Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐

1987年生まれサッカー・音楽(ROCK)好きがサッカー・音楽・映画などについて思いを馳せる日記

【忘れたくない選手】アイマールに想いを馳せて 前篇‐甘い魅惑の天才プレイヤーのフットボール人生‐

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魅惑に満ちたプレイヤー、パブロ・アイマールに想いを馳せる。

電撃的なニュース

2015年、5月。35歳になったアイマールは古巣リーベル・プレートの一員として、ロサリオ・セントラル戦に後半から出場した。

 

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線の細いシルエットと、ややもじゃもじゃの髪、ベンフィカ時代のヒゲは短く剃って、甘く人懐こい笑顔が良く見える。
バレンシアの21番をまとっていた頃のような、ぐいぐい侵入するスピード感は無いけれど、それでもそのボールタッチには、これぞアイマールという溢れるセンスが至る所に感じられる。
ゴールに絡む決定的な仕事はなかったが、バイタルエリアでのプレーは多く、ほとんどフィジカルを使わずテクニックだけでDFをいなしていた。
一回一回反射的に上手い!と、思わず声が出る。これこそがテクニックの使い方だ。
 
 
久々のトップレベルでのプレー映像だった上に、僕の知るアイマール像とマッチして懐古的な琴線を大いに刺激し、さらにこれがついこの間の試合という小躍りしたくなる事実とおいしいもの盛りだくさんの夢の様な数分間であった。
なんと言っても、時折見せる穏やかな中にも闘志を秘めているようなシャープな表情が実に彼らしく、それがまた心を熱くさせた。
2015年初夏、サッカー界を駆け巡ったアイマールのリーベル復帰(それも盟友サビオラも同時期に、さらに同年冬にはCWCで日本に来るかも!?)の報は、期待して損はなさそうな喜びに満ちた復帰劇だったように思えた。
 
そのわずか1ヶ月後にアイマールは現役引退を発表した。
復帰後目下の目標であったコパリベルタドーレス杯のメンバーに入れず、その理由には慢性的なフィジカルの問題があるとされた。
テクニックは色褪せず闘志はまだまだ燃えている様に見えたが、フィジカル面で酷使してきた身体が、やはり言うことを聞かなかったのだ。
あっけなく、それでいて、いかにもな終わり方。
この電撃的なニュースを経て、先ほどの復帰劇は悪く言えばぬか喜びに終わったわけだが、だがそれでも、素直に「お疲れ様」と労いたい気持ちで心がいっぱいになる。
むしろ今思うと最後にプレーを見せてくれた事が、彼との思い出に華を添えてくれた様な気がして、何とも胸が詰まるのだ。
 
アイマールのフットボール人生はまるで線香花火の様に静かに幕を閉じたのだった。
伝説に残る王朝を作るには華奢すぎたのかもしれない。
だがそれでも、華奢な身体に宿った華麗なテクニックは華々しく、太陽の様な笑顔の裏に秘められた情熱を燃やし、
それこそ夏の夜の花火の様に刹那に煌めいた物語紡いだ彼には、心からの賞賛を贈りたくなるのである。
 
今回は、華奢で華麗なファンタジスタの物語を紐解いていく。
クラシカルでオーソドックスなストーリーも、ロマンチックで美しい物語となるのは、主演アイマールの危険なまでに甘い魅力のおかげだ。
 

そのプレーの魅力とは

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選手のプレースタイルは、本人のフットボール人生を彩りを与えるものだ。
 
フットボールの本質的にゴールという共通の目的があるからこそ、そのプロセスに個々のスペシャリティーが生まれ、自らの武器になり確固たる信念となり、それがフットボーラーとしてのとなる。
僕らはそれにドラマやロマンを見つけては、彼らの姿に夢を見続けているのだ。
 
DFの隙を見つける事の出来る目と、そこを的確に付ける魅惑のテクニック。
豊富なアイディアとちょっとずる賢さもみせる嗅覚で、広大なトップ下のスペースを我が儘に動き回り、抜群のボールスキルを駆使し至る所で攻撃のスイッチを入れる、あるいは攻撃を最高の形で完結させてみせる。
その一方であっさりと「守備は僕に向いてない」と投げ出したりする。
この王道感。
プレイヤーとしてのアイマールは、古来から伝統のゲームメーカー、トップ下のファンタジスタタイプの典型的な選手といっていい。
それもキャリアを通してゴールよりアシスト・チャンスメイクの数の方が多い、絵を描くタイプのゲームメイカーだ。
 
王様マラドーナをして、「数々いた私の2世の中でも金を払って見たいのはアイマールだけだ」と言わしめ、王国の新しい王子としてのプレッシャーを感じながらも、時折見せる熱い闘志がそれを凌駕して、単なる2世ではないフットボーラーとしてのハングリーさみたいなものも感じさせた。
華麗に獰猛に、魅せつつも闘える。
ささくれだった南米らしさ満載のざらざらとしたストリート感を感じさせるアイマールのプレーは、どこまでも攻撃的な魅力に溢れていたのだ。
 

甘い魅惑のプレイヤー

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そして何よりも甘い。これはプレースタイルというよりも、その容姿とボールと共にあるシルエットから出るオーラみたいなものだが、甘いのだ。

やんちゃな笑顔も鋭い目つきにも、どこか甘美な香りが纏う。ボールコントロールひとつとっても、鳥肌が立つほど柔らかい。
ボールを持って周囲を伺うその姿は、我儘な王子様の様でもあり、芽が出ない天才若手芸術家の様でもある
高貴さ、粗暴さ、どちらも彼の魅力なのだが、プレーを通してセクシャルな何かを感じさせる事が出来るのが、アイマールの色なのだろうと思う。
きっと天性のものなのだろう。その証拠に、酸いも甘いも経て深みを帯びた先の引退劇でのプレーではもちろん、初々しく瑞々しいデビュー当時のプレーでもどちらもその色気を感じる。
稀代のファンタジスタの中でも限られた芸術家達、R・バッジョやルイ・コスタ、はたまたジョージ・ベストみたいなプレイヤーの、見る者に途方もなくロマンチックを感じさせる引力がアイマールにも備わっていて、結果それは彼のフットボール人生を彩り鮮やかなものにする重要なファクターとなるのだった。
 

中篇へ続く

 

【忘れたくない選手】アイマールに想いを馳せて 中篇1‐甘い魅惑の天才プレイヤーのフットボール人生‐ - Football soundtrack 1987-音楽とサッカーに想いを馳せる雑記‐