Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

American Hi Fi の風は今1番心地いい【バンド&ソングレビュー10】

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アメリカンポップロックのオルタナティヴな宝石の様なバンド、American Hi Fiに想いを馳せるショートコラム

こういう曲の魅力がわかんない人とは、友達になれないなって思う類の曲達がある。

売れてる売れてない、メジャー/インディー、ロック/パンク/ポップ、そういう分類からちょっと離れた、自分のパーソナルな所の近くで鳴る、自分に感性にハマった曲たち。

大体は自分の甘く酸っぱい青春時代に聴いていたとか、何か特別な思い入れがあるお気に入りの事が多く、良いと言える確信を未来永劫持っていられる自信があるし、数多くの批評にさらされる歴史的超ドメジャーじゃないバンドの時は、秘密めいていて更に良い。

彼らを褒められると、まるで自分が褒められたかのような勘違いすら起こしちまう。

SugarcultとかFountains of Wayneとかまさにそうなんだが、このAmerican Hi Fiってバンドもそこにハマるナイスなバンドなのだ。

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アメリカの地で、遠くチープ・トリックから脈々と受け継がれるアメリカンなポップ・ロックを、2000年代当時オルタナティヴにモダンに鳴らしたバンド。

練り上げられたメロディーにひねりの効いたポップさと、かっこよ過ぎでも難解でもないストレート&スマートなロック。

甘いメロディーの匂いもロックな風当たりも、乾いて澄んだ色もメランコリックな情緒も引っくるまっていた。こういう風を感じ続けて生きていきたい。

今なぜか、こういう風が最高に心地良く感じる。

そんなアメリカン・ロックの秘めた宝石的な、大切なバンド、アメリカン・ハイ・ファイに想いを馳せる。

素敵な暇つぶしになれば幸い。

 

 

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ポップとロックのバランスを極めるとここまで優しい風が吹く

どんな物事にも、心地良いバランスを見つける事は、人生において最も大切なファクターである。ちょうど中立というワケではなく。

情報もモノも体験も錯乱し、どんどん趣肴が複雑化する昨今、中途半端を避け、その紙一重で自分らしい側にある微妙なラインを見つけるのが、楽しい人生を歩むコツだ。

人生語りをするなんて嫌な大人まっしぐらであるのでこの位にしたいが、そういう癖は実は音楽探しから来ていて、特にロックとポップのバランス感覚というのは、その中でも最難関だった。

そういう意味で言えばAmerican Hi Fiの音楽は、僕の中のロックもポップも綺麗に撃ち抜いた稀有なバランスであり、それを強烈に意識させる且つナチュラルにやってくれたバンドだったからここまでフェイバリット感があったのだ。

 

歪んだロックギターが最初に耳に入るロックさ、それにぐいっと引っ張られる様にして大衆性も残したビッグなメロディーが跳ねる。

ライトさとヘヴィーさ。

メジャーとインディー。

ストレートとマニアック。

そういうものの外側からの一撃、という訳ではなく、両対岸に居ても聞き取れるようなビッグメロディーを、ただただ良い歌であるようにと高品質で届けた結果の絶妙なバランス感。

オルタナティヴ・ロックのぎりぎりポップ側、或いはパワーポップのぎりぎりポップ・パンク側みたいな、微妙なラインをいとも簡単についてきた。

唐揚げにレモンかけていい?うるせぇ俺の食うトコに絶対かけんなって奴が、あれ?レモンかかったとこちょっと美味しいかもってなるような、固定観念を少しだけ捻らせる爽快な風。

もちろん強引に論破して引き寄せる訳ではなく、自然となびかせる様な鮮やかに香る優しいポップとロックのスマートなバランスに、自然と心が動くようなナチュラルな聴き心地だったのだ。

今、しっかりと思いを馳せてみるとAmerican Hi Fiには、そんなサウンドを創り上げられる下地があった。

 

ポップ・ロックの真ん中で鳴ったアメファイ

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ジージャンもジーンズもバカみたいに似合うアメリカンイケメンなアメリカンハイファイ。

そもそものバンド発足者はVo&Gのステイシー・ジョーンズ(左から2番め)で元は、Veruca Salt(ヴェルーカ・ソルト)という女子ツインギター・ツインボーカルのバンドでドラムを叩いていた。

ヴェルーカ・ソルトもオルタナロックと言うか、キャッチーなサウンドのロックを鳴らすバンドで、この音楽経験はアメファイにも活かされる事になる。

ヴェルーカ・ソルトを抜けたジョーンズは、何の気なしに別のバンドをやってた音楽仲間たちとバンドを組み、最初に誘ったのがドラムだったため、自らギターを持ち気ままにバンド活動を行っていた。

次第にその方向性が自然と固まっていき、American Hi Fiは2001年にデビューを果たす。

時はポップ・パンクの最盛期。今ポップパンクレジェンドと言える数々のバンドがデビューした黄金期。

彼らを最初に知ったのも、女の子とHな事をしたくて奔走しまくる男子達誰もが通り笑ったアメリカの青春映画”アメリカン・パイ2”の挿入歌だった。

Blink182Green DaySUM413 Doors Downという名だたるバンド達と共に、ポップでパンクでおバカな映画を最高に彩っていた彼らの楽曲は、ポップ・パンクと並んだ中でも存在感はこの頃から顕著だった。

2001年のセルフタイトルアルバム'American Hi Fi'でデビューしスマッシュヒット。

このジャケットもシンプルで凄く格好いい。

そのシンプルさも相まってストレートで抜群に伸びやかなロックサウンドは、デビューアルバムながら、あのヴェールカ・ソルトのステイシー・ジョーンズ?ギター持って歌ってもイケるじゃん!って元々の知名度+納得の完成度を誇っていて、チャートも上々だったようだ。

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2003年に評価も高い2ndアルバム'Art Of Losing'、2005年には3rdアルバム'Hearts On Parade'を発表し、さらに盤石で骨太なロックサウンドとポップセンスを披露し、既にポップ・ロックの達人的な存在感を放っていた。

バンドの活動を落ち着かせた後もステイシーはその音楽的センスをプロデュース業で活かす。

オルタナポップなモダンバンドPlain White T'sや女性ボーカルのポップロックバンドHey Mondayをプロデュースするなど手腕を発揮。

さらにはちょっと前にブームになってアメリカびいきの女子高生がかぶりついて見ていたマイリー・サイラス主演の「ハンナ・モンタナ」の音楽監督も努めていた。

全く僕の人生と交わること無いハンナ・モンタナだったが、ふと何の気なしに目にした制作クレジットで彼の名前を見つけた時は嬉しかった。

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ポップ・パンクムーブメントのド真ん中で立ち上がったAmerican Hi Fiだから、ポップパンクバンドとカテゴライズされることも多い。

それでもこのステイシーの絶妙なバランス感覚はバンドのメロディーメーカー・フロントマンとしても、もちろん機能していて、軽快な中にもハードな重量感があって少し大人に見えたバンドだった。

そういうポップ・パンクのお兄ちゃん的な存在であり続け、自然とリスペクトが生まれてくる。そういう時代背景もあったのだ。

 

アメリカン・ロックの宝石 ソングレビュー10

ステイシーが語っていたが、「インディーだとマイ・ブラッディ・ヴァレンタイン、メインストリームだとフー・ファイターズ。その間の音楽が全部好き」そういう趣向も思いっ切りサウンドに活かされている。

ドラムからフロントマンに転向、というデイヴ・グロールとの共通点もちょっと影響的にざわざわさせるが、ハードめなギターの鳴り音が全面に出ながら、聴き心地の良いメロディーを煌めかせたポップ・ロック、言うには簡単な絶妙なサウンドをナチュラルにやってのけた。

聞こえだけ見ればポップ・ロック職人的なアーティスティックな1面も見えるかもしれないが、実際はもっとライトなものな気も聴いてる感触からするのだ。

ここからは想像だがAmerican Hi Fi結成時のフラットに音を鳴らしている時の自由なロックの横断によって、マイブラからフーファイまでという彼らの肝が極めてナチュラルな形で十分に練られていった結果がこのサウンドにはある気がしているのだ。

凄く顕著にそれが表れているのが2016年のベストトラックのアコースティックアルバム。

全てのキラーチューンでプラグを抜いた時、こんなにも鮮やかに歌世界が広がるバンドって時点で、メロディーメイク・サウンドデザインのセンスは確信的にすげぇって印象になるだろうと思う。

 

それこそフーファイとか、もっと言うとヴェルベット・リヴォルヴァーとかのギターのキレ味と重みに十分にインスパイアされつつも、チープトリックやウィーザー、或いはポップパンクバンド達のポップネスの輝かせ方にも刺激を受け、その全部を自分たちのアルバムに入れようとしたのだ。

もちろん全部は到底無理だが、卓越したバランス感覚によって楽曲ごとに散りばめたり、絶対的なポップ・ロックの風に様々な色めきの香りを感じるのも凄く粋。

あらゆるギターサウンドが花開いたオルタナ全盛のアメリカロック・フィールド。

当時だからこそ鳴り得たポップネスとハードネスの融合は、今むしろ時代の力を借りずに響く真っ当なロックのバランスを持って、ふとどんな他のバンドよりも強烈な引力を放つの時がある。

これだから音楽はわからないのである。

 

1.'Flavor Of The Weak'

彼等のシグネイチャーナンバーとして君臨する1stアルバムのリードトラック。

骨太なギターと爽快なドライヴ感のハイブリットサウンドの質感は、メロディーのキラキラさを上手く浮かび上がらせる絶妙なさじ加減。

ジョーンズのボーカルもエッジーで味があって◯。

好きな子が最低な野郎にめちゃくちゃにされてる、男からしたらめちゃくちゃ悲しい歌詞を軽やかにちょっと切なく歌うポップパンク的なムードも時代を感じるが、きっと何年経ってもどこかの男の子に刺さるだろう。

どっしりしたベースメロディーで歌うからこそわかりやすく彼らの特徴をつかみやすい。

 

2.'The Art Of Losing'

バウンシーなリズムとカラッとしたサウンドの2ndアルバムのタイトルトラック”負け犬の美学”

コーラスに熱の篭もる、ギザギザで爽やかなポップパンクチューンで、ハイホーレッツゴー・ワンツーファックユーの語呂が最高な様にテンポも良く畳み掛けられる。

ハードなナンバーだが、全く粘着性ゼロのボーカル&コーラスに、カラッとポジティヴにそしてアツいエナジーが滑るように四散されているから、とてつもなく聴きやすい。

 

3.'Beautiful Disaster'

ラウドで甘美なヘヴィロックチューン。

ド派手に歪んだギターリフと太目のベースにガシガシのビートで攻撃的に炸裂するタイプのこの曲。

シャウトもあるジョーンズのボーカルは、危うくセクシーで鳥肌モノ。

ハードなポップロックのど真ん中を撃ち抜くデザインから逸脱せず、聴きやすさは残すものの、肌を震わすようなヘヴィネスが時折発動する強烈なナンバー。

 

4.'Hi Fi Killer'

その名の通りの1stからのキラーチューン。

グランジーなギター渦巻く真っ黒な背景に、白くまばゆい光を放つボーカルのメロディーのポジティヴさ。
凄くアンバランスでありながら、サビの瞬間にはメランコリックな色合いにしてしまう一瞬のキャッチーさが鮮やかに全面でフラッシュするように光る。
こういう曲中にもオルタナティヴにあらゆる要素がミックスされた曲が彼らの真骨頂。
 
5.'Another Perfect Day'

彼ら必殺のバラードは、彼らの良さが全面に出るから必殺足り得るのだ。

枯れたアコギの美しさ、メロディーの温かみ、スモーキーかつ透明な声、胸を締め付けるコーラスの全てが鮮やかに広がる完成されたバラード。

意外とシンプルな構成も、強いフレーズを何度も言葉にすることで、なんだか口ずさみたくなるし曲にエナジーが与えられている。

ロックを帯びてからの電磁性も実にエモい。

 

6.'Nothing To lose'

あれGood Charlotte?って聴く度に思うミックス風味のポップパンクチューン。

聴き進めていきゃ、ベンジーよりいくらかスタイリッシュでスマートに歌い上げるし、

メロディーの多重感はアメファイならでは。

少しミクスチャー風味でキャッチーは微塵も損なわれていない、彼らの中でもちょっと変わったド真ん中のナンバー。

 

7.'The Break Up Song'

2ndアルバムのリードトラックにもなったパワーポップチューン。

大振りなグッドメロディを、ロックの爆音で歌うということ。

それをスマートにまとめることで聴きやすい強度を誇ること。

彼らの楽曲の中でも、屈指のキャッチーさは超良質。

 

8.'I'm A Fool'

鮮やかなギターに彩られるポジティブなパワーポップナンバー。

ちょっと落ち込んだ時、見上げた空に映えそうなギターの高音。

オールアメリカンリジェクトとかそういうバンドに広がっていくだろうエモーショナルなサウンドは、今聴いてもフレッシュなパワーポップとして永遠に蒼い。

 

9.'Teenage Alien Nation'

ややオルタナよりなギターロックナンバー。

常にギラギラのギターが側に鳴る中で、綺麗な歌モノにしてしまうポップセンス。

火花散るようなアツさと、陽光の鋭さと暖かさが混ざった強烈に眩しいポップチューンだ。

 

10.'This Is The Sound'

最後は鮮やかなバラッド。

真っ直ぐに何にもウソを付くことも、取り繕うこともせず、ただ正直に気持ちを吐き出したい時、アメファイの素直な伸びやかなメロディーは1つの大きな正解だ。

オアシスばりにデカく鳴くギターに涙腺を緩ませつつも、ビリっと来るロックなアクセントに、何か大切なものを守り抜く気持ちを持てるかのような、切なくもポジティヴな気持ちになる最良のバラッドだ。

 

ひょっとしてアメファイ?やっぱりそうだ

以上、American Hi Fiに想いを馳せてみました。

誤解を恐れずに端的に言ってしまえば、ポップとロックなだけに、似ているバンドは曲は枚挙に暇がないだろう。

それでも、あれ、アメファイかな?とキラキラ&歪みのメロディーで浮かび、やっぱりそうだ!とステイシーの声を聴いて風を感じる確かな記名性があるのだ。

願わくばこういう風が吹いている場所で、ずっと暮らしていたい。

それほどまでに凄く心地良いバンド。

 

それではまた別の記事で。