅力を産むクリスピアンの声が踊りまくる。
とにかくアンストッパブルな疾走感と陶酔感は、彼らのアイデンティティーが凝縮された宝石の様に輝く屈指の名曲。
 
2.'Smart Dogs'
僕はこの曲から入った想い出深いギターロック。
瞬時に心を掴む激烈キャッチーなリフから、マッドでドープなギターグルーヴ、軽やかにうねるベースラインで旋風の様に音を一体に巻き上げる。
抱擁感と言っていいのか分からないが絡みつく様に、周りの空気ごとめちゃくちゃにされている様で、危険で爽快な開放感は彼らのアイコニックな部分だ。
賛美歌の様な響きから時折タガが外れた様な瞬間的な爆発も、とにかく挑発でセクシーだ。
 
3.'Grateful When You're Dead'

サイケ色の濃い鮮烈なロックチューン。

エネルギッシュで甘美なギターリフがうねりまくる冒頭から、一貫して攻撃的でセクシャルなロックの美学に溢れる。

スクラッチのエッジ効いたギターが琴線を搔きまわすし、地面が揺れてる様な強力なビートに身体ごと丸々覆われる強大な音塊を感じる。

衝動的に身体を支配するのは、テクニカルなヴィンテージロックの理想形のパワーなのだ。

 

4.'Into The Deep'
代表的な雄大なミドルチューン。
美しいギターとキーボードの旋律を包む様な神秘的エスニックサウンド。
展開して行くにつれ、インド的な空間の輪廻感は漂いつつ、どこまでも爽やかに突き抜ける様な歌い心地の風通しの良さを感じる開放的なムードが訪れる。
この物凄い無添加でナチュラルの魔法的なパワーは、彼らのかけがえない魅力の一つだ。
 
5.'Tattva'
インドの言葉で真理という意味のオリエンタルチューンの一つ。
シタールとギターの絶妙な反響感。思いっきり前面に出たインドの香りにも、しっかりとロック的なグルーヴに纏わせ切れるクーラらしいギターの音色。
どちらの要素も入れて、ではなく、フレーズが少しずつ融合して行く様な、徐々に聞いたことのないオルタナティヴなメロディーに移り変わる高揚感。
サイケでありながら、キャッチーなタットヴァというキーワードの引力も強い耳に残る要素の一つだ。
 
6.'Sound Of Drums'
美しく妖しいキラートラック。
思いっきりインドなコーラスで幕を開け、神秘的で電撃的なギターフレーズを美しく奏でる冒頭は深く自分の心に落ちていけるような優しく耽美な空間。
トリッピーなキーボードとドライヴなビートは抜群の眩さで、空想と現実を行ったり来たりするギターの音色がカラフルに花開いていく。
厳かさとまばゆい高揚を同時に感じさせ、視界がぼんやりと奪われていくような融合の瞬間は快楽的だ。
 
7.'Govinda'

インディアな一面の最たるアンセム。

全編ヒンドゥー語のマントラで構成された神を讃える賛歌で、まさにオルタナティブな聴いたことのない感覚。

リズム感と雰囲気はお香が香りそうなインドのムード、そこに1ミリの亀裂もなく完璧に融合するギターサウンドは息を呑むほど芸術的。

 

8.'303'
攻撃的でセクシーなブルースロックチューン。
ジミヘンみたいなギターからめちゃくちゃヴィンテージでクラシカルなロックのギラついたメロディー。
ロックシンガーとして超アイコニックなボーカルも、身体が反応するような野太いグルーヴも、磨き上げたロックンローラーにしか出せない、そういう色気すら感じる超クオリティの一曲。
 
9.'Hush'
ジョー・サウスのカバー。ディープ・パープルがロックカバーしていたがそのカバーに近いキラーロックチューン。
軽快に歪んだギターメロディー一発でエレクトリックな痺れをもたらす必殺のロック。
オリジナルハードロック的なパワフルさが溢れそうな危険、エネルギッシュさを留めず振り切る様な疾走感は、物凄く魅力的。
 
10.'Smart All Over'
メロウなロックバラードは、繊細な彼らのオリジナルな部分が感じられて僕は一番好きな曲。
艶やかで儚げなギターメロディーの色気を存分に発揮し、ぽつりぽつりとしたアシッドな雰囲気。
一瞬で彩るロマンティックな衝動は、途方もなく美しい。
 

心は解放され、身体は揺らされる

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イントロが鳴った瞬間に誰もが思わずステップを踏んでしまう身体反応型アンセムであって、解放と自由と欲望する心の奥に隠されたスイッチを密かに押している。
心は開放され、身体は揺らされ続けている、今までにない感覚。
幻想的でありつつ強烈にリアルなブローを入れてくる、なんとも頼りがいのあるのだクーラ・シェイカーは。
魔術の説明は後で良い。メラもギラもイオもどうやって出たかとか、まずは考えない。
そのパワーにまずは酔いしれるのが、魔術の手引であると、そう思うのだ。
 
それではまた別の記事で。