Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

仮面をつけたロックアーティスト達【Gorillaz 新曲】

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仮の姿で音を奏でるアーティスト達

スクリームって映画を見たことがあるだろうか?
バカンス先やら日常と離れた密室的舞台で、連続殺人事件が起きるアメリカのサスペンス映画。
で犯人がお面を被ってるんだけど、それが超怖い
 

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あの白い面長のお面は小さい頃トラウマだった。
誰が犯人で、どんなストーリーでとか全く覚えてない程、スクリームという映画の印象を根こそぎ持って行ったパンチ力
今やジェイソンとかナマハゲとかに並ぶ恐怖系のお面の上位市民権を獲得し、今日も子供達を震撼させる。
ハロウィンとかもオススメだ。
たまにお祭りのお面屋さんに天狗とかピカチュウとかコマさんに並んで売ってるのを見ておぉって今でもなる。僕はただでも買わない。
 
あんまり覚えてないんだが、ラストの方のシーンで犯人がお面を取るんだか、付けるんだか忘れたが、こいつが犯人!ってわかる所で、とにかくお面を着脱するシーンがある。要は中の人がわかるシーン。
シャレにならんほど怖かったあの仮面が何となく、ただのお面になってしまい、急激にアレっとなったのも覚えている。
あのお面があまりに猟奇的さにマッチし過ぎていて、外した中の人と分離した落差にガクッときた。
それほどまでに仮面の本来の意味の範疇を超えていた存在感を放っていたのだ。
 
スクリームの犯人は何を思ってあの仮面にしたんだろう。
なんにせよ、仮面にというオーガナイズによってあの映画は忘れられないものになった。
 

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Gorillazの新曲を聴いていてそんな事に想いを馳せた。
Gorillazはバーチャルバンドだから正確に言うと仮面ではないかもしれないが、音が僕らに届く前に一枚かませたバーチャルという次元は、スクリームの仮面の様に謎と畏怖を呼び音を奇妙でも鮮やかに彩る。
 
Gorillazに限らず、仮の姿を創造した上で、音を奏でるロックアーティストは、殊の外多い。
今回は仮面をつけたロックアーティスト達に想いを馳せる。
 

ROCKとその姿

もう一回スクリームの仮面を整理してみる。
素顔を隠すための仮面は、その役割を超えまるで一つのキャラクターとなった。
恐怖の源泉であり、スイッチの役割を果たす、あのデザインは秀逸だったんだと思う。
ただ正体を隠すに留まらない、コンセプトがそこにあった。
 
ロックにおいても、ただ音が届きゃいいという考えはその一端でしかない。
耳や目を通し、その奥の感性に直に触れて、衝動を起こすロック音楽には音以外のデザインも非常に重要な要素になり得るし、それを楽しむのも乙なものだ。
聴く者の目まで惹く様な仮面。
ダフトパンクとかスクエアプレッシャーの様な近代的なアーティストも、スリップノットの様なガチガチのハード勢も、日本言えばビークルとかファクトとか、最近だとマンウィズとか。
数々その仮面はロックと共にある。
 
そもそも古くから、エルビスのド派手な格好でのパフォーマンスだったり、ビートルズのマッシュルームヘアーだったりと、見た目に一種のコンセプトを混ぜ、目を惹く事は確立されてた。
軸になるロックのスタンスはロックバンドな、誰しもが持っているが、その先に、すなわち僕らに触れる前面にコンセプトがある。
 

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バンドを取り巻くコンセプトは一種のトータルメディアアートだ。
地獄から来たロックバンドのKISSは、ド派手な白塗りのメイクに鎧みたいなゴージャスな衣装で、ロックの豪華絢爛さを表現した。
見た目だけでなく、デビュー当時からリムジンやヘリをチャーターし、美女をはべらせコンセプト通り豪華に登場したのだ。
それでいて飾り気なくキャッチーさを失わないハードなロックを鳴らす事が、奇妙にフィットし絶大なパワーを呼び、絶対に忘れる事のない存在として広まるまでになった。
 
 
デビュー当時全く金がなく、明日飯食う金が無くなってもリムジンと美女をチャーターしたという執念じみたコンセプトは、明日の事は知らないが今日やりたいことをやるロックの美学とシンクロし、結果的に最高にキマっていたのだ。
もちろんその裏に、メディアの拡大と言う時代を読み、自身のコンセプトと音楽信じ、未来を掴みとった彼ら、特に舵を取ったジーン・シモンズのマネジメント力も大きい。
実際、メディアとロックはお互いを利用しあう時代が訪れる。
 

コンセプトはアートの域に

ド派手なコンセプトで見る者を惹きつけてきたロックバンドが多い中、より深く芸術の域に落とし込んだアーティストもいた。

 

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ディヴィット・ボウイは、自ら宇宙から来たロック・スター’ジギースターダスト’を演じて、アルバムを出してツアーを行った。

火星のバンドを引き連れて、見た目に留まらず音楽の世界観も統一し、ミステリアスで近未来的なロックを鳴らして見せた。


David Bowie - Ziggy Stardust (From The Motion Picture)

ロック界が哀しみに暮れた逝去から1年。

そのリスペクトの波は引くどころか、未だに波及し続けている。

僕からしたら、ロックを知り出した頃にはボウイはもう偉人だった。

最初は本当に男なのか女なのかわからなったし、その奥が深すぎる妖美さに、僕なんかがまだ聴いてもわかんないだろうと思っていた。

それでも最後のアルバム、ブラックスターの時のダンディーな姿にすら震えを覚える程、かっこよかった。

素のボウイの年齢通り皺一杯のくしゃっとした笑顔は、当時との対比がなくとも、ナチュラルすぎて眩しかったのだ。

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ディヴィット・ボウイは仮面を纏ったアクターだった。

ジギー・スターダストというスターを演じ、ディヴィット・ボウイをスターにするという、一回聞いただけでは何だかわからない拗れた現象を歴史的な規模でやってのけた。

ジギーを葬り去るのもかなりの苦痛を伴うほど、ゲシュタルトの崩壊を起こしかけていた。もはやロックバンドの苦悩の範疇を超えている。

音はシンプルに艶やかに、それでいてキラキラした夜空のような音。

そのストレートな音こそ、煌びやかでスター的な仮面と溶け合い、あの妖美さを産んだ秘訣でもあったんだと思う。

徹底したアクターだったからこそ、仮面を外した姿のナチュラルな魅力も際立ったのだ。

ボウイを讃える写真は、その二枚であるべきなのである。

 

仮面が音を奏でる

ロックに音以外のエッセンスを香らせる事、それは時に表現の仕方を複雑化させている事がある。
入り組んだフォルムを音で徐々に融解していくような、複雑な世界の歌。
本来歌を歌い、音楽を演奏する事自体に、演じたいという欲求が出てくるのかもしれない。
愚直なロックンロールはもちろん最高なんだが、違ったトランスを産み出す様な世界観でも音を鳴らしてみたい。
楽曲の種類の違いでなくその入り口から覆す そこに仮面がいるケースもある。
 

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仮想世界にバンドを創り出したGorillazは、完全なるバーチャルバンドとして大きなヒットを飛ばし世界で初めて認識された。
メンバー1人1人がコミックの登場人物さながらにぶっ飛んだ設定で、今までのどのコンセプトよりも繊細で捻くれていた。
 
 
自ら作り上げたバーチャルでアシッドなムードな世界観を、見事に渡りきるサウンドトラックを創り出した彼らの楽曲。
ヒップホップもブルースもジャズもハウスもロックもクロスオーバーし、マニアックながら抜群のセンスでポップシーンの真ん中に躍り出た。
もちろんデーモン・アルバーンのブラーとしての側面からくるものもあるけども、それにしてもFeel Good Inc.の調和した不可思議な世界は、初めて聞いた瞬間から抗い難い高揚を呼んだ。
あれだけ奇妙でも、なぜか愛着をもってしまうアニメーション。
 
音だけ聞いて、陶酔できるポップネスを感じ、それがバーチャルだとわかった時、そういうことかと徐々に融解する感覚に戦慄的な稲妻が走る。
Gorillazはその仮面にとんでもない情報量を込めて、目一杯の皮肉でその世界を満たしたのだ。
 

仮面をつけたロックアーティスト達


Gorillaz - Clint Eastwood

 

ただ素顔を隠すだけではなく、偶像として作り上げられた仮面を駆使するロックアーティスト達。

時にプロモーションとして、時にアートとして、人を惹きつける一端になっている。

謎が魅惑を呼ぶ、音と仮面の相性は、複雑さはあれど、その世界観に奥行を感じさせる。

何でってなるかもしれないが、そこにある現実を超えたロックは、圧倒されながらも奇妙なほどに僕らが理解できるものなのだ。

音だけではもったいない。その奥にある世界観に触れるのも、ちょっと怖いけど、気づけばいいと思えるのだ。

 

それではまた別の記事で。